「アリスのままで」を観る2022/04/25



アリス・ハウランドは今度の誕生日で50歳になる、コロンビア大学の言語学者。
夫のジョンは医師で、子どもは三人いる。長女のアナは法科大学を卒業し、法律の道へ進んでいる。現在妊娠中。長男のトムは医大生。次女のリディアは家族の厄介者で、ロサンジェルスで舞台女優を目指している。

アリスはUCLAで講演をしている時に「語彙」という言葉が出てこない。
それ以来、ジョギング中に道がわからなくなったり、キャンパスで迷ったり、単語や人の名前を忘れるようになる。
神経科の医師に見てもらうと、MRIも血液検査も問題がなかったが、記憶テストに問題が見つかる。
年齢に比べて極端な近時記憶障害があり、記憶機能が低下しているのだ。
病名は遺伝性の若年性アルツハイマー型認知症。
子どもに50%の確立で遺伝し、100%発症するという。
三人の子どもたちにその話をすると、アナとトムが遺伝子検査を受ける。
トムは陰性だったがアナは陽性だった。

症状が徐々に進み、仕事にも支障が出てくる。
大学に若年性アルツハイマー型認知症であると告げ、仕事を辞める。
アリスは症状がもっと進むことを考え、睡眠薬を手に入れ、自分宛のビデオレターを作り、質問に答えられなくなったら、睡眠薬を全部飲むようにという指示を入れておく。

やがてアリスは別荘のトイレの位置がわからなくなり、粗相をしてしまう。

ジョンはアリスの状況を見てみないふりして仕事にのめり込んでいく。
一年間休暇を取る予定だったが、メイヨークリニックからいいオファーが来たので休暇を取るのを止めて、メイヨークリニックに行くことにする。
アリスを連れて行きたいが、環境が変わることを恐れるアリスを置いていくことにする。
結局リディアがニューヨークに戻り、アリスの面倒をみることになる。

この映画で感動的だったのが、アリスが認知症の会みたいなところでスピーチする場面です。
書いた原稿のどこまで話したかわかるようにマーカーで印をつけながらスピーチをします。
自分は今”なくす技”を日々練習している。記憶は私の宝物だった。しかし私が人生で蓄えた全てが、努力して得た全てが剥ぎ取られていく。”地獄”だ。
でも私は今苦しんでいない。闘っているんだ。瞬間を生きているんだ。
などというようなことを語っていきます。(正確ではないかも)

言語学者として自分の知性と知識に自信のあったアリスとしては、こんなこと我慢ができないでしょうね。でも結局すべて忘れてしまうのだから、本人はそれほど苦痛を感じないのではないかしら(そう思いたいです)。
側にいる人にとっては、とても辛いことでしょうね。
家族それぞれにアリスとの向き合い方が違います。
トムは医学生ですから忙しいこともあり、家族からある一定の距離を取っているみたいです。
アナは子どもが生まれたばかりですし、若年性アルツハイマー型認知症になるのが確実ですから、一番微妙な立場です。アリスを見ていると、将来の自分の姿が見えますから、アリスに近寄りたくないでしょうね。これからどうやって発症の恐怖に対処して生きていくんでしょう。心配です。
リディアは大学に進まず、女優という不安定な職業を目指していたため、親と上手く行っていませんでした。しかし最後にアリスと和解し、父親が当てにならないことを察したのか、NYで演劇をやりながらアリスを介護をする決心をします。
夫のジョンはどうしようもない弱い人です。アリスと向き合うことを避けます。
本当にアリスを愛しているなら、最期まで側にいて欲しかったです。医者ですからお金があり、アリスの介護のために人を雇うことができたでしょうに。ミネソタでさっさと次の人を探して再婚しそうです。結局男は愛と仕事なら仕事を取るのかしら?
あくまでも私の意見ですが、男の方が女よりも身内の病や死と向き合うことに及び腰ですね。

この映画の原作は、ハーバードで神経科学の博士号を取得している神経科学者のリサ・ジェノヴァが書いた『Still Alice』です。
彼女はもし自分が…と思いながら書いたのでしょうね。
監督のリチャード・グラツァーはALSを患っており、この映画が最後となったようです。

お涙ちょうだいの映画ではなく、淡々とアリスと家族の様子を描いた映画でした。