伊吹有喜 『犬がいた季節』 ― 2020/11/27

三重県四日市市の進学校、八稜高校に一匹の白い犬が迷い込んできました。
彼は藝大を目指している男子生徒の名を取り、コーシローと呼ばれることになります。
美術部でしばらく世話をしながら、飼い主を探すことになりますが、申し出る人は誰もいませんでした。
里親を募集しますが、誰も現れません。
そのためコーシローは高校で飼うことになります。
面倒は「コーシローの世話をする会」でみて、コーシローは美術部の部室で暮らすことになります。
このお話はコーシローが高校で暮らした昭和63年(1989年)から平成12年(2000年)までの「コーシローの世話をする会」に関わる高校三年生たちと、100周年記念式典の行われた平成31年(2019年)を描いています。
コーシローが最後まで思いを寄せていたのは、パン屋の娘で初代「コーシローの世話をする会」の一員・塩見優花と藝大を目指していた早瀬光司郎でした。
様々な生徒がコーシローの世話をしますが、この二人はコーシローにとって特別な人なのです。
高校三年生って進路を決めなければならない重要な時期です。
進路がしっかり決まっているのならいいのだけど、まだはっきりしなくて、迷い続けたり、何かのきっかけで、方向転換したり、親と意見が違い口論したり・・・。
地元か東京かも大事です。(と言っても、私は田舎に住んでいたので、どっちにしろ大学に行くには親元を離れなければならなかったのですけど)
好きな人もいますが、なかなか思いを告げられずに、卒業で別れ別れになってしまい、人づてに思いを知ることもあります。
あの頃、何者でもない自分が厭わしいばかり。
あの頃、何を考え、何を思い、故郷を後にして新しい世界に足を踏み出したのか。
本の中の高校三年生たちにあの頃を彷彿させられ、懐かしさのあまり、思わず涙が・・・なんて、笑。
伊吹さんの故郷が四日市市で、四日市高校出身だそうです。
四日市高校では実際に犬を飼っていたとのことです。
『夜のピクニック』に続く、高校生を描いた秀作です。
コーシロー、カワイイです♡
我が家の犬たちは、日向ぼっこです。

兄は絶対にカメラを見ません。

弟はカメラ目線で、写真写りがいいです。
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