原田ひ香の本、三冊を読む ― 2022/07/14
異常気象や元首相暗殺、新型コロナ感染者増加など明るい話題のないこの頃。
今の気がかりは、夏の旅行に行けるかどうか。
コロナに感染するのは嫌だけど、二年間我慢したのだから、気分転換はしたいです。
だって兄犬が膝に怪我をし、ママは緑内障の手術をした左目がまた感染症を起こしそうで、ちょっと憂鬱なんですもの。
夏を無事に超えられるかしら?
さて、私の好きな作家の一人、原田ひ香さんの本を一挙に三冊、紹介しちゃいましょう。

『彼女の家計簿』
シングルマザーでコンピュータープログラマーをしている里里のところに、疎遠だった母親からの封筒が届く。
開けてみると簡単な手紙と谷中に住んでいる三浦晴美という人からのぶ厚い封筒が入っていた。
中には五十鈴善吉様、ご家族の皆様へという手紙と、五十鈴加寿という女性の家計簿が数冊入っていた。
里里の祖父は善吉といい、祖母は母の朋子が子どもの頃、外に男を作って心中したと聞いている。
この加寿という女性は一体誰なのか。
朋子に聞くわけにもいかず、里里は家計簿の備考欄に書かれていた日記を読んでいくことにする。
この本を読んでいて、日本のジェンダーギャップ指数が先進国で最下位というニュースを思い出しました。
戦中、戦後と比べると女性の地位が向上したとはいえ、まだまだなのですよね。
『人生オークション』
「人生オークション」
就活に失敗し、アルバイトをしている瑞希は叔母のりり子のところに行かされる。
りり子は不倫の果てに刃傷沙汰を起こして離婚し、一人暮らしを始めたばかりで、一族の厄介者扱いをされている。
行ってみるとりり子はキッチンで寝ていて、八畳間は段ボール箱で埋まっている。
自分でも何が入っているのかわからないようだ。
見てみるとブランド物のバッグや靴などが入っている。
瑞希はりり子を手伝い、ネットオークションにかけていくことにする。
「あめよび」
大谷美子は眼鏡屋に勤めている。二歳年下の彼氏・輝男はサンシャイン・ゴリラというラジオネームを持つ有名なハガキ職人で、彼とはあるイベントで知り合った。輝男は放送作家になろうとしている。
そろそろ結婚をと考える美子だったが、輝男は頑なに結婚しようとはしない。
私、りり子みたいな女性が羨ましいです。彼女のような人って、誰かがいないとダメで、必ず世話を引き受けてくれる人が現れるんですよ。私なんか、自分でどうにかしないと誰も助けてくれないもの…。
輝男みたいな男は結婚したい女には最悪ですね。でも美子が思い切ってよかったです。
「諱(いみな)」のことが出てきましたが、今もそういう風習ってあるのでしょうか?
『ギリギリ』
瞳は夫を亡くしてから偶然再会した同級生の健児と時を置かず結婚した。
身寄りのない元夫の母親・静江は何かと連絡をしてくるが、瞳は忙しいので、脚本家で暇な健児が静江と話すことが多く、二人は仲良くなる。
しかし健児が静江から聞いた伯母夫婦の話からヒントをもらい、書いた脚本がテレビ局に採用された頃から、だんだんと瞳と健児の間がうまく行かなくなる。
脚本家のことが詳しく書いてありますが、原田さんはシナリオを書いていたのですね。三谷幸喜ぐらいにならないと、好きに書けないのかしら?
外国人と日本語で話をするというボランティアみたいな仕事、本当にあるのかしら?あったらやってみたいわ。
なんとも言えない三人の関係がいいですね。最後が残念だけど。
三冊の本、どれもお勧めです。
加納朋子 『空をこえて七星のかなた』 ― 2022/07/16

