読んだ時代小説シリーズ2025/04/02

読んだ文庫本が溜まっているので、いつものようにまとめて紹介します。
まず、私の好きな二つのシリーズ。


知野みさき 『南天の花 神田職人えにし譚』
縫箔師・咲の周りではおめでたが続く。しかし、桝田屋の美弥の義母から志郎の浮気疑惑を相談されたり、職人仲間の修次が女といっしょにいたと言われたりと、いろいろとつまらぬ噂話をわざわざ伝えに来たりする人がいる。そんな時に、昔の男、雄悟と出会う。
一方、仕事の方は順調だ。人形の着物の注文がくる。それが縁で、咲は戯作者・魔魅団三郎の秘密を知る。
しろとましろの双子の兄弟子の豆太郎という謎の人物が現れる。
修次は古い知り合いの喜兵衛の余命が短いことを知り、彼の娘を探している。
やっと娘は見つかるが、喜兵衛に会いたがるかどうかわからない。娘が武家に嫁ぐと聞き、喜兵衛は修次に簪を、咲に筥迫(はこせこ:着物を着たときに胸元に入れて持つ小間物入れ)を頼む。

いつものように、咲と修次の間に進展はありません。
咲は修次のことを職人仲間としか思っていないような感じですねぇ。
こんな調子で続いていくのでしょうか。
筥迫は普段着物を着ても持っていない人の方が多いですよね。
調べてみると、刺繍が映えそうな、今の化粧ポーチみたいなものです。
着物を着た花嫁さんが持っていそうです。

篠綾子 『十五夜草 小烏神社奇譚』
ある日、寛永寺の住職に仕える侍の田辺がやって来る。寺に首のない幽霊が現れたという。早速竜晴は寛永寺に行き、魔除けの呪を施す。
その夜、その霊が小烏神社に現れる。霊は天草四郎で、天海大僧正を訪ね、乱のさなかに呪詛を行ったかどうか訊きたかったという。
竜晴は行っていないと答え、四郎に忘れ草を渡す。しかし、仲間の悪霊が現れ、四郎を連れ去ってしまう。
茅の輪の件でやって来た大輔と花枝が夜の町に首なし男の幽霊が徘徊しているという話をする。竜晴は刀剣の付喪神である獅子王とおいちに夜回りを頼み、見つけたら小烏神社まで連れてきてほしいと頼む。
七月になり、父親の墓参りに行って来た泰山が墓守の鬼を連れて帰って来る。
墓守が首なし男の幽霊に会っていたので、竜晴は次に見かけたら小烏神社に案内するように頼む。泰山は墓守と会って以来様子がおかしい。どうも墓守から予知能力を授かったようだ。
その頃、竜晴は夢の中で何者かに早く目覚めるようにと命じられる。
無事に天草四郎は昇天するが、平将門公の首塚に関する気になることを話していく。
十月に鷹狩が行われる。ところがその後、首塚が暴かれ、伊勢貞衡が平将門公の霊に憑かれてしまう。
急いで竜晴は貞衡の屋敷に行こうとするが・・・。

最終巻だそうです。
賀茂家に伝わる使命が明かされ、付喪神たちが本性を現します。
よくできた時代物ファンタジー小説でした。
終わるのは残念ですが、西国でのお話で竜晴たちにまた会えることを願っています。
最後に10巻すべてを載せておきます。

ちなみに十五夜草とは「紫苑」のことで、花言葉は「君を忘れない」。
「思い草」とも言われていたようです。
反対の「忘れ草」は「萱草(かんぞう)」のようです。

①『弟切草 小烏神社奇譚』
②『梅雨葵 小烏神社奇譚』
③『蛇含草 小烏神社奇譚』
④『狐の眉刷毛 小烏神社奇譚』
⑤『猫戯らし 小烏神社奇譚』
⑥『吾亦紅 小烏神社奇譚』
⑦『梔子の木 小烏神社奇譚』
⑧『龍の髭 小烏神社奇譚』
⑨『幽霊草 小烏神社奇譚』
⑩『十五夜草 小烏神社奇譚』(本書)