読んだ時代小説シリーズ(文庫本)2024/02/29



見かけない花が咲いていました。ロドレイアという花でしょうか?


散歩で写真を撮ろうとすると、横を向く弟ですが、珍しく顔を向けてくれました。
歯がそろっていて、絶対に噛みませんが、手からおやつをやるときは噛まれそうで怖いです。

さて、今回は主人公が思慮分別のある大人の時代小説シリーズです。
主人公が若い女性よりも、酸いも甘いも噛み分けている大人の方がお話としては面白いです。


知野みさき 『相槌 神田職人えにし譚<6>』
「第一話:雪の果て」
縫箔師の咲の妹、雪が大工の小太郎と祝言を挙げる。
その頃、咲は妹が奉公にでるので、餞別にと守り袋を頼まれる。

「第二話:友誼」
瑞光堂に出来上がった匂い袋を届けに行くと、前に住んでいた長屋の住人、お素とお駿に出会う。
駿は大の噂好きで、咲のことを根掘り葉掘り訊こうとする。困った咲に同じ長屋の駕籠舁き典馬が助け舟を出してくれた。しかし、次の日、駿はわざわざ咲の長屋までやって来る。今度は修次に助けられる。
しろとましろの双子のところに幼馴染みの花野がやって来たので、彼らは江戸を案内しているらしい。
咲は孫への江戸土産として孔雀の羽の意匠の守り袋を頼まれる。

「第三話:相槌」
柳川で手習い指南所の師匠のお壱と知り合いになり、彼女から駿が咲の根も葉もない噂話をしていることを知る。
咲の所に親方の三四郎がやって来て、急ぎの注文を引き受けてしまったが、二人の弟子を使えなくなったので、仕事を手伝ってもらえないかと言う。複雑な気持ちではあったが、咲は引き受ける。
同じ頃、咲と修次は吉原の玉屋の秋海に贈る秋海棠の意匠の簪と簪入れを頼まれていた。
意匠に迷った咲は壱に頼んで、秋海に会わせてもらうが…。

ひとつひとつのお話の中に様々な人間模様が描かれており、最後はしあわせな終わり方です。
修次との仲は進みませんが、神鹿(?)らしき花野が言った二人への注文がどんなものか、次が楽しみです。

風野真知雄 『わるじい義剣帖 <二>ふしぎだな』
「第一章:こそこそ医者」
孫の桃子が熱を出した。じいじの愛坂桃太郎は騒ぐが、母親の珠子は慌てもしない。いつも頼む医者の慈庵は箱根に行っており、別の医者を探すと、魚屋が名医を連れてくる。医者は柳の枝を置いて帰っていくが、桃太郎は怪しく思い、医者の後をつける。医者はそば屋の卯右衛門の店子で、向井永大というらしい。桃太郎は卯卯右衛門に向井が本当に医者かどうか確かめる。そして色々な人々に当たっていくと、向井に五両盗まれたと言う話が出てくる。

女絵師お貞を殺した下手人はまだ捕まらない。桃太郎はお貞の錦絵を調べていくうちに途中で絵柄が急に変わっていることに気づく。

「第二章:よみがえった汁粉」
桃子の手を引きながら、以前住んでいた坂本町に行くと、人だかりがある。三十年前に流行っていただるま汁粉が、三十年ぶりに復活したというのだ。なんとまあ、桃太郎の妻の千賀やそば屋の卯右衛門までもが並んでいる。
ところが翌日、友の朝比奈と一緒に食べに行くと、閉店していた。
桃太郎はおきゃあとおぎゃあの二人と卯右衛門に頼まれ、何故閉店したのか調べることになる。