第一話:「南の十字に会いに行く」
七星は父と二人で石垣島へ行くことになる。ママは日本にはいない。
後でわかったのだが、父が石垣島に行こうと思ったのには理由があった。
第二話:「星は、すばる」
美星は夏休みに滞在したホテルで星空を見ている時にある男の子と友だちになる。
二人は将来、宇宙飛行士になるという共通の夢を持つが…。
第三話:「箱庭に降る星は」
生徒会室にオカルト研究会と天文部、そして文芸部の部長が集められる。
副会長から人数が足りないので、廃部だと言われ、オカルト研究会の女の子たちが泣き出す。遣り手だけど泣き落としに弱い副会長からある提案が…。
第四話:「木星荘のヴィーナス」
慧子の従兄のお兄ちゃんが木星荘に入居することになる。
彼の部屋の前任者は金江さんで、モデルをやっている。なんとお兄ちゃんは彼女のファンだった。偶然に喜ぶお兄ちゃんだったが…。
第五話:「孤船よ星の海を往け」
宇宙船が事故に遭い、カイトは船医の父の機転でコールドスリープ装置の<ヨット>で脱出する。無事に地球に帰れたが、コールドスリープ後の後遺症が酷く…。
第六話:「星の子」
中高一貫校の女子校に入学した私は、大スターの星合真吾の娘・水輝と友だちになる。親しくなるにしたがい、水輝のことが心配になり、母に相談する。
第七話:「リフトオフ」
私の母はロケットに搭乗して、月へと向かう。
母の壮行会が行われ、母に縁のある様々な人々が集まった。
そして、今日、母は月へと旅だつ。
最終カウントダウンが始まる…。
第一話から最終話まで読んでいくと、一見関係なさそうなお話が次々と繋がっていき、この人があの人だとわかっていき、上手く行きすぎと思うところもありますが、いつしか加納さんのマジックにハマっていました。
七話の中で特に私の思い入れがあるのが、一話と二話です。
またいつか石垣島に行って、星空バスツアーに参加できたらいいな。
二話では宇宙飛行士になるという夢のある女の子が小学校四年生の時に目に怪我をしてしまいます。
私も小学校四年生の時に目に怪我をして、それ以来矯正視力が1.0以上にならず、変だと思っているうちに緑内障を発症してしまい、今に至ります。
その時のことはあまり覚えていませんが、二話を読みながら、主人公の美星の思いが身に染みてきました。
夏休みに星空を見上げながら、特にYAの人に読んでもらいたい本です。
<今日のお届け物>
今日食べないので、おやつにはなりませんが、楽しみなスコーンが届きました。

カメリアティーハウスロンドンのスコーンで、クロテッドクリームもついてます。
ついでに一緒に届いたAOSANのパンです。

夫のランチ用の食パンが目当てです。
新型コロナ感染者が増え始めたので、都心に行くのがまた先になりました(泣)。
今月のトリミング ― 2022/07/17
毎月一回のトリミングに行ってきました。
行きは曇っていましたが、帰りは小雨。傘をさすために兄をストリングに入れると、何故か両腕を外に出します。
仕方ないので、腕で身体を支え、傘をさして帰りました。

短くと言ったはずですが、ちょっと長いですねぇ。

アレ、兄は何をしているのだ?

二人で仲良くふせ。 二人の距離が気になります。

ボーロを見せているので、早く食べたくて、舌をペロリ。

弟を動かして、近寄らせますが、嫌みたい、笑。

ちょっと耳がボサボサですねぇ。気づかなかったのですが、片耳の奥が炎症をおこしていたみたいです。薬のせいで、耳の毛が…。

兄と同じ向きで写真を撮ってみました。胴の毛がまた黒くなってきたみたいです。

珍しく舌を出しています。

舌と言えば、弟の定番です。

おすまししてます。
二匹共に3.4㎏。ちょうどいいそうです。太らせないようにしなければ。
兄の脚はもう痛くないみたいで、元気になりました。
痛み止めのせいか二回吐きました。吐いてもご飯をしっかり食べる兄です、笑。
また脚を上げたり、歩くのが変になったら来て下さいと言われました。
痛み止めを飲む以外に、一週間ごとに4回(だと思う)、関節軟骨の修復を促する注射があるそうです。
一本いくらかしら?人間と違って保険がきかないので高額になりそう。犬用保険に入っていますが、どれだけ出るのか…。
サプリメントのアンチノールはとりあえず60日分買って飲ませています。
効くかどうかは疑問です。人間のサプリも効くかどうかは微妙ですからねぇ。
気の持ちようですが、犬にはわからないからwww。
もともとペットショップから連れて帰った時から膝が緩かったのです。
初めて獣医に連れて行った時に言われたのですが、飼い始めたらかわいそうで、ペットショップに戻すことはできませんもの。
後何年一緒にいられるのかわかりませんが、一緒に楽しく暮らしたいものです。
髙森美由紀 『羊毛フェルトの比重』 ― 2022/07/18

