日明 恩 『鎮火報』2011/06/12

名前をどう読むのかと考えてしまいました。「たちもり めぐみ」と読むようです。当て字でしょうか?

消防士の活躍するものというと、映画で古くは『タワーリングインフェルノ』や『バックドラフト』、『ワールド・トレード・センター』、日本のでは映画は知りませんが、漫画で『め組の大吾』などがおもしろかった覚えがあります。映画のように英雄を描くのではなくて、『め組の大吾』のようなものの方が、なじみがあっていいですね。


『鎮火報』は消防士になって二年目の新人、大山雄大が主人公です。
彼の父は「職務に忠実」で「それは立派な消防士」でした。しかし、雄大が小学校の時に殉職しています。
死んだ父親の跡を継いだと言いたいところですが、彼が消防士になったのは、父親が救助した子どもで、後に消防士になった仁藤への当てつけみたいなもんです。「お前は消防士になれない」という売り言葉に買い言葉で試験を受け、見事合格したのです。
雄大は父親のことを「つまらない男にふさわしいつまらない死に方をした」と言います。自分は消防士になったけれど、さっさと事務職になって9時から5時までの勤務をし、一生安泰な生活をしようと決心しています。
しかし、そんなにうまくは行かないのが世の常。
不法滞在の外国人が暮らす木造アパートから出火。駆けつけた雄大が見たのは、外国人に暴力を振るう警官と「良い人」の東京入国管理官。
火を消そうと天井に放水すると何故か出火が起こります。
この火災で雄大は自分が救出した人が初めて死ぬという経験をします。

雄大の年上の友だちの守が、同じような火災が他に三件もあるのを発見します。
守は『あの人』が死んだら自分も死ぬと言っている変な人です。引きこもりのくせに、大きな家に住む金持ちで、信じられないぐらいの情報収集能力を持っているのです。

数日後にまた不法滞在の外国人が暮らすアパートが火事になります。

楽して給料もらいたいと言っていた雄大ですが、いつしか父親と同じような行動を取っています。

周りの暖かい目に囲まれ(本人がそれを自覚していないのですが)、一人前の消防士へと成長していく雄大の姿に読み応えがあります。

この本もお仕事シリーズのひとつに入れてもいいでしょう。
知らなかったことを沢山知ることができました。
例えば、消防署もちゃんと水道料を払っているとか、朝晩の食事を作るための買い出しを勤務中にしてはいけないとか、不法滞在のこととか色々と。

ミステリーとしては初めの方で犯人が予測できてしまいましたが、本としてはおもしろいです。二作目も読みますわ。

ちなみに『鎮火報』とは無事に鎮火した後にカンカンカンカーンと鳴らす鐘のことです。昔は鐘を打っていましたが、今はボタン操作のサイレンだそうです。「消防士が無事に火を消した証。都民を守った消防士達の勝ち名乗り」なのです。
出動の時のサイレンは記憶にありますが、鎮火報は・・・?

昔、幡ヶ谷に住んでいたことがあります。幡ヶ谷には消防大学校があり、毎日暗くなってからも黙々と走っている人がいて、消防士は体を鍛えるのが仕事の一部なんだなぁという思いを強く持ちました。例え出番がなくとも、日々、有事の時に備えているという、そういう姿勢に感謝です。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://coco.asablo.jp/blog/2011/06/12/5907834/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。