西條奈加 『よろずを引くもの お蔦さんの神楽坂日記』2022/07/01



高校生の滝本望は両親が転勤で札幌に行ったため、神楽坂にいる祖母の家にやっかいになっている。
祖母のお蔦は元芸者で、映画にも出ていた元女優で、今は多喜本履物店を営んでいる。
粋で気が強く、面倒くさがり屋なのに、ご近所衆から頼られる人気者で、神楽坂商店街には若かりし頃銀幕スターだった祖母のファンがいて、ファンクラブを結成しているほどだ。
そんなお蔦のところにいつものように事件が持ち込まれる。

「よろずを引くもの」
神楽坂商店街では頻発する万引きに手を焼いていた。
そんなある日、菓子舗伊万里の主人が逃げる万引犯を捕まえようとして、怪我をしてしまう。
望と木下薬局の孫・洋平は万引き犯を捕まえるために、犯人の似顔絵を描くことにするが…。

「ガッタメラータの腕」
望が所属する美術部で、部長の穴水が作ったガッタメラータの腕、広げたエプロンをもち上げた両腕が紛失する。
望がお蔦にそのことを語ると、彼女はエプロンを見たくなかったから、目の前からどけただけではないかと言う。
それを聞き、望は犯人をあぶり出すために、あることを思いつく。

「いもくり銀杏」
『鈴木フラワー』の央子が多喜本履物店に二人の小さなこどもを連れてくる。
二人は三、四日前と服が同じで、お風呂に入った様子もなく、不審に思った央子が事情を聞くと、母親は旅行に行っていると答えたと言うのだ。
お蔦たちはとりあえず二人を神楽坂署に連れて行くが…。

「山椒母さん」
望が学校から帰ると、お蔦がテンパっていた。珍しいことなので、何だろうと思ったら、芸者時代の知り合いの勝乃姐さんと彼女の置屋のお母さんが来ているという。
お母さんこと原田十喜子は、置屋を飛び出して行方知らずになってしまった初乃を探して欲しいらしい。

「孤高の猫」
野良猫ハイドンがいなくなった。神楽坂商店街の若手が十人集まり、神楽坂中を走り回り、ハイドンを探すが、見つからない。
最後にハイドンを見た人は後ろ足の片方を引きずっていたと言う。
それを聞き洋平がひらめく。

「金の菟」
お蔦は今は餃子屋をしている女優時代の知り合いから、結婚祝いに映画監督からもらった純金製の兔の置物を探してもらいたいと頼まれる。
兔は見つかったが…。

「幸せの形」
望の祖父の末弟・乾原奉介のサプライズ誕生会が開かれることになる。
望は料理を作りつつ、奉介の娘・楓にケーキ作りを教えることになる。

西條奈加さんと言えば時代小説という印象ですが、こういう今風なお話も書いています。
今回は残念ながら時代小説ほど面白いとは思いませんでした。
クレプトマニア(窃盗症、病的窃盗)や育児放棄など社会問題を扱ったものもありますが、ありきたりで深みがなく、あっさり終わったという感じです。
ミステリーというほどではないし、望が駆けずり回り、最後をお蔦が締めるというのが定番だけど、前のお話の方がもっと面白かったような気がします。
もっとお蔦さんが前面に出てくれるといいのですが。

そうそう望君が作るお料理が本格的で、びっくりしました。
奉介さんの誕生日に二種類のブルスケッタに、スペアリブの和風フライ、アクアパッツァなんて、こんなに作れる高校生ってなかなかいないと思いますよ。
欲しい息子の第一位ですね、笑。

劇場版「きのう何食べた」を観る2022/07/02

上映されてから大分経ちますが、やっと劇場版を観ることができました。
(ネタバレあり)


ケンジの誕生日にシロさんが考えたのが、京都旅行。
喜ぶケンジだったが、シロさん、二人で旅行なんて嫌だと言っていたのに、何で急にと疑心暗鬼になり、京都では幸せ過ぎて、妄想が…。
まさか別れを言い渡される?
重大な病気が見つかり、シロさん、死んじゃうの?

シロさんがケンジを連れていったのが、定番の京都です。
八坂通から産寧坂、「2時間サスペンスでやたらと犯人が自白する場所」(笑)という南禅寺の水路閣、高台寺のライトアップ、そして平安神宮。
二人で食べた美味しそうなカレーうどん。
南禅寺の近くの「日の出うどん」のだそうです。
二人で泊まった和風旅館は「南禅寺八千代旅館」。
竹林は高台寺ので、あぶり餅は今宮神社参道のお店のようです。
願かけをしていたのが、八坂庚申堂。丸い何かに願い事を書いていましたが、それは「くくり猿」というのだそうです。
カレーうどんのお店と八坂庚申堂は行ったことがないので、今度京都旅行に行けたら行ってみたいです。

