S.J.ローザン 『ファミリー・ビジネス』 ― 2024/12/28
私の好きな<リディア・チン&ビル・スミス>シリーズの新刊。

ビッグ・ブラザー・チョイが心臓発作で亡くなった。
彼はチャイナタウンギャングのボスで、1980年代、リ・ミン・ジン堂のニューヨーク支部の新しいボスとして香港から送り込まれていた。
ベイヤード・ストリートとモット・ストリートが交差する区画に高層タワーマンション、フェニックス・タワー建設という再開発計画が持ち上がっている。
その建設予定地にあるリ・ミン・ジン会館は売却に応じていなかった。
フェニックス・タワーはチャイナタウンを破壊すると、チョイが売却を断固拒否していたからだ。
そんな頃、リディアのところにガオおじいさんが電話をしてくる。
スミスとともに彼に会いに行くと、そこにウー・マオリ(メル)がいた。
チョイはメルの伯父で、彼女にリ・ミン・ジン会館を遺した上に遺言執行人にも指定しているので、彼女は会館の最上階にある伯父のアパーメントを確認し、建物全体も見て回りたいらしい。
そして、今や堂のトップであるチャン・ヤオズが彼女に電話をしてきて、チョイが残した会館の今後の扱いに影響するメッセージを伝えたいと言っているので、リディアとビルに同行してもらいたいというのだ。
リディアとビルはメルの護衛をすることになる。
チョイの葬儀の翌日、リディアとビルはメルを伴い、リ・ミン・ジン会館に行く。
ところが会う予定だったチャン・ヤオズはチョイのアパートメントで殺されていた。
チャン・ヤオズを殺したのは誰なのか。
殺人は再開発計画に関係があるのか。
チョイのメッセージとは一体何なのか。
リディアとビルはチャイナタウンを揺るがす、容易ならない事態を収捨させるために奔走する。
中国系アメリカ人たちの間にある文化的な約束事は、他の文化を持つ者たちにはうかがい知れないものです。
著者のローザンさんは中国系ではないのに、よく調べて書いているなぁといつも思います。
リディアの家族の中で唯一、ビルとの関係に反対していた兄のティムが、とうとう折れたようです。
自分に恋人ができると、コロッと変わるのが人間の性ですかね。
今回はリディアの回だったので、次回はビルですね。
十五作目『The Mayors of New York』はアメリカで昨年の12月に出版済みです。
リディアとビルはニューヨーク市長の十五歳の息子の失踪事件に関わります。
一年に一冊と決めているのかもしれませんが、さっさと翻訳して発売してくれませんかね。
<リディア・チン&ビル・スミス>シリーズ
①『チャイナタウン』
②『ピアノ・ソナタ』
③『新生の街』
④『どこよりも冷たいところ』
⑤『苦い祝宴』
⑥『春を待つ谷間で』
⑦『天を映す早瀬』
⑧『冬そして夜』
⑨『夜の試写会』(短編集)
⑩『シャンハイ・ムーン』
⑪『この声が届く先』
⑫『永久に刻まれて』
⑬『ゴースト・ヒーロー』
⑭『南の子共たち』
⑮『その罪は描けない』
⑯『ファミリー・ビジネス』
①から⑥まではブログには書いていませんので、東京創元社のあらすじを参考にしてください。
在庫なしが結構あって、残念です。古本屋でさがすしかないですねぇ。
電子書籍で発売してくれるといいのですが…。
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