西條奈加 『とりどりみどり』2023/07/10



万両店の廻船問屋『飛鷹屋』の末弟・鷺之介は十一歳。
母は六歳の時に亡くなり、父は店商いを番頭や長男に任せ、自ら船に乗り、各地に赴いているため年に一、二度しか会えない。
彼にはそれぞれ母親が違う兄と三人の姉ーお瀬巳、お日和、お喜路ーがいる。
「女が三人寄ればかしましい」とはよく言ったもので、この三人、遠慮も気遣いもなく、傍若無人、平気で人前で毒舌を吐き、金遣いが荒く、買物や芝居、物見遊山にたびたび出歩いている。
そのたびに鷺之介は付き合わされ、引き回されるので、早く姉たちが嫁に行って、日々穏やかに暮らせることを夢見ている。

姉たちの行く先々でいつも騒ぎが持ち上がり、それを姉たちが解決していくが、鷺之介は姉たちに振り回されるので、こりごり。

姉たちは聡いんだからよく考えて行動すればいいのにと思いました。
まあ、この時代のお嬢さんたちはやることがなくて暇を持て余しているのでしょうから、暇潰しみたいなもんでしょうかね。
それにしても「貧乏人とのつき合いは、ほどほどにしなさいと言ったでしょ」にはまいりました。
最初はなんて嫌な女たちと思いましたが、読み進めていくと、鷺之介が傷つかないように考えて言っているのがわかりました。
姉たちは鷺之介がかわいくて仕方ないのです。
でも、ちょっと過保護ですよ。
鷺之介は優しさや思いやりなどは十分持っているのですから、世の中の酸いも甘さも噛み分けさせて、強い人になるようにしなければね。

最後の家族の秘密には驚かされました。
知っていて言わないということはありですが、黙っていることは大変です。
それだけ相手を思いやっているということですね。
こういう家族っていいですね。

続けて西條さんの小説を読みましたが、どちらも家族のことを描いています。
雨降って地固まるとなるといいですね。
ほっこりとした家族ものを読みたい人におすすめです。