そうそう、何でシロさんがケンジを旅行に誘ったのかには、悲しい理由がありました。
ケンジに謝るシロさんです。

旅行から帰ると、小日向さんが冷蔵庫が壊れたから食材を貰ってくれと言ってきます。
小日向さんと航が持って来たのは高級食材ばかりで、量が多いので、買い物仲間の佳代子さんを呼び出して、一緒に佳代子さん直伝の簡単ミートローフとアクアパッツァを作ります。
その夜、佳代子さんは娘と結婚相手が来るので食べずに帰っていきます。
佳代子さんの娘さんに子どもができたので、結婚するそうです。
喜ぶみんなでしたが、航は水をさします。
その後、みんなで楽しく夕食を食べますが、クリスマスとお正月のことが話題になり、シロさんがお正月にケンジを実家に連れて行かないというと、またまた航が…。
ちょっとヒネた航ですが、みんなが心の中で思っていることを言っているのかもね。
結局シロさんはお正月には実家に行かず、ケンジと二人で過ごします。

ケンジは職場の後輩の田渕に髪が薄くなったと言われてしまい、ショックを受けます。
こうなったら何でもやるわと思うケンジ。
そこに母親から電話があり、別れた父親が亡くなったと連絡が来たので、遺骨を取りに行ってくれと頼まれます。
遺骨を持って母の美容院に行くと、母に「あんんた見ない間にちょっとふけたね」と言われます。
ケンジの家は母も姉二人もケンジのことを認めているようです。
ケンジはシロさんの写真を見せて、姉たちに自慢します。
そんなケンジに母はこの店を継がないかと聞きます。
「その人、ずっとあんたの側にいてくれるの。これからは一人で死ぬのもきつい。あんたは淋しがり屋だから、こういう死に方は似合わない」と言う母。

仕事でシロさんは修先生とホームレスの殺人事件を扱います。
ホームレスの男は犯してもいない殺人で9年の刑になってしまいます。
「声を上げても無駄だ」、「闘ってもきつい思いをするだけだ」と上告を諦める男の言葉を尊重しなければというシロさんに、修先生が怒ります。
修先生、カッコいい。

美容院に田渕の彼女が来て、田淵が二股をかけられていたことがわかります。
あっさりと彼女と別れる田淵の株が上がりました(なんでぇ?)。
その後、田淵とケンジが商店街を歩いていると、シロさんが仲の良さそうな二人を見てしまいます。
そっと二人の後をつけるシロさん。
シロさん、嫉妬してるwww。

次の日、休みのはずのケンジが出かける用意をしています。
部屋の更新手続きのことを聞くと、歯切れのわるい返事をするケンジ。
不審に思ったシロさんは、ケンジの後をつけます。
そうするとケンジは病院に…。
その夜、ケンジはダイエットをしていると言いますが、シロさんの疑惑の念は深まります。

次の日、ケンジと話し合おうと思い早く職場を出ると、小日向さんが出入り口の前で待っています。
航が家出をしたというのです。
またかと思いながら二人の出会いなんかの話を聞いていると、「僕らはちょっとしたきっかけで愛する人を永遠に失うかもしれないのです」と小日向逆上。
結局航は近所のカフェにいました。
人騒がせな奴らですねぇ。
そこに帰って来たケンジ。
彼を見て、シロさん、固まってしまいます。
シロさんの疑惑の念は晴れましたけどね。

スーパーで佳代子さんに会うと、娘さんに赤ちゃんが生まれたとのこと。
名前にシロさんの名前の「朗」をもらい、「悟朗」とつけたというのです。
「悟朗」はシロさんのお父さんと同じ名前です。
その偶然に感動するシロさん。
肉団子の作り方をお母さんに聞きに行った時に、このことを話します。
どうやらお母さんと和解できたようです。

シロさんの誕生日にレストランに正装して現れるケンジ。
ちょっとヤーさん風だけど。
指輪を持ってきて、シロさんに強制的につけさせます、笑。

ケンジと一緒に花見をするシロさん。
花見弁当にはこの前お母さんから教えて貰った肉団子が入っています。
幸せそうな二人。


京都旅行をするというので、二時間ずっと京都かと思っていたら、違いました。
LGBTQ問題以外にもホームレスの男性のことが出てきていました。
「声を上げても無駄だ」と思って言わないのではなく、不当なことをされたら声を上げていくことが大事だということを思わせられました。
全体に明るい雰囲気で、サラッと深刻な出来事を描いています。
そういうところが受け入れられる秘訣なのでしょうね。

映画の中で一番食べたかったのは、りんごのキャラメル煮です。(作り方はここ
作りながらレシピを見ないで何グラムなんて言える人はいないと思いますけどぉ。
シロさん、暗記しているのかしら、笑。