地元の短大を卒業してから手芸店・八戸クラフトに勤めて10年。30歳になった根城紬の唯一のストレス発散方法が羊毛フェルトでぬいぐるみを作ることだった。
職場の先輩の豊崎にはいびられ、店長からは趣味のぬいぐるみを、時間外手当も、材料代もなしで、タダで店に提供するように言われる。
無職でパチンコ屋のバイトをしている彼氏の慎也は自分の都合のいい時にやって来て、ご飯を食べ、泊まり、お金までせびる。羊毛フェルトを金にもならないので時間の無駄だと言い放つ。
母親には嫌われないように、怒られないように、いつも顔色をうかがってしまう。
心にフタをして、理不尽なことを言われても反論せず、言いたいことも言わず、相手の言うがままに行動する。
そうやって毎日をやり過ごしていた。
ある日、店で小学生の男の子が棚にディスプレイしていた紬の作ったぬいぐるみを盗もうとした。
彼は湊日向と名乗り、ぬいぐるみが昔飼っていた犬のタイヘイにそっくりだと言う。紬は彼にぬいぐるみをあげた。
その後、日向の父親がぬいぐるみのお礼にやって来て、それ以来紬は湊親子と親しくなる。
日向は羊毛フェルトに興味を持ったので、紬が彼に教えてあげた。
義妹と会った後、アパートに帰ると焦げ臭い。作業机と途中まで作っていたぬいぐるみが焦げている。慎也の煙草だ。慎也と連絡を取ろうとしても、取れない。
紬の中で何かが壊れた…。
やがてぬいぐるみの依頼が少しずつ増えていくにつれ、紬は自分の生き方を考え直していく。
紬の、特に彼氏に対する態度にイライラしました。
こんな男とは別れりゃいいのに、何で言いなりになっているのか、私にはわかりません。
人が作った料理に文句は言うわ、給料日から一週間も経っていないのに、全部お金を使ったって、どういう使い方してるんだよ。
あ、その前に、会社を辞めた時点で、私は別れるわ。
まあ、小さい頃からの性格はそう簡単には変わらないわよねぇ。
それにしても紬は自己肯定感が低過ぎ。
湊親子や喫茶店アフォガードの女店主と娘、そして義妹の直美など、素敵な人たちが周りにいてくれてよかったわね。
それじゃなきゃ行く末は…(怖)。
親には理解してもらうんじゃなく、違った意見の人と思って付き合うしかないですね。
最後にやっと「幸せや人生の意味は他人が決めるものじゃない。自分が決めるんだ」と思え、紬が新しい一歩を踏み出せてよかったです。
今の自分に自信の持てない女子が読むと、勇気をもらえるお話です。
そうそう、本の中に出てきた青森のおにぎり「こびりっこ」を食べてみたいです。
南部煎餅の間に赤飯をはさんだものだそうです。
<今日のわんこ>

兄犬の前足がブーツのように切ってありました。
気がつきませんでした。

弟はバランス感覚がいいです。
流しにいるパパの方を見て、遊ぼうよと言っています。
佐竹アキノリ 『ホワイトルーキーズ』 ― 2022/07/19
今年から内科専攻医として勤務している現役の医師による、研修医一年目のリアルな生活を描いた作品です。

