石川智健 『本と踊れば恋をする』2020/03/19



東京の二子玉川に住んでいる十屋龍之介はアルバイトが禁止の高校に通っていたので、父親の遺した蔵書が高く売れたことをきっかけに「セドリ」になりました。
「セドリ」とは古本屋にある本の中から高く売れそうな本を見極めて買い、他の人に売って儲ける人のことです。
ある日、多摩川沿いを歩いていると「古書有」という立て看板がありました。
行ってみると海外にある洒落た古書店のような店があり、入って本を見ていると、洋服に羽織をまとった不思議な格好をした店主、朝香裕也に万引きを疑われてしまいます。
朝香は「贋作本」を作るのが趣味の人で、古書店は開店休業中でした。
たまたまやって来たニ代目ビブリオディック(古書探偵)の吟子のおかげで疑いは晴れましたが、盗まれたのは彼の「贋作本」で、盗まれた本を探し出すと彼の店の本の中から好きな本をやると言われます。
店に高く売れる本があるのに気づいていた龍之介は吟子と一緒に偽作本探しをすることになります。

本探しのミステリだと思ったら、途中から十屋家の秘密が暴かれたり、龍之介君の初恋(?)話だったりで、贋作本は見つけられずに終わりました。
次から贋作本の捜査活動が始まるのでしょうかね。

本の中からいい言葉を見つけました。
エリオットの言葉。
「本は生きていることを実感させてくれる。しかも、わたしたちはもちろん、永遠に生き続けたりはしないんだが、もしかしたら永遠に生きられそうな、そんな気にまでさせてくれる」

朝香の言葉。
「人には、小説にしか逃げ場がなくなるときがやってくる。そうなったら、その状態から目を背けるな。必死に読め。それこそ死ぬ気で。そうすればきっと、本が心を解してくれるはずだ」

本の題名はここからですか。
「本を読むということは、本と踊ること」

これからどう展開していくのか、気になる本です。

今のような時に本の中に逃避するのもよさそうです。
本の中ならどこにでも行けるし、何でもできますものね。