新川帆立 『縁切り上等! 離婚弁護士 松岡紬の事件ファイル』2023/07/28



題名からわかるように、今回のヒロインは離婚を専門とする弁護士です。
元彼の遺言状』の剣持麗子とは違って、美人で可愛くて、方向音痴というところが意外で、恋愛にも結婚にも興味がないという女性です。
名は松岡紬といい、北鎌倉にある、十三世紀から七百年以上、縁切寺、駆込寺として有名な東衛寺の住職の末娘で、法律事務所は東衛寺の門前にある蔵です。
まあなんてビッタリな場所なんでしょう。
第一話から第五話まで川柳がタイトルとなっているところが洒落ています。
さて、どんな相談事が来るのやら。

第一話:「くやしくば尋ねて来て見よ松ヶ岡」
夫のモラハラと浮気に耐えきれなくなり、息子を連れて家を飛び出した牧田聡美が北鎌倉駅で夫に捕まりそうになったところを紬に助けられる。
その縁から聡美は紬の依頼人となり、後に紬の事務所の事務員となる。

第二話:「松ヶ岡男を見ると犬がほえ」
依頼人は珍しく男性で、妻が浮気をした末に、子どもを連れて出ていった。家庭裁判所から調停申立書が送られてきて、婚姻費用を払い、息子の監護者を妻側にしろと書いてあるという。

第三話:「星月夜あきれるほど見て縁が切れ」
紬の父、玄太郎の知り合いの山岸花枝が離婚の相談にやって来る。
紬は財産分与のために後一年、夫が退職するのを待つように助言するが、花枝はすぐに離婚したいと言いはる。

第四話:「松ヶ岡寝そびれた夜のぐち競べ」
依頼人は同性婚十五年目の専業主婦。妻の浮気に気づき、子どもを引き取り離婚したいと言う。
同性婚の場合は財産分与も養育費も法律上の義務がない。しかし紬は交渉次第で支払ってもらう約束を取り付けられることもあるというが、調停委員がとんでもなかった。

第五話:「またいびりたくば鎌倉までおいで」
聡美の元夫が鬱病になり休職しているので養育費の減額と復縁を望んでいるというが…。

離婚の相談事の他に紬の離婚した両親のことや、紬と幼馴染みの事務所専属の探偵、出雲啓介とのことなどが書かれています。
今までの本の中で一番読みやすく、面白かったです。
たぶんこの本もドラマ化され、続編がでそうですね。
誰が紬の役をするのかしら?予測してみるのもいいかも。

新川帆立さんのインタビューがありました。興味がある方は読んでみて下さい。