北海道の空知地方にある空知総合病院にやって来た四人の研修医のお話。
新型コロナウィルス感染症が流行し、2020年4月7日に七都府県に緊急事態宣言が出たが、北海道では札幌と旭川でコロナが出たぐらいで、地方はまだのんびりしていた。
30歳の風見司は工学部生命工学科の大学院から医学部に編入して医師になった。
最初は医学研究の道を志していたが、生活費のためにバイトや勉強に時間が取られ、普通の研修医の道を選ぶことになった。
とにかく目標は無事に初期研修を終えること。
しかし初っぱなから心肺停止の患者に出くわしてしまう。
朝倉雄介は母子家庭で、常にお金にゆとりはなく、弟妹たちが無事に就職するまでは、なんとしてでも働かなければならない。
一見飄々としているようだが、高齢者で溢れている病院の実態を知り、なんのために医者になったのかと空しく思う毎日。
沢井詩織は東京都内の私立医学大学を卒業後、実家のクリニックがある空知地方に戻って来た。父親のクリニックを継ぐのを期待されている。
人と関わる仕事が性に合わない。特に親しくもない老人と話をするのが嫌。
立派な医師を名乗るには経験が不足しているのを自覚している。
幼い頃から父のクリニックに通っていた患者を担当することになるが…。
清水涼子は成績優秀だが、奨学金返済のため空知総合病院を選んだようだ。
ちょっと不器用だが、真面目な性格で、四人の中で一番医師に向いていそうだ。
女医であることの苦労を知っているため、スタッフとうまく付き合っていくように努力している。
空知総合病院で亡くなった祖父母の主治医だった循環器内科の本庄医師と出会う。
彼が患者と向き合う姿を見て、自分が医師を目指した動機がいかに青臭いものだったのかを思い知らされる。
いい医者とはなんだろうか。悩みながら進んでいくしか道はないのだろうと思う。
北海道の空知地方の雰囲気が出ていました。
モデルの病院はなんとなく砂川市立病院かなぁと思いながら読んでいました。
日本は少子高齢化が進んでいますから、病院の患者は高齢者が多く、その中には認知症や合併症の患者がいて、医療従事者たちは大変だろうと思います。
それに高齢者は治して「一時的に良くなっても全体的に体調は下向き」ですから、医師も空しくなるんでしょうねぇ。
医師も人間ですから。
できれば、自分の親ならとか自分がその年齢になったらとかを考えて、患者と向き合ってもらいたいです。
続編も出たようです。
次回はコロナ禍に翻弄される、4人の姿が描かれているのでしょうか?
『泣くな研修医』シリーズと比べると、感動はないけど、研修医の日常生活がよく描けていると思います。
<昨日のわんこ>

弟は久しぶりにパパと遊べて嬉しそうでした。

取ってみろと言っている目つき。

楽しそうです。
「天空の結婚式」を観る ― 2022/07/20
2012年にこの映画の舞台であるチヴィタ・ディ・バニョレージョ(Cvita di
Bagnoregio)に行ってきました。
下の写真のように長い道の果てにある街です。

懐かしいので観てみると、思っていたのと違って同性カップルの結婚式のお話でした。
イタリア語の題名は「Puoi Baciare lo sposo」で日本語では「あなたは新郎にキスができる」かな?
日本語の題名とすごい違いがありますね。