気になる記事があったので、載せておきます。
「マイクロアグレッション」という言葉、知りませんでした(恥)。
私なんかもやってしまいそうだと思いました。気をつけなければ…。


<今日のわんこ>
兄犬の寝方にはいつも笑ってしまいます。
今度は頭と前足が出ていました。


なぜなのか不思議に思ったので、そっと上から覗いてみました。
そうすると…。


ハウスが兄の体長よりも小さいのです。
丸まって寝るとちょうどいいんですけどねwww。

「EMMA エマ」を観る2022/07/03

原作は1814年にジェーン・オースティンが発表した小説です。
1996年にグウィネス・パルトロウで映画化されていて、映画館で観ました。
2020年公開のこの作品は日本の映画館では上映されていないみたいです。


エマ・ウッドハウスはハイベリー村に暮らす、裕福な家に生まれ育った、美しさと利発さを持った21歳のお嬢様。
母が亡くなり、姉が結婚して家を出て行ったので、すきま風と消化不良を恐れる父と二人で暮らしている。

長年ウッドハウス家の家庭教師をしていたミス・テーラーが近所のウェストン氏のところに嫁ぐことになる。
ウッドハウス氏は嘆き、エマはミス・テーラーとの別れを惜しんでいた。
エマは結婚式でウェストン氏と前妻の息子、フランク・チャーチルに会うことを楽しみにしていたが、フランクは現れなかった。

ウェストン氏にミス・テーラーを紹介し、仲人役をしたエマは味を占め、次に寄宿学校に新しくやって来た孤児のハリエット・スミスを標的にし、彼女と牧師のエルトンを結びつけようとする。
しかしエルトンが結婚相手と考えていたのはエマの方だった。

それでもエマは諦めない。
農夫のロバートがハリエットに求婚したと聞き、身分の低い農夫との結婚はハリエットにもったいないと考え、ハリエットが断るように誘導する。
そして今度はやっと現れたフランクとハリエットをくっつけようとするのだが…。

自分の才気煥発さを誇る気持ちが強いエマは、独りよがりによかれと思うことをして、それが人を傷つけることになるかもしれないことを知りませんでした。
義兄の兄のナイトリーがただ一人、エマを諭しますが、聞こうとはしませんでした。
最後に自分の周りに友も、あれほど自分を称賛してくれていた人たちもいなくなって、やっといかに自分が思い上がっていたのかを知ります。
世間知らずのお嬢様、そのままですねぇ。
でもエマのいいところは、ひたすら相手の幸せを願っているところ。
自分が間違えたと知ると、すぐに素直に改めるところが憎めないですね。
そうそう、鼻血を出す場面がありましたが、原作にあったかしら?
なかったと思うけど、今度原作読み返しますわ。

映画では衣装が可愛いらしくて、眼福でした。
この頃のドレスはエンパイア・スタイルと言って、ハイウエストで、胸が強調され、体のラインが綺麗に出るそうです。
男性のカラーが特殊ですね。首の汚れが服につかなくていいかも。

そうそう、お父さん役がビル・ナイです。私、彼の出演作品は結構観ているみたいです。この前観た「ニューヨーク 親切なロシア料理店」にも出ていました。
すきま風を気にして、ついたてを持ってこさせ、四方を囲まれて本を読んでいる姿には笑わせてもらいました😊。


映画で使われたお屋敷はイギリスのイーストサセックス州にあるファール・プレイス(Firle Place)だそうです。

まったくジェーン・オースティンの原作を読んでいない人にはちょっとわかりずらいところがありますが、可愛いお洋服やお部屋が好きな人は観ても損しない映画です。


<今日のおやつ>


近所の美容室が三周年ということで、クッキーを頼んで作ってもらったそうです。
体に良さそうな雑穀クッキーです。
夫も食べたので、2枚しか食べられませんでした…。

中山七里 『棘の家』2022/07/05



穂刈慎一は中学校教師。
イジメは「弱者が更なる弱者を虐げること」だと考え、イジメの加害者を一方的に糾弾しても、「また別のかたち、別方向からの暴力になりかねない」と考えている。
それにイジメを報告しても、学年主任や校長・教頭はすぐに認めようとはしない。
だから自分のクラスにイジメがあることを知らされても、うやむやにせざる得ないと思っていた。

ある日、授業中に電話がかかってくる。妻の里美からだった。
授業中には電話やメールもしないように取り決めをしているのだが。
違和感から電話に出ると、娘の由佳が小学校の三階から飛び降りたと言う。

千住署の聞き取りから由佳がイジメられていたということがわかる。
生活保護を受けている家庭の子がイジメられているのに反発し、担任に報告したのことから、イジメのターゲットになったという。
由佳はそのことを両親にはひと言も洩らしてはいなかった。
警官の坂東に誰がイジメに加担していたのかと聞いても教えてくれない。
被害届を出せば徹底的に捜査をするというが、出したら出したで、新たな紛争が起りかねないと言われた。

