若竹七海 『御子柴くんと甘味と捜査』2014/07/12



東京都(調布)出身なのに長野の山にあこがれ、山岳救助をやりたいと思って長野県警の警察官になったのに、御子柴(みこしば)くんは東京にいます。
警視庁捜査共助課に出向になってしまったのです。
警視庁で長野県警本部との連絡調整役をしているのです。
事件は警察の管轄なんか関係なく起こりますから。

警視庁捜査一課には玉森剛という態度が横柄な奴がいて、御子柴を「長野」と呼び捨てにします。
こいつが甘いものに目がなく、いつも長野の甘いものをたかられます。
モヤシというあだ名のくせに、二十四時間張り込み中に、今川焼を十八個食べたらしいです。

玉森だけでも腹が立つのに、長野県警の方では同僚や上司に、東京のお菓子を送ってこいと要求されます。
送ってもお礼もお金も戻っては来ず、彼がお菓子を送っているのは長野に戻りたいがための付け届けと解釈されているようです。

そんな御子柴君にも唯一の味方がいます。
それは上司の小林警部補。
彼は御子柴君から事件のあらましを聞いただけで、犯人を推理するという切れ者です。
5つある事件のすべてが、小林警部補のつぶやきのような、「ま、何の証拠もありません。ただの憶測です。勢い込んで警視庁のひとに話したりしちゃダメですよ。御子柴くんが恥をかいちゃうかもしれないから」で解決してしまうのです。

でてくるスウィーツって本当にあるんですよ。
東京のは、スカイツリーのバームクーヘン、エルメスのチョコレート、ローザー洋菓子店のクッキー・・・。
長野のは、雷電くるみ餅、ブランジェ浅野屋のバゲット、つるやの酒饅頭、八幡屋磯五郎とキットカットがコラボした信州限定の一味唐辛子キットカット、小布施の松仙堂の純栗ペースト、軽井沢プリン、柏倉製菓の花豆赤飯・・・。
どれもおいしそうです。
私はスウィーツではないのですが、信州味噌ピッツァがどんな味なのか食べてみたいと思いました。
これも実在するものです。880円で、南信州ビールの直営店「味わい工房」で食べられます。
味噌ピッツァキーホルダー(600円)も売っています。
これを見せるとピッツァが100円引きというのも本当です。

信州に行きたくなりました。
犬連れで泊まれる、いいホテルありませんかね。

あ、この本は若竹さんらしいユーモアセンスの溢れたミステリですので(笑)。