サラ・パレツキー 『ウィンター・ビート』2011/09/22



前作ではヴィクの両親に対する思いが素敵でした。
最新刊では従妹のぺトラがやっぱり貧乏神だった・・・という感じです。
ぺトラは父親のことで可愛そうと言えなくはないのですが、甘やかされて育ったために我儘なところがあり、ヴィクは振り回されてばかりいます。不思議ですね。ヴィクはぺトラ以外の人には言うべきことをはっきり言えるのにね。

選挙事務所の仕事が終わった後も、ぺトラはシカゴにいました。日中も働いているのに、お金になるからといって、ヴィクやミスタ・コントレーラスの反対を押し切り、ナイトクラブでも働き始めました。

依頼人とのミーティングからの帰り道にぺトラが”緊急すぐテレ”というメールをよこします。電話をすると、すぐクラブに来るようにとのこと。
ぺトラが働いているナイトクラブでは<ボディ・アーティスト>のステージが評判になっていました。<ボディ・アーティスト>は自分の体をキャンパスにして自身も絵を描き、お客にも絵を描いてもらうというステージをしていました。
その日に、<アーティスト>のペイントブラシのひとつにガラスの破片が埋め込まれているのが見つかり、誰かが<アーティスト>を殺そうとしているとぺトラは言うのです。
ヴィクは<アーティスト>に会ってみますが、相手にされません。

その一週間後、ぺトラが事務所に現れます。どうも何かを隠しているようです。
彼女にちょっかいを出してくる男がいて、ヴィクにその男のことを調べて欲しいと言うのです。
ヴィクはぺトラのことが心配で、男のことを調べると約束してしまいます。

ヴィクが男のことを調べ始めてから、ナイトクラブで<アーティスト>の体にペイントをしていた常連客の女が殺されます。容疑者として捕まったのは、<アーティスト>にからんでいた、ベトナムからの帰還兵のチャドでした。
ナイトクラブにいた人からヴィクのことを聞いたチャドの父親がヴィクに会いにきて、息子の無実を証明して欲しいと頼まれます。

ヴィクがいつもの粘りを発揮して探し出した真実は、いつもと同じ割り切れないものでした。

50歳になろうとするヴィクは老眼で悩み、老いを感じていますが、やることは前と同じ。怪我をしようが全然へこたれません。流石です。
ところがお嬢ちゃんのぺトラは、一旦はヴィクの仕事を手伝うのですが、「大変なときに見捨てるなんて、したくないけど、あたしって探偵仕事に向いてるとは思えないの」なんて言っちゃって、ちゃっかりとヴィクを見捨てます。ついでに「ヴィクがすっごくタフでクールなのを見て、あ、悪くとらないでほしいんだけど、あたしがヴィクの年になったとき、そんなふうにはなりたくないって思ったの」なんてまで言います。恩を仇で返すっていうんでしょうかね。
ヴィクはそんなぺトラにこう言います。

「ぺトラ、あなたが助けを求めてきたから、わたしは助けてあげた。今度はさっさと離れていこうとしてる。たぶん、タフな人間になるのがいやなのね。でも、もっと思慮深くて、もっと責任感のある人間になる必要があるわよ」

ヴィクのいう事は、たぶん、ぺトラには届かないでしょう。
でも、ヴィクのよさをわかってくれる人はいます。ジャーナリストのモレリと別れた後のボーイフレンドのジェイクです。彼はヴィクのアパートの下の階に住んでいるコントラバス奏者です。
彼って粋なことをやってくれます。うらやましいわぁ~。

たとえ60歳になっても、いいえ、70歳、80歳・・・生きている限りヴィクは真実を求めて闘い続けるでしょう。
だから私はこのシリーズが好きです。

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