帚木蓬生 『水神』2010/04/15

帚木さんの本を読むたびに、最後が残念だなと思ってきました。
でも、この本は違います。
白血病になり、入院していた無菌室で書いたそうです。
そのためか、絶筆になってもよいという思いで書かれたようです。
福岡にある大石堰の史実が元になっています。


江戸時代初期の頃、島原の乱で父を亡くした元助は、なにかと庄屋の助左衛門に目をかけてもらっていました。
彼は足が悪いにもかかわらず、相棒の伊八と共に土手の上から筑後川の水を桶で汲み上げ、水路に流す打桶の仕事をしていました。
毎日、朝から晩まで休みなく水を汲み続けなければならない仕事でした。

このような生活を変え、いつでも水が田畑を潤すようにと、五庄屋が死罪覚悟で藩に堰渠(えんきょ)の一大土木工事を請願します。
島原の乱で息子を亡くした老武士の協力もあり、藩も工事を認めます。
しかし、工事の費用はすべて五庄屋持ち。
何かあったら、全ての咎は五庄屋がおうというものでした。
それでも、田畑に水が行き渡る未来を思い描き、百姓たちは喜んで工事に参加します。 
そして、いよいよ出来上がった堰に水を通すことになりますが・・・。
 
どの時代も変らず、お役人は卑怯ですね。その代わり、五庄屋の潔いこと。
たとえ不可能に思えても、それでも未来を見据え、行動を起こすということが必要なのですね。

お勧めの時代小説です。