垣根涼介 『勝ち逃げの女王~君たちに明日はない4』2012/06/10

君たちに明日はない』から『借金取りの王子』、『張り込み姫』と続き、四作目になりました。


リストラ請負会社の社員でイケメンの村上真介が今回リストラするのが、JALのような航空会社のCAと、ヤマハのような楽器や発動機などを扱っている会社やデニーズのようなファミレスの社員です。
一話、ちょっと違った話も入っています。この話で今まで謎の人物だった社長の過去が明らかになります。

『勝ち逃げの女王』とはCAの女性のことです。
日本ではCAは憧れの職種(だったけれど、今もなのですか?)。アメリカなどではそんなに給料もよくないし、ウエートレスと同じように思われているようです。何故、日本であんなにもてはやされていたのか、今になると謎です。仕事で海外に行けるというのがよかったのかもしれませんね。この本に出てくるように、未だにCAって男性にとって憧れの女性で、コンパなんかもやっているのでしょうか?

今回出てくる人たちに、それほど感情移入できませんでした。
リストラされていても、何故か悲壮感がないんですね。

「人間、もう必要とされなくなった場所にいてはいけないんだよ。だったら、そんな場所はとっとと捨てて、新たに必要とされる場所を探したほうがいい」

ある証券会社が経営破綻した時に潔く辞めた人の言葉です。
出てくる人たちはリストラされても、どこか別の会社から引きがあるような実力を備えたタイプだから、このシリーズには嫌な読後感がないのでしょう。
今の会社がダメでも次があるさ、そう思えるのが救いなのです。
でもねぇ、実際のところはどうなのでしょう。
現実はそう甘くはないですよね。

若い人がこの本を読んで、そうか、辞めてもどうにかなると思って欲しくないですね。

実は姪が就職してから二か月目にして、先輩社員を怒らせてしまい、相談のメールを寄越しました。ある物をいらないのにいりますと返事をし、それを取りに行っていなかったのです。どうするのと同僚がメールを寄越したので、馬鹿ですね、メールで「あ、忘れてた。○○なら腐るほどあるから大丈夫です」などと返事をしちゃって、そのメールを同僚が先輩に見せ、激怒させてしまったそうです。
メールって恐いですね。会社関係の人にはいつ、誰に見られてもいいように打たないといけませんね。
そもそもいらない物をいると返事をしたことがいけませんね。最初の研修でこの先輩に姪は厳しい指導をされており、たまたま優しい言葉をかけられたから「いる」と返事をしてしまったそうですが・・・。
このことで、姪はもともとやりたい仕事でもなかったし、今の会社にいても将来はなさそうだから、資格を取るなどして、次の仕事のあてができたら辞めようと思っているようです。

姪のように思っている人へ、本からの言葉を捧げます。

「そう。サッカーも最後には、単なる技術じゃない。結局は気持ちなんです。次々と見せつけられる実力の差やセンスの壁に、それでも挫けずにその行為をやり続けるに値する、自分の中の必然です。それがあるかどうか。その気持ちだけが、その必然に支えられた情熱こそが、絶え間なく技術を支え、センスを磨き、実力を蓄えてくれる。また、それらの裏付けがあるからこそ、さらに情熱を持って長くやり続けられる。それが、才能なんだって」

そうです。長く続けられるというのも才能の一種です。

先輩にはちゃんと会って謝りなさい。
最初の人間関係の躓きに負けてしまい、会社を辞めてしまうのか、それともその辛い状況に耐え、仕事のキャリアを積んでいくのか。決めるのは、あなた。
せめて履歴書に職歴が書けるぐらいは働いて欲しいと姪にはメールしました。

先輩に厳しく指導されたら、なにくそと思い、「先輩以上に仕事を覚えてやり、文句を言わせないぞ」とか思わないのでしょうか?
こどもを叱る人がいなくなったといいますが、彼らが最初に叱られる経験をするのが会社なのですね。

夫は姪は「辞めるよ」と言っています。私も一年ももたないかもしれないと思っています。どうなることやら。

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_ 京の昼寝〜♪ - 2014/11/14 12時37分37秒

「勝ち逃げの女王」/垣根涼介(新潮社)


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