家では妻の里美が加害児童への復讐に燃え、息子の駿は穂刈を「家の中まで教師面」だと責める。
穂刈は教師としての立場と親としての立場の間で揺れ動く…。

そんなある日、帝都テレビの<アフタヌーンJAPAN>の記者・兵頭から声をかけられる。
警察や小学校の対応に納得できず、猜疑心に囚われていた穂刈は、マスコミを利用して情報を手に入れようと思う。
ネットでは由佳の名前も加害者の名前も、イジメの原因の子の名前もすべて特定されていた。

その頃、加害者の彩が行方不明になり、しばらくして死体となって見つかる。
息子の駿が参考人として千住署で事情聴取を受ける。
そのためネットは駿が彩を殺したと騒ぎ立てる。

朝から家の前に報道陣が押し寄せる。
ネット住民は野次馬根性と下賎な正義感でプライパシーを暴く。
職場は針の筵で、無理矢理休暇を取らされる。
家庭では四六時中気の休まる間もなく、外出さえままならない状態が続く…。

学校の隠蔽体質はなかなかなくならないものなんですね。
北海道旭川市で起った悲惨ないじめが思い出されます。
昔もいじめはあったけど、今のような陰湿さはなかったような気がしますけど、私が知らなかっただけかもしれません。
殺した犯人がわかりやすいのですが、いじめの理由と同様、あまりにも短絡過ぎる理由だと思いましたが、そんな世の中なのかもしれませんね。
冷静な父親と錯乱状態に陥る母親というのが、固定観念に囚われているように思いました。錯乱状態に陥る父親と冷静な母親もいるよね。
穂刈が教師として、父親として悩む姿にあまり同情できませんでした。
私も子どもがいたら、穂刈には担任になってほしくないですわ、笑。
穂刈の家庭は崩壊して、もう元には戻らないと思いますよ。少なくとも、穂刈はもう家族に相手にされないでしょうね。

読んで気持ちのいい内容ではありませんが、いじめ問題について考えるためのいいきっかけになる本です。

『裏通りで弱者が自分より弱い者を痛めつけるのがイジメだ』

あなたはこの言葉は正しいと思いますか?

アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム 『制裁』2022/07/06

スウェーデン・ミステリー。<グレーンス警部>シリーズ第一作目。


連続女児暴行・殺害の罪で服役していたベルント・ルンドが病院への護送中に脱走した。
ストックホルム市警の警部エーヴェルト・グレーンスたちはルンドの行方を追う。

作家のフレドリック・ステファンソンはテレビに映ったベルント・ルンドの顔を見て衝撃を受ける。
その男が娘のマリーが通う保育園の門の前のベンチに座っているのを見たのだ。
急いで恋人で保育園職員であるミカエラに電話をしてマリーを探して貰うが、マリーはどこにもいない。

しばらくして、森でマリーの遺体が見つかる。

ステファンソンはルンドがまた同じことを繰り返すと警察が確信し、保育園や学校を見張っていると聞き、秘かにルンドの個人情報を調べ、彼が個人タクシー会社をやっていたことを知り、警察を騙って送迎リストを手に入れる。
そして義父が持っているライフルを手に入れる。

ルンドの行方は依然としてわからず、捜査は行き詰まっていた。
そんな時に検察官のオーガスタムがエーヴェルトに手がかりを与える。
ルンドは自分の個人タクシー会社で保育園や学校への送迎の仕事をやっていたのではないか。もしそうなら、その保育園を狙う可能性があると。

やがてステファンソンはルンドを見つける…。

この本ではスウェーデンの社会問題を扱っています。
読み始めてすぐに、女児暴行のあまりの悲惨さから読むのを止めようと思いましたが、北欧最高の「ガラスの鍵」賞を受賞したというので、我慢して読み進めていきました。
グレーンス警部は癇癪持ちの変わった人で、警察署に寝泊まりし、マルムクヴィストという歌手の歌を大音量でずっと流し続け、警察関係者を罵倒しまくり、主人公なのに滅多に現れない上に、それほど活躍しません。
ルンドの事件はすぐに片付いてしまい、その後に続くタルバッカ村と刑務所のことで何とも言えない嫌~な感じを持ったまま、衝撃のラストを迎えます。
色々と考えさせられる内容ですが、胸くそが悪くなること請け合いです。
一作目がこれですから、次もこういう感じなのでしょうか。

あとがきによると、スウェーデンには死刑制度はなく、最高刑は無期懲役で、二十年前後で出所するのが通例だそうです。
刑務所では更生に向けたじゅうぶんなケアはされず、刑務所内の管理も甘いらしいです。
どれほど犯罪が多いかわかりませんが、犯罪人にとっていい国ですね。
だから幸福度が高いってわけではないでしょうが、笑。

