ローワン・ジェイコブセン 『ハチはなぜ大量死したのか』を読む2009/05/09

この頃ニュースを見ていると、ハチの話題が多くないでしょうか?
あまりにも不幸な話題ばかりなので、なるべくニュースを見ないようにしている私でも、2回ばかり見ました。
農産物の受粉をさせるためのミツバチが少なくなり、オーストラリアから輸入していたのですが、その数が足りなくなったということらしいのです。
その時は何気なく聞いていたのですが、微かに私の中で疑問に思うところがあったんでしょう。
同僚がこの『ハチはなぜ大量死したのか』を読んでいるのをみて、読んだら貸してくれるように頼んでいました。
私のミツバチについて知っていることといったら、養蜂家が巣箱を軽トラックに乗せて、花が咲くところに運んでいき、巣箱を置き、ミツバチたちは行った先でのどかに蜜を吸うという、そんな程度です。
しかし、無知とは恐ろしい。ミツバチたちの世界も近代化に襲われていたのです。
ハチたちはジェット機で旅する時代なのです。
日本にオーストラリアからハチが輸入されているんですから、船に乗せるわけないですよね。ジェット機ですよね。
何でそんなことをするかというと、農作物のためなのです。
アメリカでは農作物、例えば儲かるからとアーモンドなんかを大量生産(もう工場と同じです。大量生産の状況は「いのちの食べ方」を見てください)するために、ハチを使って受粉させるのです。
アーモンドの花が咲くときは、アメリカ中のハチが集められるのです。
日本では、イチゴやメロン、なすなどのハウス栽培と野外でのなしやリンゴ、サクランボなどの受粉に使っているようです。(参照『解説委員室ブログ』
ようするに、規模を拡大しすぎると、その土地にいるハチたちの受粉だけでは足りなくなるんですね。
かわいそうなのはハチたちです。

「数週間ごとに新しい場所に連れて行かれ、糖度の高いコーンシロップで気合を入れられ、殺虫剤と抗生剤を与えられ、寄生虫に襲われ、外来種の病原菌にさらされ・・・。」

そして起こったのが、CCD(Colony Collapse Disorder 蜂群崩壊症候群)。
気づいたら、ハチが巣箱からいなくなったのです。
ハチの死骸は見当たらず、巣箱は全くのもぬけの殻。
原因は何か?
ミツバチヘギイタダニか?ハチのエイズ?農薬?・・・それとも複合汚染?
原因はわかりません。
このままでいくと、ハチがいなくなる恐れがあります。
ハチのいない世界はどういう世界でしょうか。
著者が描くように、「あらゆる主要作物を遺伝子組み換え技術によって無性生殖できるように作り変え」、「セックスは子孫を残す行為としての意味を失ってしまい」、野原や湿原や熱帯雨林が「厳密に管理されたクローンだらけの土地」になってしまうかもしれないのです。
著者は言います。

「何を選ぶかはあなたの自由だ。私達はまだ、どんな世界で働き、暮らしたいかを選ぶ余地が残されている。」

ハチの大量死はハチだけのことではなく、私達の生き方にまで及ぶことだったのです。
豚インフルエンザにパニクッている今。
どういう世界に我々が向かっているのか考えるために、是非一読して欲しい本です。