お貞殺しの件では、雨宮からお貞が変な神様を拝んでいたことを聞く。
驚いたことにおぎんがお貞の友だちだったという。

「第三章:子どもの酔っ払い」
桃太郎が山王旅所の裏手の芭蕉堂のわきを通りかかった時、呂律が回っていない、酔っ払いの言葉が聞えて来た。声は子どものものだ。おかしいと思い見てみると、七、八歳くらいの町人の子が、どこかの手代になりきって話している。桃太郎が話しかけると、逃げるように立ち去ってしまった。
翌日、桃子と歩いていると、後ろから酔っ払いの真似をしていた子どもと父親がやって来る。どうやら子どもの名は福助と言うらしい。
それから一刻ほどして、山王旅所の境内で福助を見かける。
武士の子に蹴られた友だちの仕返しをしているようだ。
福助に興味を持った桃太郎は、子を知るには親を見ろ、ということで父親のほうを探ってみることにする。

「第四章:帯切り屋」
桃太郎が妾にしようと思っていた(笑)、おぎんが殺された。
おぎんはお貞の友人で、お貞同様の殺され方をしている。同じ下手人か、と思う桃太郎。
そんな頃、日本橋界隈で帯切り屋が出る。三年前にも出て、七十人ぐらいが切られたという。
雨宮が関わるお貞殺しとおぎん殺し、そして二度目の帯切り屋の下手人が挙らずじまいになりそうだということで、珠子も八丁堀の通りを歩きにくかろうと思った桃太郎は帯切り屋のほうを手伝ってやることにする。

相変わらずの孫の桃子ラブのじいじこと桃太郎です。
なかなか捕まらないお貞とおぎん殺しの下手人ですが、次回に何か動きがありそうです。

和田はつ子 『信長餅 料理人季蔵捕物控』
いつものように日本橋にある季蔵の一善飯屋塩梅屋に北町奉行の烏谷がやって来る。今回の役目は料理番が突然いなくなった稲穂屋敷に夕餉を届けてほしいというものだった。

稲穂屋敷はなんとも不可解な屋敷だ。家名もなく、歴代の物書同心の日誌にはあるが奉行所に集められている資料にない。屋敷の者たちは屋敷から外へは一歩もでてはいない。何人の者たちが主に仕えているのかもわからない。市井の小町娘たちが跡継ぎを産むためにさらわれているという草子が書かれている。主には人の顔がなく、鬼の面をつけているという話も語り継がれている。草子に書かれている鬼の面の主は実は人食い鬼で、人肉を肴に酒を飲むという血まみれの酒池肉林を好む大悪党に書かれているという。

その頃、浅草観音の境内で首と胴体が離れている小柄な男の骸が見つかる。
顔には鬼の能面が被せられていた。
田端は鬼刑骸ではないかと言う。鬼刑骸とは、稲穂屋敷の掟を破った者に科された刑罰である。
季蔵はその骸が行方不明の料理人もものではないかと思う。

そういう時に、廻船問屋長崎屋の主、五平が塩梅屋にやって来る。
彼が大変世話になった酒問屋上千屋の新酒を積んだ樽廻船が難破し、師走始めに入るはずだった新酒を失くしてしまった。上千屋の息子は放蕩者で、呑む打つ買うの生活を続けており、そうこうするうちに主の白右衛門が倒れてしまい、思いあまった娘のお嵯峨が五平を頼ってきた。それで五平は余計な助言をしてしまったという。お嵯峨に、びんずる大黒という神様を見つけ、特効薬を願って授かると、驚くほどの長寿をまっとうした患者がいるという話をしたのだ。
お嵯峨はびんずる大黒のある破れ寺を探し、特効薬を手にいれた。「何かわたしにできるお礼をさせてください」という文を添えると、特効薬と金子に「父親の薬を授け続けるゆえ、娘は得意な料理で使えよ」という文を添えてきた。そしてある日、駕籠がお嵯峨を迎えに来て、お嵯峨が乗った駕籠は稲穂屋敷に入って行ったそうだ。

季蔵は稲穂屋敷に出向く。
季蔵は稲穂屋敷に綿々と続く秘密を暴き、今回の難所を乗り越えることができるのか。

季蔵の思い人、瑠璃とは進展はないのですが、彼女の描く不思議な絵が気になります。
お嵯峨さんのような女性は素敵ですね。
誰もが幸せな人生を歩んでいけるといいのですが。
米麹を使った料理が美味しそうでした。麹って造り酒屋以外のどこで売っているんでしょう?