ミステリーだと思って読むと面食らいますから、十分気持ちを整えて(?)読むようにしてください。
私はお口直しにこのシリーズよりも刑事ヴァランダー・シリーズの方を先に読むことにしますわ。

宮部みゆき 『子宝船 きたきた捕物帖(二)』2022/07/08

きたきた捕物帖』の続編です。
北一のことは前のブログに書いたので、今回は書きません。
気になったら、前回のブログを読んでみて下さい。


阿漕な万作夫婦と喧嘩をし、独立した北一ですが、様々な人たちの助けによって何とか文庫づくりも軌道に乗ってきています。

<第1話:子宝船>
ある日、北一は「長命湯」で釜焚きをしている喜多次のところに行き、焚き付けを仕分けるのを手伝いながら、商売の参考にしようと引札を探していました。
そうすると宝船の絵が捨てられています。
その絵は変わっていて、弁財天が見る者に背中を向けています。
面白い絵なので、貰って帰りました。

そんな頃、村田屋治兵衛から宝船の絵に関わる揉め事の話を訊きます。
酒屋『伊勢屋』がお年賀に配った子授けの力があるという宝船の絵のせいで、煙草と線香の店「多香屋」の生まれたばっかりの赤子が死んでしまったというのです。
不思議なことに宝船の絵の中から弁財天が消えていたと言います。
うちの子も多香屋のように連れ去られるんじゃないかと大騒ぎにならないように、噂を抑えているようです。
「長命湯」で見つかった絵のこともあり、北一は調べてみることにします。

<第二話:おでこの中身>
「おべんとう 桃井」は北一がちょっと懐が温かいときに利用している店でした。
亭主は角一と言い、おつねという女房とまだよちよち歩きの二歳の娘・お花がいました。
二年前におつねが馴染みの客にしつこく付きまとわれるので、四ッ谷から深川にやって来たのです。
ところが長月の十日の朝、手習所の師匠・武部言左衛門が北一の所に来て、桃井の雨戸が一枚も開いていない上に、嫌な臭いがすると言います。
一緒に桃井に行くと、家族三人が土間で死んでいました。
ショックを受ける北一。
店の前で呆然としていると、一人の女が目に入ります。

<第三話:人魚の毒>
弁当屋「桃井」の一家三人殺しの件は進展を見ぬままでした。
そんなある日、北一は検視の与力、栗山周五郎から、桃井の件が正しい解決を見るまで、彼の下について使いっ走りをする気はないかと言われ、承知します。
栗山は北一に言います。彼が手がけた検視で見つけた手掛かりのうち、七割方は無駄になってきたと。
北一は桃井の件がうやむやにされないように、本所深川方同心・沢井蓮太郎らに知られぬように、三人が殺された日の朝に見かけた女の行方を捜すことにします。

久しぶりの北一はまだまだ一人前の岡っ引きにはほど遠いのですが、検視の栗山に鍛えられ、少しずつ成長していくようです。
今回は喜多次はあまり活躍しません。二人一緒に謎解きをしていくのかと思ったのですが、どうも違うようです。
そうそう、「ぼんくら」シリーズのおでこの三太郎が出てきて、びっくりです。
なんと結婚していました!弓之助は長崎に行っているらしいです。
他にも懐かしい名前が出てきました。
北一が岡っ引きになるのかどうかわかりませんが、とにかく一人前になるまで、続いていくシリーズのようです。

マーティ・ウィンゲイト 『図書室の死体 初版本図書館の事件簿』2022/07/09



『図書室の死体(The Bodies in the Library)』という題名を見ると、何か思い出しませんか?
そうです、アガサ・クリスティの書いたミス・マープルの『書斎の死体(The  
Body in the Library)』で、この本はオマージュ作品なんです。

ヘイリー・バークはバースにある初版本協会の新米キュレーター。
初版本協会はアガサ・クリスティなどの初版本の収集家だった故レディ・ジョージアナ・ファウリングが設立したもので、彼女の自宅だったミドルバンク館に事務局と図書室があり、図書室には膨大なコレクションが所蔵されている。
ヘイリーは十九世紀文学で学位を取得し、前職はジェーン・オースティン・センターのアシスタント・キュレーターのアシスタントで、異例のキャリアアップを成し遂げたのだ。
離婚して娘が一人いるので、金銭面でもありがたいキャリアアップだ。
しかし、問題が。実は彼女、一度も探偵小説を読んだことがないのだ。
このことが協会の終身事務局長のミセス・ウルガーや理事たちにバレて、首にならないかという心配がある。
そのためヘイリーは協会での自分の存在価値を証明しようと躍起になっている。

