吉田修一 『国宝』2022/01/31



1964年、東京オリンピックの年。
長崎の極道の家に生まれた立花喜久雄は14歳の正月の新年会で組長である父親を殺される。
組はもはや風前の灯火。
何をするかわからないと思われた喜久雄は、宴会の余興で喜久雄が歌舞伎の真似事をして踊るのを見ていた大阪の歌舞伎役者・花井半次郎に預けられることになる。
半次郎には父親と同じように役者を目指している息子の俊介がいた。
喜久雄と俊介は互いにライバルとして切磋琢磨して高みを目指していく。

やがて地方巡業で二人が組んだ『二人道成寺』が注目され、二人は一気にスターになる。
しかし、半次郎が交通事故に遭い、代役に指名されたのは喜久雄だった。
ショックを受けた俊介は失踪してしまう。

その三年後、半次郎は四代目花井白虎を、喜久雄は三代目花井半次郎を襲名することになる。
だが、同時襲名披露興行初日の口上の席で半次郎が倒れる。
この時から喜久雄に役者としての試練が襲いかかる。

次々と起る不幸に翻弄されながらも、芸の道を究めようとする喜久雄と俊介の行く末が気になり、ところどころに入る演目の説明がもどかしくもありましたが、一気に読んでしまいました。
文体が「~でございます」とか「~であります」などで、誰かが物語を語っているようです。
一体誰が語っているのか、最後までわかりませんでした。
義太夫の太夫が語っているという趣向でしょうかね。

なんとも言えない幕切れでした。