読んだ文庫本2023/07/13

読んだ本がたまっているので、一気に紹介します。
どれもお勧めです。


伊坂幸太郎 『逆ソクラテス』
昨年、読みたいと思ったのですが、図書館の予約がとんでもなく多かったので、文庫本になるのを待っていました。
主人公が小学生というのは伊坂さんの作品では初めてではないでしょうか。
五編の短編集ですが、書き上げるのに十年以上かかったという、なかなか深い内容の本です。題名にソクラテスが入っていますから、哲学的でもあり倫理的でもあり、今までの先入観が崩される内容です。
自分の大事なものを貶されて、納得がいかなかったら、勇気を出して「僕はそうは思わない」と言いましょうね。

白尾悠 『サード・キッチン』
1998年、都立高校を卒業し、アメリカの大学に留学した尚美は英会話の苦手意識からうまくコミュニケーションができないがために友人ができず、留学資金を出してくれた叔母さんとの約束で、全教科でAを取るために図書館に籠もり、一人勉学に励む毎日だった。
しかし、ある日、寮の隣室のアンドレアと仲良くなり、マイノリティの学生食堂、サード・キッチンに招かれる。
そこで様々な差別や多様性に接し、韓国と日本の歴史についてきちんと学んでいないことや自らの中に潜む、無知や無自覚から来る差別意識を知ることにより、彼女は変わっていく。

尚美のことがよくわかります。私も留学したら、彼女みたいになると思います。
英会話、苦手なんです。日本語でよく喋る人は、他の言語でもよく喋ると聞いたことがありますけど。英会話教師に慣れだと言われましたが、どうなんでしょうね。
日本でやっとこの頃、多様性が話題になるようになりましたが、日本にいるとピンときませんよね。この本を読むと、少しはわかると思います。

矢崎存美 『湯治場のぶたぶた』
真面目な本の後に、ホッとする本を紹介しましょう。
そうです、ぶたぶたさんです。
今回のぶたぶたさんはカウンセラー兼里沼温泉という湯治場の経営者。
彼の作る普通のお料理がとっても美味しそう。カレー、肉じゃが、白菜と山の茸の鍋…。スイーツもいいですぇね。スイートポテトとコーヒー。涎が…。
こういう湯治場があれば、お金の続く限り泊まりたいです。
あなたもぶたぶたさんに癒やされてください。

ここからは時代小説シリーズです。

平谷美樹 『貸し物屋お庸謎解き帖<3> 五本の蛇目』
江戸のレンタルショップ「湊屋両国出店」の店主のお庸の店に悩みと秘密を抱えたお客がやって来る。
今回のお客と借り物は、身なりのいい年寄りが借りたいという能管、魚屋になりたいという男が借りる天秤棒、裕福な若い男が借りる蛇目、五本、野良着を着た三十絡みの男が借りたいという生きた猿、お庸が行く湯屋に貸す陰間などです。
いったい何のために借り物をしていくのでしょうね。
お客が怪しいので、追いかけ屋の陰間たちが活躍くてくれます。
伝法なお庸も落ち着き、お客の悩みを聞き、解決していくようになり、このシリーズも安心して読めるようになりました、笑。

風野真知雄 『潜入味見方同心六 肉欲もりもり不精進料理』
今回は風野さんらしい題名が面白いですね。
食にまつわる悪事を調べる味見方担当の月浦魚之進が将軍暗殺を阻むために活躍する様子を描いたお話です。
最初は頼りなかったのですが、この頃は冴えています。
無事に北大路魯明庵を捕らえ、嫁も決まり、いいラストとなりました。
なにやらとぼけた雰囲気が好きなシリーズでした。

篠綾子 『梔子の木 小烏神社奇譚』
近頃江戸に不眠と悪夢に苦しむ患者が増えている。
そのため泰山は原因を突きとめたいと思っているが、如何せん薬が足りないので、梔子の実を使うことにする。
そんな頃、公方さままで不眠に悩むようになる。その上、鵺の鳴き声が聞こえるというのだ。
天海と竜晴は 鵺退治をすることになる。
その一方、町に薬師如来の申し子と呼ばれる少年が現れ、不眠を治すお札を配っているという。
その少年に疑念を抱いた泰山と竜晴は、彼の行方を探ることにするが…。

陰陽師や付喪神など好きなものが出てくるので、楽しみなシリーズです。
大人でも読める江戸物ファンタジーです。