ある日の朝、図書室で男性の死体が見つかる。
それは館で勉強会を開いているアマチュア作家サークルの一員、トリステだった。昨夜、彼は勉強会が終わると出て行ったはずだ。
サークルのメンバーたちはアガサ・クリスティ作品の二次創作をしているので、ここぞとばかりに警察の捜査に口を挟んでくる。
ヘイリーは困った警察から彼らに捜査の邪魔をさせないようにして欲しいと頼まれる。
一方、サークルのメンバーたちはヘイリーが警察から何か聞いているのではないかと思い、訊いてくる。

ヘイリーは初めは事件解明は自分の仕事ではないと思っていたのだが、母親から渡された『書斎の死体』を読んで、気持ちが変わる。
トリステ殺害は自分が解決しなくてはならない。協会のためにそうする必要があると思い込んでしまったのだ。

そんな時に、レディ・ファウリングのろくでなしの甥、チャールズ・ヘンリー・ディルがミドルバンク館に現れる。
彼はミドルバンク館を我が物にするためのいいチャンスだとばかりにバースにやって来たのだ。
前任者を追い出した彼に自分も追い出されてしまうのではないかと恐れるヘイリー。

ヘイリーはトリスト殺害事件の解明に協力しつつ、チャールズ・ヘンリー・ディルとも闘わなくてはならなくなる。

クリスティの『書斎の死体』を読んで、ヘイリーが「探偵小説とは、鋭敏な知性、騙り、登場人物、一杯のお茶で構成され、そして最後の最後に混沌から秩序を引き出す物語なのだ」と悟りを開くなんて、びっくりです。そう簡単に悟りが開かれるものでしょうか?
まあいつまでもヘイリーが事件に関わらないようにしていると、話が進みませんからねぇ。
これに味をしめて、ヘイリーは次なる死体を探すようになるのでしょうかね。

さて、彼女が二作目に読む探偵小説は何か。推理してみましょうか。
と思ったら、あとがきに書いてありました。(知りたい人は剥がしてみて下さい)
「Murder Is a Must」という英語の題名です。
ドロシー・L・セイヤーズの『殺人は広告する( Murder Must Advertise)』が次の事件に関係するらしいです。
私は読んだかどうか、記憶がないです。

本格的ミステリーというより、コージーミステリーです。
このシリーズは今年の一月に三作目が出版されています。

バースといえば、ローマ浴場跡が有名ですが、ジェーン・オースティンが1801年から約5年間滞在していたそうです。
ジェーン・オースティン・センターでは科学捜査で似顔絵等を作成する専門家が制作したオースティンの等身大の蝋人形やオースティンの映画で使われた服や小物、直筆原稿をはじめ、当時の暮らしぶりまでが垣間見られるそうです。
リージェンシー・ティー・ルームに入って「Tea with Mr. Darcy」を頼みたいわ。
バースでは毎年9月にジェーン・オースティン・フェスティバルが開かれ、18世紀初頭のコスチュームを着た人々が街に溢れるそうです。
いつイギリスに行けるかわかりませんが、9月に行ってフェスティバルに参加してみたいですね。

平谷美樹 「貸し物屋お庸」シリーズ三冊2022/07/10

夏になると花はあまり咲いていないと思っていましたが、ピンクの花が沢山咲いている庭がありました。


調べてみると、八重咲きのムクゲのようです。
ムクゲにも八重咲きってあったのですね。知りませんでした。



五冊目の『貸し物屋お庸謎解き帖 桜と長持』を先にkindleで読んだので、お庸が何故貸し者屋をやるようになったのかがわかりませんでした。
気になったので、わざわざ紙の本を取り寄せて読んでみました。

『貸し物屋お庸 江戸娘、店主となる』
『貸し物屋お庸 娘店主、奔走する』
(『貸し物屋お庸 娘店主、捕物に出張る』 在庫なし)
『貸し物屋お庸 想いを秘める』

この四冊の出版社は白泉社で、招き猫文庫の中にあります。
五作目は大和書房のだいわ文庫から出版されました。
ちなみに「招き猫文庫」とは「新しいキャラクター時代小説シリーズ」だそうです。
この三冊を読んで、私の疑問が解けました。

お庸の父親の儀助は神田大工町の大工の棟梁で、家に活きのいい江戸の大工たちが出入りしており、棟梁のお嬢さんという扱いは受けず、男の子と同様に扱われていたので、お庸は口が悪くなったようです。(親の躾が悪いよね)

元禄七年(1694年)の一月、儀助が伝馬町の呉服屋さかえの主人から頼まれ、手掛けた寮のお披露目に、お庸と儀助が招かれます。
宴で使う塗り物を届けに来ていたのが、貸し物屋の湊屋清五郎でした。
父に紹介され、清五郎を見たとたんに、お庸は一目惚れをしてしまいます。
と言っても初めて体験する感情なので、その時お庸は自分が清五郎に惚れてしまったことに気づいていませんでした。