ベルリンで役者をしているアントニオは同性の恋人で役者仲間のパオロと同棲しています。
アントニオは人生を共に歩むならパオロしかいないと思い、プロポーズをします。
もちろんパオロはプロポーズを受けますが、復活祭でアントニオが帰省するときに、自分も連れて行ってくれとお願いします。
仕方なくアントニオはパオロと一緒に帰省することにしますが、なんと大家で同居人のベネデッタと同居人になったばかりの男性ドナートも同行することになります。
ドナートは女装癖がばれて家を追い出されてから情緒不安定で、一人で留守番するように頼まれたとたんに手首を切ったので、仕方なく連れて行くことになったのです。
そこに登場したのが、アントニオの幼馴染みで元カノのカミッラ。
彼女はアントニオが忘れられず、よりを戻したいと言いますが、アントニオは無視してイタリアに向かいます。
アントニオの実家はチヴィタ・ディ・バニョレージョにあります。
アントニオがパオロとの婚約を両親に報告すると、薄々息子のことを気づいていた母アンナは婚約を祝福します。
しかし村長をしている父ロベルトは断固として反対します。
過疎化が進む村に難民を受け入れようとするなど、寛容でリベラルな人なのにね。
アンナはそんなロベルトに息子の結婚を認められないなら出て行けと、家から追い出します。離婚までする決意です。
アンナは裕福な家の生まれで、家は彼女のものなのね。
アンナは結婚するにあたり、条件を出します。
結婚式をこの村ですること。テレビで有名なウェディングプランナーのエンツォ・ミッチョに式をコーディネートしてもらうこと(お金はアンナが全額払うのよ)。
そしてパオロの母親に式に出席してもらうこと。
問題はパオロの母ヴィンチェンツァでした。
パオロが三年前にカミングアウトして以来絶縁状態なのです。
頭を悩ます二人のところに、またカミッラが現れ、邪魔をします。
しつこい女ですねぇ。
四人でナポリに住むパオロの母に会いに行きますが、結婚式のことを持ち出すと、すげなく拒否されます。
アントニオは取りあえず招待状を置いていきます。
母のことを諦めるパオロにドナートは自分が女装して母親のふりをすることを提案します。
さて、二人は無事に結婚式を挙げられるのでしょうか。
脚本を書きはじめた時点ではイタリアにまだ同性婚を認める法律がなかったそうです。(2016年に同性カップルに対して結婚に準じた法的権利を与える「シビル・ユニオン法」が可決。2018年にイタリアで映画公開。)
イタリアって日本のように家父長制が強いのかしら。
お父さんに向かって毅然とした態度を取るお母さん、素敵でした。
同棲カップルだけではなく、結婚するということは色々とあるけど、頑張ろうと思える映画…かな?
コメディ映画ですが、私はそれほど笑えませんでした。イタリアの笑いのツボが今一つわかりませんわwww。
最後に唐突に始まるミュージカル。
それにしてもベネデッタ役の人、歌上手すぎです。
私はチヴィタ・ディ・バニョレージョが見られただけで、満足です。
一色さゆりのアートの世界 ― 2022/07/21
『コンサバター』シリーズを書いている一色さんの本を三冊紹介します。
アートについて詳しいと思ったら、藝大出身でギャラリー勤務を三年、香港中文大学美術研究科修士課程に在籍し、美術館にお勤めだとか。
そうじゃなきゃ書けない作品ですねぇ。

『ピカソになれない私たち』
漫画の『最後の秘境 東京藝大ー天才たちのカオスな日常ー』とか『ブルーピリオド』、『かくかくしかじか』とかに描かれている美大生の物語。
東京美術大学油絵科四年の森本ゼミはスパルタゼミ。超難解な課題を出し、作品に対する講評は罵詈雑言やダメ出しが続く。
噂によると先輩たちの中には精神的におかしくなったものもいるという。
それでも森本ゼミからはいい人材がいっぱい出ているらしい。
森本ゼミには四人の生徒が所属している。
猪上詩乃は両親ともに東京美術大学を卒業している芸術一家。詩乃は幼い頃から美術館に連れられて行き、造形教室をかけ持ちし、美術系高校に進学し、一浪して東京美術大学に入学した。しかし父は詩乃が絵を描くことに冷淡だ。褒められたことなどない。
詩乃は技術はあるのだが…。
中尾和美は5浪している。ネットで最新の情報を集めるのが趣味で、芸術論をよく語る。積極的にギャラリーに作品の持ち込みをしている。
両親に恩返しをするために、プロとして成功したいという野心があるけれど…。
小野山太郎はゼミで唯一の男子。みんなに隠しているが、もとはグラフィティを描いていた。自分には生来の「才能」が欠落していると自覚していて、他人と競おうとは思っていない。
企業に就職しようかと思っているが…。
汐田望音は離島出身で、幼い頃病気で入院している時に絵を描く楽しさを知り、美術予備校などには通わず、現役で合格した。
純粋に絵が好きな子で、誰に何を言われても気にしない。
クラスの輪に入らず、常にマイペース。
YPP(ヤング・ペインター・プライズ)の大賞を受賞している。ロイヤル・アカデミーから大学院に来ないかと誘われている。
「自分の絵」、「自分の表現」とは何か。
四人は互いに切磋琢磨し、競い合い、他のものの才能に嫉妬し、悩みながらも芸術の道を究めようとする。

