池上 英洋 『恋する西洋美術史』2009/12/17

意味深な題名に思えるかもしれませんが、内容は西洋画の中に描かれた恋愛や画家達の恋愛模様を取り上げたものです。

 第一章「恋する画家たち」
 第二章「愛の神話」
 第三章「愛のかけひき」
 第四章「結婚」
 第五章「秘められた愛」
 第六章「禁じられた愛」
 第七章「愛の終わり」
 
こういう感じです。
さて、本の中で特に印象的だったことは・・・。

ルノアールは愛妻家だったらしく、彼の書く女性の豊満さは奥さんのアリアーナからきてたんですね。
有名な「舟遊びの昼食」の左側に座り犬を抱いている女性が出会った頃のアリアーナです。


彼の描く絵から出てくる溢れ出る色彩と暖かさは、奥さんとの幸せな家庭があったからこそなのかもしれません。
 

あどけなさを残した「舟遊び」から母になった喜びが画面から感じられます。
年をとっても、ちゃんと奥さんを描いています。


ルノアールの描くどの絵も、心を暖かくするものですが、それには理由があったのです。彼はこう書いています。

「私にとっては、絵画というのは愛らしく、喜ばしく、かわいらしいものでなければならない。そう、かわいらしくなくては!この世にはただでさえ悲しいことがあふれているのだから、私たちまでがそれを増やす必要はないのだ――」(本文35ページより)

晩年は経済的にも恵まれていた彼ですが、最初はお金に苦労したといいます。
苦労したからこそ彼はこのような愛らしい、暖かい絵を意図的に描くようにしたのですね。
 
同じように妻を描いた画家がいます。
クロード・モネです。
彼の最初の妻カミーユは二人目の子供を産んでから体調を崩し、回復することはなかったといいます。
元気な頃の彼女は「ひなげし」という絵の中に息子と二人でたたずんでいます。


モネはルノアールと比べると、人物より風景に興味があるようです。
そういえばルノアールの有名な絵は人物画ですが、モネは「睡蓮」など風景画が多いですね。
モネはカミーユが亡くなるとき、死にゆく彼女の顔を描きました。


 モネが追求したのは、「光と色の変化」。
死にゆく妻の顔を永遠に残そうとしたのではありません。
モネはあくまでも夫というより画家であったのでしょう。

夫としてみると、ルノアールが人間的で好きですが、絵は・・・。
難しいですね。どちらも捨てがたいです。 
 

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