天祢涼 『謎解き広報課』2021/04/12

一応お仕事上の謎解きもあるので、ミステリーに入れときました。


新藤結子は大学卒業時に結婚する予定だった恋人に捨てられます。
彼曰く、「結子はがんばりすぎだから、僕にはまぶしすぎる」なんて、どういう意味よ。
彼の母親からは言われた「ちゃんと仕事をして親戚一同に一目置かれる女性になって」などという言葉を真に受けて、母親のつてでL県の高宝町役場に就職することにしていました。
これも彼には気に入らなかったみたいです。
その上、彼が「一緒にバスケができたらいいね」と言ったからバスケ部に入って頑張っていたのに、そのバスケ部の部員たちも彼と同じように感じていて、結子はみんなから失笑されていたそうです。
卒業旅行にも来ないでなんて言われてしまいます、グスン。

こんな目に遭った結子ですから、仕事は一年限定で、高宝町で淡々と仕事をすると決めました。
ところが広報課で広報紙担当になり、各課のお知らせを載せるだけの広報紙だったのに、係長の伊達に広報誌を変えると宣言されてしまいます。
伊達は全国広報コンクールで表彰されたことがあり、裏広報紙を作ったり、全国の広報マンと繋がりがある、いわゆる広報紙のレジェンドみたいな人でした。
彼曰く、町を愛してもらえるような広報紙を作る。
そんなことできないわと思う結子。
原稿の清書や原稿を書けば、伊達から直された大量の赤字。
つらいのは取材です。
第九自主防災会に取材に行ったら解散すると言われ、高宝町にゲームの聖地があると聞き取材を申し込むと断られ、伝統の祭、高宝火礼祭では唯一の取り柄の写真がすべてパーになったり…。
そのたびに謎解きをやっちゃいますが、その結果、さらなる試練が…。

町長の鬼庭は何故か広報課を目の敵にしています。
伊達とは友だちだというのに口をきかず、二言目には必ず「廃刊」と口に出します。
実は彼は元広報マンで、全国広報コンクールで賞をとるほどだっとそうです。
それなのに何故?

都会で育った女の子が、田舎の町で仕事をしていくうちにだんだんと町に溶け込み、地元愛に目覚めていくというお話です。
男に振られてという理由がショボいし、ミステリーというにはちょっと軽過ぎです。
役所の広報課に関するお仕事本として読むといいでしょう。



アン・クリーヴスのシェットランド・シリーズのDVDを買いました。
1話が2時間以上で、時間がなかったので1話の途中で止めてしまいました。
落ち着いて観たい時に観ますわ。
少し観てわかったのは、真ん中の女の人はウィローじゃないことです。
アリソン・トッシュ・マッキントッシュって言う役名です。
キャシーが大きくて中学生?高校生?ぐらいでびっくりしました。
日本のドラマと同じように、題名を借りていても内身が微妙に違うってことがあるんですね。そういえばアガサもそうでしたわ。
でもDVDを買ってよかったです。
シェットランドの風景がすごく綺麗なんです。行ってみたくなりました。


「ガーンジー島の読書会の秘密」を観る2021/04/13

ガーンジー島はイギリス海峡のチャンネル諸島の一つで、フランス・シェルブールの近くにあります。
イギリス王室属領で、君主はイギリス国王なのに連合王国には含まれず、自治権を有し、外交及び国防に関してはイギリス政府に委託しているので、主権国家ではないそうです。
1940年から1945年までナチス・ドイツに占領されていました。

原題に「potato peel pie」と「peel」が入っているので、何でかと思いましたら、戦時中に食料がないので、ジャガイモの皮でパイを作っていたんですね。


1946年。作家のジュリエット・アシュトンは1通の手紙を受け取ります。
それはガーンジー島に暮らすドーシー・アダムズからの手紙でした。
ジュリエットの所有していたチャールズ・ラムの本が手元にあり、そこに書かれていた住所に手紙を送った、島に書店がないので、シェイクスピアの本が購入できるロンドンの書店を教えて欲しい、ドーシーたちが戦時中から島で読書会を開いていて、そこで読みたいからだなどと書かれていて、ジュリエットは読書会に興味を持ちます。