『神の値段』
2016年の「このミステリーがすごい」大賞受賞作。
田中佐和子はメディァはおろか関係者の前にも姿を見せない前衛芸術家・川田無名の専属ギャラリーに勤めている。
父親に誘われて行ったギャラリーのオープニングパーティでギャラリーの経営者の永井唯子と出会い、リクルートされたのだ。
ある日、唯子が無名が1959年に描いたという貴重な作品をギャラリーに持ってくる。
そしてその後しばらくして、唯子が品川の倉庫で遺体として見つかる。
佐和子は無名の作品をどうしようと思っていたのか。
佐和子は何のために倉庫に行ったのか。
無名は生きているのか。
生きているとしたら、無名が唯子を殺したのか。
謎は深まるばかり…。
佐和子は図らずも成り行きからこれらの謎を解いていくことになる。
ミステリーとして読むというよりも、知らない現代美術の世界を垣間見させてくれる作品として読んでいました。
作家の手で製作されたものでなくても、サインさえあれば、それが真作になるなんて、そんなんでいいのかと言いたくなりましたが。

『ジャポニスム謎調査-新聞社文化部旅するコンビ』
日陽新聞社の本社文化部で「文芸アート」を担当している山田文明は、異動してきた雨柳円花とコンビを組み、連載企画を担当することになる。
円花はどんでもない女で、振る舞いは天衣無縫、先輩だという山田にタメ口をきき、服装も変で、社会人失格だぁ。
しかし彼女のインスタは着眼点がおもしろいという評判。
それに円花の祖父は高名な文化人で民俗学の権威、故・雨柳民男だ。
円花と組む企画は円花が企画したもので、<ジャポニスム謎調査>という、日本各地に根づく文化を守る職人やその技術を取材し、日本文化の新たな一面を読者に紹介するというもの。すなわち「アートリップ」。
扱うテーマは硯、大津絵、漱石の肖像写真、灯台、円空仏。
山田は円花と取材で各地をまわるうちに、彼女の豊富な知識や知的好奇心に刺激され、だんだんと円花の良さを知ることになる。
一色さんが書いた本だと気づかずに読んでいました。
アートの世界だけではなく、灯台の存続に関する話題など書く世界が広がっているようです。
どの本もおすすめです。
軽く読めるのが『ジャポニスム謎調査』で、私が一番好きなのは、『ピカソになれない私たち』(表紙が素敵)です。
「ブルゴーニュで会いましょう」を観る ― 2022/07/22
原題は「Premiers Crus(第一級畑)」。いつものことですが、日本語の題名が…。ブルゴーニュのワイナリーのお話です。

シャルリ・マレシャルはブルゴーニュのワイナリーで生まれたが、20歳の時にパリに出て、今はワイン評論家として成功している。
ワインを点数化したガイドブックは売れ行きが好調。
自身のガイドブックの出版パーティで女性と出会い、一夜の関係を持つ。
一方、シャルリの実家のワイナリーは経営不振で売却寸前。
一週間以内に再建を担う責任者を決めないと、売却手続きをすることになる。
買収の名乗りを上げているのが、日本企業と隣の「ドメーヌ・モービュイソン」。
驚いたシャルリの父・フランソワは「ドメーヌ・モービュイソン」を経営するエディットのところに怒鳴り込む。
しかしエディットは冷たく、ちゃんと仕事をしろと言い返します。
フランソワは五年前の離婚からワイン造りの意欲を無くし、趣味の船造りに精を出していた。
ワイン造りはシャルリの妹・マリーの夫で醸造家のマルコに任している。
ちょうどその頃、シャルリはマリーがシェフをしているレストランに顔を出す。
マリーから実家のワイナリーが経営不振で売却寸前であると聞き、フランソワに会って事情を聞くが、パリに帰れと追い出されてしまう。
シャルリはマリーの説得もあり実家に戻り、責任者になることを決意する。
だがフランソワはワイン造りの素人であるシャルリに批判的で、未だにワイナリーを捨てて出て行ったことにこだわり、協力しようとしない。
シャルリはマルコの協力を得、昔ながらの農法でワインを作ることにする。
しかしまず最初にしなければならないのは、在庫の処分だ。
シャルリはガイドブックでワインに点数をつけていることを楯に取り、ある作戦を実行する。
シャルリが助言を求め、エディットに会いにいくと、なんとそこにいたのは出版パーティで出会った女性。マリーの同級生のブランシュだった。
ブランシュはアメリカ人でオレゴン州にワイナリーを持つ一家の息子クリストファーと婚約していた。
エディットはクリストファーを認めておらず、クリストファーも限界を感じていた。
ブランシュはエディットから畑を継がさないと言われ、悩んでいた。
最終的にブランシュはクリストファーと結婚し、アメリカに行くことにする。
さて、シャルリのワイン造りは成功し、父と和解できるのか。
そしてブランシュとどうなるのか…。
映画の結末は予想通りで、映画の出来は今一です。
記憶に残るのが、フランス女性が強いことです。
男は女に捨てられ、気落ちし、現実逃避。情けないわぁ。
こんな男だから、エディットはサッサと捨てて、別の男に乗り換え、ブルゴーニュワインを受け継いでいったのですね。
エディットの娘は娘で、婚約者がいようが、結婚してようが、突き進んでいく。
やはり肉食系だわぁ。
たぶんですが、私はパソコンで観たので、あまり感動できなかったのではないかと思います。
大画面で一面に広がるぶどう畑や歴史的建造物を観ると、素敵でしょうね。
飲めないので、私はワインを飲みたくなりませんでしたが、ワイン片手にほろ酔い気分で観るといいかもしれません。試してみて下さい。
ホリー・ジャクソン 『優等生は探偵に向かない』 ― 2022/07/23
『自由研究には向かない殺人』の続編。