寮のお披露目から二日が経った日の夜、賊がお庸の家に押し入ります。
百両が盗まれ、父と母は殺され、お庸は背中を切られ、生死の境を彷徨います。
賊は鉄火の又蔵一味でした。
お庸は湊屋に行き、清五郎に親の仇討ちのために力を貸してくれるように頼みます。もちろん力を貸すには損料が発生します。
お庸は一生湊屋で下働きをして損料を払うことになります。

そんなわけで、お庸は両国広小路の出店で働くことになりました。
お庸はお嬢さんでしたから、働いたことなどありません。そのため湊屋本店から手代の松之助が派遣されました。
彼が口の悪いお庸と客の間に入り、喧嘩にならないようにし、貸し物屋家業についてお庸に教えます。
松之助はいい奴で、物事をそっくりそのまま受け入れてしまう性分なので、出店を任されたお庸に腹を立てたりはしないのです。
しかし松之助には隠された秘密がありました。
この秘密はここには書きませんので、気になる方は読んでみて下さい。
あ、幽霊が出てきますが、この幽霊は…もちろん内緒よ、笑。
五巻まで読んでもわからないのが清五郎の過去です。
これからだんだんと明らかにしていくのでしょうか。
それとも五巻で終わっちゃうのかな?

お庸はキャラが立っていると言えば言えるのですが、私はどうも好きになれないです。 
五冊目では借り物の使い道を探るのがこのシリーズのメインになっちゃったみたいですが、主要人物(特に清五郎)に関わるお話も入れていった方がいいように思いますけどね。

<今日のわんこ>


頑張って5時半に出かけましたが、犬には暑かったようです。
この後兄は足が痛いようで、家でびっこを引いていました。(詐病?)
明日まで様子をみます。

クレオ・コイル 『ハニー・ラテと女王の危機』2022/07/11

「コクと深みの名推理」シリーズの19冊目です。


コーヒーハウス<ビレッジブレンド>で、マテオがコスタリカから仕入れてきて、クレアが焙煎したコーヒー豆をパリスタたちと味わっていた時、店内にハチが現れた。
ここはマンハッタンのど真ん中。それも十月で冬眠する時期なのに、なんでハチがいるの?
調べてみると、地下の焙煎室と屋上にハチの大群がいた。
急いでニューヨーク市警に電話をする。
実はニューヨーク市警にハチを担当する警察官がいるのです。(本当にいるのよ。ここを見て。実際に作業している姿が見られます)
やって来たミツバチ班の警官たちは慣れたもので、手早くハチを生け捕りにしていき、このハチたちはめずらしい種だと教えてくれた。
ハチは104分署の屋上にある巣に持っていかれた。

警官が帰った後、焙煎室を掃除していたマテオが、ハチがラベンダーの匂いがすると言い出す。
クレアはピンとくる。
このミツバチの飼い主は、マテオの母の古くからの友だちで高級ハチミツをつくっているビー・ヘイスティングスだと。
ミツバチのことを知らせようと電話をしてもビーは応答しない。
嫌な予感がしたクレアはマテオと共にビーの住むペントハウスに向かう。

エントランスにはドアマンが不在。仕方なく片っ端からブザーを鳴らして中に入り、業務用エレベーターを使って最上階まで行く。
裏口の呼び鈴を押しても返事はない。冷たい空気が流れてきたので、そちらの方へ行ってみると屋上に温室があり、巣箱が破壊されていた。
真下にビーの自宅のバルコニーの一部が見え、そこにビーがうつ伏せになって倒れている。
マテオはロープを使い、ビーを助けに行く。

ビーは助かるが、クレアにハチのことを任せると言ってから昏睡状態に。
家政婦はオーストラリアに戻っており、ノマドの姪のスーザンは連絡がつかない状態だった。
警察はビーが自殺を図った可能性が髙いというが、クレアは信じられない。
そんなわけで、またまた捜査に乗り出すクレア。

クレアはマイクと結婚間近ですが、マイクの様子がおかしいので、心配しています。
私も事件のこと以上に二人のことが気がかりです。というか、私はニューヨークの素敵な結婚式と披露パーティのことを読んでみたいのですよ。
なかなか結婚式の場面が出てこなくて、不満なんです。
次は結婚式をして欲しいわ。

NY市警のミツバチ班以外にも興味深い場所が書いてありました。
ホール(The Hole)と呼ばれている場所で、ブルックリンとクイーンズの国境にあり、海抜9メートルに位置している場所です。
この本にはニューヨーク市ブラック・カウボーイズ連盟がホールを使っていて、高齢になったカウボーイの一部が住み着き、馬に乗っていると書いてありました。
実際のホールのことを書いた記事を見つけたので、興味がある人は見てみてください。
ニューヨークって調べてみると面白そうです。