1941年、ガーンジー島はナチス・ドイツの占領下にありました。
家畜の飼育が禁止されていましたが、モーグリー夫人は豚を一頭隠して飼育しており、親しい人たちを招いて豚を食べるパーティを開くことにします。
(このパーティでpotato peel pieが振る舞われています)
久しぶりの楽しいパーティの後、4人が酔っ払って暗闇の中を歩いていると、ナチスに見つかってしまいます。
夜間の外出は禁止されていましたので、とっさに「ガーンジー島文学・ポテトピールパイ同好会」という読書会をやっていたといってごまかします。
このためそれからも読書会をモーグリー夫人の家でやらなければならなくなり、今も続いているのです。

ジュリエットは書店ツアーを中断して、ガーンジー島に行って読書会の人たちと会い、記事に書こうと思います。
ウェイマス港からガーンジー島へ船出する時に、付き合っていたアメリカ人の恋人からプロポーズされ、指輪を渡されます。

島のホテルに行くと、改築中。そこにいた男性が郵便局で宿を頼むといいと教えてくれました。
郵便局には読書会のメンバーのエベン・ラムジーがいて、民宿先まで馬車で送る手配をしてくれます

荷物を置き、モーグリー夫人の家に行きますが、歓迎されませんでした。
そこにいた読書会のメンバーのアイソラ・ブリビーに、読書会を主催していたエリザベス・マッケンナは島にはいないと教えられます。
しばらくしてエベン、そしてドーシーがやってきます。なんとドーシーはジュリエットが島で最初に会った男性でした。
読書会ではジュリエットの書いた『アン・ブロンテの生涯』をジュリエットが朗読し、その後議論を戦わせました。
ジュリエットは読書会のメンバーに、ロンドンタイムスに読書会のことを記事にして載せたいと、書く許しを請いますが、モーグリー夫人に強行に反対されてしまいます。

宿に帰って女主人のシャーロットに読書会に行ってきたことを言うと、彼女は読書会のメンバーの言うことは真に受けないように、語られないことがあると意味ありげにジュリエットに言います。
シャーロットの言ったことが気になり、ジュリエットはエリザベスのことを調べることにします。

次第に明らかになるエリザベスの秘密。
それと共にジュリエットの心も変化していきます。

エリザベスのことは戦後まもないことを考えると秘密なのでしょうが、読書会のメンバーがおしゃべりなこともあり、あっけなくわかってしまいます、笑。
彼女は最後まで自分の信念を貫いたという意味で素晴らしい女性ですね。
ジュリエットは自分の心に正直に行動し、地に足のついた誠実な人柄がうかがえます。
戦時中のガーンジー島とエリザベスの話は悲劇ではありますが、この物語の最後には誰もが心暖まる思いになるでしょう。
ミステリーというより、二人の女性の愛の物語って感じです。

エンドロールで本を次々と朗読していきますが、どれがどれだかわかりません。
たぶん映画に出てきた本の中の一文でしょうね。
本が戦時中の人々の心を支えたように、これからも本の持つ力を信じていきたいですね。

今週のおやつ。
自分で焼いても今一なので、これから美味しそうなクッキーを色々と頼もうかと思います。


可愛い缶です。


アトリエうかいのクッキーは囓るとすぐにホロホロ崩れてきます。
先週のマリベルよりも好きですわぁ。
次回は大きい缶を頼もうかしら…。

ほしおさなえ 『言葉の園のお菓子番 見えない花』2021/04/14



勤めていた書店が突然閉店したため根津にある実家に帰った一葉は、別の仕事をしてもいいのではないかと思い、じっくりこれからのことを考えることにしました。
昨年亡くなった祖母の部屋に本棚を置くことにし、段ボールの中の本を棚に入れている時、祖母が連句を作っていたことを思い出します。
毎月第四土曜日に連句の集まりに通っていて、一葉も誘われたことがありましたが、一度も行ったことがありませんでした。
そういえば祖母は病院から戻れなくなったら、本棚のノートを見てほしいと言っていました。
ノートを探して見てみると、句とその下にメンバーの名前が書かれていました。
パージをめくっていくと、薄い紙が…。
そこには十二の月とそれぞれにお菓子の名前が書いてあります。
そういえば祖母はわたしは「ひとつばたご」のお菓子番だと言っていました。
その紙の裏を見ると祖母からの手紙が書いてありました。
一葉にお菓子をもって「ひとつばたご」に行って欲しいというのです。
一葉は連絡先のメールアドレスを探し、お菓子を持って挨拶に行くと書いて送りました。返事はすぐに来て、連句会に来て欲しいとのことなので、行ってみることにします。
今は三月。祖母のメモには「長命寺桜もち」と書いてあります。向島にあるお店です。一葉は午前中にこの店に寄って桜もちを買ってから連句会に行くことにします。