学校の講堂で、ことの真相を話してから二週間がたち、ピップはポッドキャストで<グッドガールの殺人ガイド>と称してアンディ・ベル事件の真相やマックス・ヘイスティングスの裁判の様子などを配信することにする。
一ヶ月後、アンディとサルの追悼式の翌日、友人のコナーに失踪した兄ジェイミーの行方を捜して欲しいと頼まれる。
母と二度と事件に関わらないことを約束したので断るピップだったが、警察が事件性がないと取り合ってくれなかったため、仕方なく調査に乗り出す。
ピップはポッドキャストやsnsを駆使し、ジェイミーの足取りを追っていく。
前回はピップの明るさに救われたのですが、今回はそうはいきませんでした。
善と悪、正義と悪など現実社会では明白とは言えません。
司法でさえ間違った判断をくだすことがあるのです。
加害者と被害者の境目も一概には言えません。
ピップにとって、前回以上に世の中の理不尽さと己の無力さを思い知らされる、辛い経験となりました。
是非、一作目の『自由研究には向かない殺人』からお読みください。
冒頭でネタバレがありますから。
二作目は一作目以上に面白いです。
三部作なので、次回で最後となります。
ピップがどのように成長していくのかが楽しみですが、虚無的にならないかと心配です。
一作目同様、お勧めの本です。
<今日のおやつ>
同僚のお葬式に行った帰りに夫が買ってきたタルトです。

なんと4つも買ってきました。
私、ダイエットしてます。どうしましょうね。
とりあえず食べますわ。(食べるんかいという心の声が聞こえますがwww)
佐原と東国三社参りに行く ― 2022/07/26
新型コロナウィルス感染者数が増えているので、あまり人が多く集まらなさそうな場所(失礼)に行ってきました。
東京から佐原まで車で約2時間です。
佐原は小江戸の風情を感じる水郷の町です。
同じように小江戸と言われている川越と比べると、どうなんでしょうね。
今のように観光地化された川越にはまだ行っていないのでわかりませんが。
宿に入れなかったので、車を駐車場(500円)において、伊能忠敬記念館の横を通って川に出ました。
途中に伊能忠敬さんの像と像限儀のオブジェ、かわいい(?)マンホールがありました。(縦の写真が何故か貼れません)