いい言葉も出てきました。
エレノア・ルーズベルトの「目の前の恐怖に立ち向かうたびにあなたは強くなり、勇気と自信を手に入れる。「こんなに恐ろしいことをやり遂げたのだから、もう何が来ても大丈夫」と言えるようになります。だから自分ではできないと思うことに挑戦してみなさい」
You gain strength, courage and confidence by every experience in which you really stop to look fear in the face.
You are able to say to yourself, ‘I have lived through this horror. I 
can take the next thing that comes along.’
You must do the thing you think you cannot do)
なんていいですね。

コージーミステリーですが、コーヒーと共に知らないNYを知るいい機会にもなるお話です。

<今日のわんこ>


昨日、左足がおかしかった兄。
今朝も歩き方がおかしいので、病院に行ってきました。
そうすると、膝蓋骨脱臼で関節炎を起こしているのではないかということです。
小さい時に膝が緩いと言われていたので、気をつけていたのですが。
詐病なんて言ってごめんなさい。外れた関節が元に戻ったので、ちゃんと歩けるようになっていたのね。
太らせないようにして(今は3.3㎏)、長時間のお散歩は止め、ソファに跳んで上ったりするのも止めさせなければ。
2、3日安静にして、痛み止めと胃腸薬を一週間飲ませることになりました。
ついでにアンチノールというサプリメントを紹介されましたが、効くのかしら?
犬も人間と同じように老化に悩まされますね。

町田そのこ 『宙ごはん』2022/07/12



宙(そら)には二人、母がいる。育ての母と生みの母。
育ての母・風海は愛情たっぷりに宙を育ててくれている。
一方、生みの母・花野は売れてるイラストレーターで、とても魅力的な人だ。
花野と風海は異父姉妹。
宙は二人とも大好きだった。

宙が小学校に入るときに、風海は夫の海外赴任でシンガポールに行くことになり、宙は花野と暮らすことになる。
花野は母親失格の人だった。ご飯も作らず、宙の世話もしない。
その代わりにご飯は花野に頼まれた佐伯が来て作ってくれた。
花野が恋人に夢中になって、宙をないがしろにしていた時に、佐伯は宙に手を差し伸べてくれた。
ビストロで働く佐伯が教えてくれたパンケーキは、それからの宙の心のより所となった…。

町田さんの本は本屋大賞を受賞した『52ヘルツのクジラたち』を読んだっきりです。彼女のテーマは家庭環境に恵まれない子どもたちなんでしょうか。
そういう子どもの話は読んでいると辛くなってきます。
かろうじて宙が強い子で、周りにいる大人たちが彼女をサポートしてくれたので、話は明るい方へと進んでいき、悲劇的な出来事があったとはいえ、ハッピーエンドとなります。(人生はこの後も続きますが)
私のような性格の悪い人間は上手く行きすだなぁと思ってしまいました(恥)。
現実ではこのような結末を迎える家族は少数で、だからこそこういうお話が必要で、読まれていくのでしょうね。

世界中の子どもたちが幸せな生活が送れますようにと願わずにはいられません。
たった一人でもいいから、手を差し伸べる大人がいたら、少しだけ人生は明るい方へと向かって行けるのかもしれません。
手を差し伸べる人になりたいとは思いますが…。

<今日のわんこ>


昨日、兄犬にかかりっきりになったので、弟犬はいじけてしまいました。
遊ぶ前にはいつも〇んちをするのに、しません。しないで遊んでいると、腸が活発になって床にしてしまうので、結局、遊ばずに終わりました。
(弟は小さい子どもと一緒で、トイレに行くのを忘れるのよ。兄は絶対にそんなことないのにね)
それからずっとハウスに入っていて、出てきません。

兄犬に薬をどうやって飲ませるのか、ママは困りました。
獣医さんに教えられたようにちゅーるにのせてやると飲んだ(食べた)みたいです。よかったわぁ。
サンプルにもらったサプリメントは、ネットを参考にし、穴をあけて中身を餌にかけました。とってもお高いサプリ(一錠・約100円)ですが、買ってしばらく飲ませてみることにしました(親バカね、笑)。

ちなみにこれから犬を飼おうと思っている人のために費用を載せておきます。
私の通っている獣医では、消炎・鎮痛皮下注射2000円、痛み止めの薬(オンシオール錠)一錠・200円、消化器系内服薬(サイトテック錠100)一錠・50円です。
犬は保険がないので、実費で、獣医によって費用は変わります。
お年で辞めた近所の獣医よりもちょっと高い感じです。
これから高齢になるにしたがい、病気が増えていくと思います。
犬の老後資金を貯めておかなくてはと思います。
自分のは…どうなるんでしょうねぇ、笑。