アンデシュ・ルースルンド 『三年間の陥穽』2023/12/18



エーヴェルト・グレーンスが妻のアンニのお墓に行き、ベンチに座っていると、同世代の女性が彼のベンチに座る。
彼女は三年前にいなくなった四歳の娘・アルヴァのお墓に来ているが、その墓の棺はからっぽだとグレーンスに話す。

見知らぬ少女のことが頭から離れなくなり、グレーンスは記録保管室に行き、彼女のことを調べてみる。
墓地で会った女性の言ったとおりで、通常通りの捜査が行われたが、手がかりひとつ残されていなかった。

グレーンスは失踪者捜査の責任者・エリーサ・クエスタのところに行き、少女の捜査のことを聞くと、同じ日にもうひとりの四歳の少女・リニーヤが失踪したことがわかる。
グレーンスはファールホルメン警察署からリニーヤの捜査記録ファイルを探し出し、ざっと眼を通し、防犯カメラの映像を見た。
ファイルには死亡宣告申立書が入っていた。
失踪から三年間過ぎると法律上死亡したことと見なされるのだ。
なんと彼女は明日で死ぬことになる。
空の棺がもうひとつ増えるのだ。

グレーンスはリニーヤの家族に会い、死亡宣告申請を考え直してくれと言うが、両親は頑なに断る。
彼女の双子の兄だけが妹が生きていると信じている。

グレーンスは上司のエリック・ウィルソンにリニーヤを見つけたいと訴えるが、拒否され、十二週間の休暇を取るように申し渡される。

休暇を取ってから十一週間後の真夜中、グレーンスはこっそりと警察署に忍び込んでいた。
そこに長いつき合いになる刑事グンナル・ヴァーナルがやって来る。
彼はインターネットで犯罪者を追跡する刑事だ。
グレーンスが数ヶ月前に問い合わせたキーワードに当てはまる、スウェーデンの支援団体から送ってきた少女の写真があるというのだ。

グレーンスは正式な捜査ができないため、市警で働いていない人間の協力を求めることにする。ITの天才青年・ビリーに。

写真から少女といっしょに写っている男がデンマークにある家具製造会社となんらかの関係があると確信したグレーンスはデンマークに飛ぶ。
そして、デンマークのIT専門家・ビエテと協力し合い、全世界に広がる小児性愛サークルを根絶やしにすることにする。
しかし、サークルのリーダーの男の正体がわからない。

グレーンスはリーダーを探し出すために、金輪際、潜入捜査はやらないと誓ったピート・ホフマンに小児性愛サークルへの潜入捜査を頼む。
ホフマンは拒んだが、妻のソフィアに協力するように説き伏せられる。
ホフマンは今までで一番困難な潜入捜査に挑むことになる。

胸くそ悪くなる内容です。
ホフマンは家族をこよなく愛する父親で、生まれて間もない娘がいますから、小児性愛者の振りをするなんて、とんでもなく嫌なことです。彼らに対して嫌悪感しかわきません。
そのため絶体絶命の危機に陥ってしまいます。
ソフィアの過去が気になりますが、これから明らかになっていくのでしょうか。

それにしてもマリアナ・ヘルマンソンにはがっかりしました。
前作でグレーンスに疑われてはいましたが、上司とつき合い、逢引きのために嘘の報告をしていたというのに、なんでグレーンスを頑なに拒否するのかがわかりません。

グレーンスのアンニと生まれなかった娘に対する愛情が心に染みてきます。
アルヴァが、リニーヤが自分の娘だったかもしれない。
そう思うとグレーンスはいても立ってもいられないのです。
何年経とうが、彼の二人に対する愛情は変わらないのです。
64歳でもうすぐ退職という彼が仕事がなくなるとどうなるのか、心配です。
ホフマン一家が彼に手を差し伸べてくれるといいのですが。

日本で翻訳されているグレーンス警部シリーズの最後の本です。
6巻目の「Två Soldater(Two Soldiers)」と11巻目の「Litapåmig(Trust 
Me)」、12巻目の「100 procent(100%)」がまだ翻訳されていません。
11巻と12巻は英語でもまだみたいなのですが、来年もグレーンス警部にお目にかかれるでしょうね。
楽しみに待ちます。