映画の「東京バンドワゴン」が撮影されたという喫茶店がありました。

「東京バンドワゴン」の看板はそのままにしてあります。

川に行くと、ラッキーなことに、じゃあじゃあ橋から水が出ていました。
30分間隔で出ているということです。

風情があるといえば、言えるかも。

小江戸さわら船めぐりの船が通りました。

地面が熱いのでわんこたちをカートに乗せて行きましたが、こんな風になり大変でした(恥)。
町自体、そんなに大きくないので、歩くだけなら30分から1時間で十分みたいです。
ぶらぶらと川沿いを歩いてから、酒屋に入って最上白味醂とお酒、商店でラー油とごま油などを買いました。
馬塲本店酒造の最上白味醂はアルコール度数14%で、ロックやソーダにしてお酒のように飲めるそうです。甘いけど美味しいそうです。

本当は鰻も食べたかったのですが、時間がなさそうなので、パスしました(残念)。

宿に荷物を置き、犬と川まで散歩に出かけました。
佐原の夜は早く、4時過ぎに閉まるお店があるそうで、川沿いの店はみな閉まっています。ライトアップはありません。

夕食は宿泊した宿で食べました。

飾り付けが素敵です。


とても美味しお料理でした。
食事には宿泊者以外の人も来るらしく、隣の年配女性グループが五月蠅くて、ちょっと気になりました。
宿は古い家を改築してあるので、隣の人の風呂桶の音が聞えて来ました。

朝食の汁物は酒屋の糟が使われた粕汁でした。
朝食の後、今回のメイン、東国三社参りへ出発。
東国三社参りはどの神社から参ってもいいらしいのですが、鹿島神宮は「何かを始める場所」と言われているということなので、鹿島神宮から始めました。
鹿島神宮は日本建国・武道の神様である「武甕槌神(たけみかづち)」を御祭神とする、神武天皇元年創建の神社です。

茅の輪がありました。

ちゃんと3回、くぐらせていただきました。
本殿(右側)は修理中(?)でした。

立派なさざれ石です。

鹿園に、子鹿がいました。
お母さんの後をついていきます。かわいいですね。
摂社奥宮を拝んで、何年か前のお正月に鹿島神宮に来たことがあるので、要石とお手洗い池はパスしました。
三国三社参りをする方は、最初に行った神社で忘れずに買ってほしいものがあります。
「東国三社守り」という三角柱のお守り(千円)です。
三角柱の面のそれぞれに、三社のシール(五百円)を一つずつ埋めていくというものです。

これを一番最初に買うのを忘れると、大変なことになりますから気をつけてくださいね。
鹿島神宮は勝利の神様ということで、私は勝守も手に入れました。
次に息栖神社に向かいます。

息栖神社には武神の乗り物「天鳥舟(あめのとりふね)」の神が祭られていて、航海・交通そして珍しいことに、井戸の神様だそうです。

力石と松尾芭蕉の句碑(右端)があります。

本殿。
利根川沿いに一の鳥居があるというので、行ってみました。

1~2分で着きました。
一の鳥居の両脇に、小さな鳥居の建てられてた二つの四角い井戸「忍潮井(おしおい)」があります。

左側の鳥居。女瓶。

右側の鳥居。男瓶。

井戸を覗いて瓶が見えるといいことがあるそうです。
井戸の水を飲むと、恋愛でご利益があるそうですが、今は飲めません。
境内の手水舎の奥に同じ湧き水があるそうですので、是非飲んでみてください。
私がこのことを知ったのは家に帰ってからなので、飲めませんでした。
息栖神社は三つの神社の中で、一番地味な神社です。
最後は香取神宮へ。
日本書紀に登場する武術の神様「経津主大神(ふつぬしのおおかみ)」を祀り、勝運・交通・災難除けなどにご利益があるそうです。

重厚な感じの本殿です。
香取神宮は「決意する場所」だそうです。

神楽殿。

風情のある境内です。

楼門。
奥宮と要石はパスしてしまったので、次回は必ず行きたいです。
武術の神様なので、武術・スポーツをしている人用に「体育勝運守」があるそうです。
三つの神社の中で一番運気のいい神社のように感じました。
さて、楽しみな夕食です。


鱗が焼いてあり、パリパリした食感。


泊まった部屋にドッグランがあったのですが、地面がボコボコしているのが気になった夫は犬たちに使わせませんでした。

走りたそうにしている兄犬です。
帰りは「道の駅 水の郷さわら」で野菜などを買い、東京に戻りました。
次回は佐原に寄らずに、ゆっくりと東国三社参りをしたいと思います。
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