連句会は西馬込にある池上梅園で行われ、メンバーはみな心根の優しい人ばかりでした。
一葉は毎月連句会にお菓子を持って参加することになり、いつしか連句の楽しさに目覚め、新しい世界に足を踏み入れることになります。
そして思ってもいなかったことが新しい仕事へと繋がっていきます。

連句ってどんなものか知りませんでした。
「複数の人が、十七音節(五七五)の長句と十四音節(七七)の短句を、一定の規則に従って交互に付け連ねる様式の詩文芸」だそうです。
と言っても、どんなものかわからないかもしれませんね。詳しく知りたかったら、どうぞ本を読んで下さい。
私はこの本を読んでもよくわかりませんでした、恥。
ルールがあって、覚えるのが大変そうなのだけはわかりました、笑。
テレビの「プレバト!!」なんかで俳句をやっていますが、作ってみると、物の見方が変りそうですね。
手始めに歳時記を買って読んでみることにしました。

そうそうお菓子のメモが気になった人もいるでしょうね。(私だけ?)
残念ながら1月から8月までのお菓子しか書かれていません。
どのお菓子も有名店のもので、私が食べたことのあるのは、長命寺の桜もちと言問団子だけ(たぶん)です。
食べてみたいと思ったのは、麻布昇月堂の一枚流し麻布あんみつ羊かんです。
あんみつと羊羹のいいとこ取りかしら。
物語は3月から8月までだったので、もしかしたら9月から2月までの、一葉が仕事を決めるまでを描いた続きがあるかもしれませんね。期待しましょう。
9月から12月まで、どんなお菓子か興味があります、笑。


夫のランチのパンです。
パン屋のパンはやっぱり美味しいものね。


これぐらいで2週間持たせる予定ですが、ちょっと多いかも。
前からネット販売していたのかどうか知りませんが、パン屋さんが送ってくれるのはありがたいです。

「ヴィンセントが教えてくれたこと」を観る2021/04/15

本屋大賞が発表になりましたね。
大賞は町田その子の『52ヘルツのクジラたち』、翻訳小説部門ではディーリア・オーエンズの『ザリガニの鳴くところ』が1位です。
少しずつ大賞作品を読んでみようと思いますが、図書館ではなかなか借りれないでしょうね。


(ネタバレあり)

ヴィンセント・マッケンナは偏屈な嫌われ者のクソオヤジです。
りんごを盗み、腹ボテの娼婦と交わり、酒とギャンブルでいつもお金がありません。
銀行の融資課に行き、家を担保にして金を借りようとしますが、すでに限度額に達しているので借りられず、貯金を解約しようとしますが、口座はマイナス。
それなのにまた酒浸り。

ある日、氷を割ろうとして、すべってころんで頭を打って、気を失ってしまいます。ドジですね。
翌朝、隣の家に母と息子が引越して来ます。引っ越し業者の車がヴィンセントの家のフェンスと木を倒してしまい、罵り合う声のうるささに、ヴィンセントは目を覚まし、彼らを口汚く罵ったので、親子はびっくりします。
まあ、なんて下品な人!
母親はマギー・ブロンスタンと言い、浮気した夫と離婚するため別居をすることにしたのです。夫とは親権を巡って争っています。医療技術者の仕事をしています。
息子のオリヴァーは運動が全く駄目で、今度通うことになった学校でも転校早々いじめの対象になってしまいます。

ヴィンセントは少しでもお金が欲しいので、オリヴァーのシッターを申し出ます。
マギーは他に頼る人がいないので、心配ながらもオリヴァーをヴィンセントに預けることにします。
ヴィンセントのことですから、マギーには内緒でオリヴァーを競馬場やバーに連れて行き、ろくでもないことを教えます。
オリヴァーが学校でいじめられていることを知ると、鼻のへし折り方まで教えちゃいます。ドッジボールで顔にボールを当てられ頭にきたオリヴァーは、教えられた通りにケンカをしてしまいます。

ヴィンセントの妻のサンディは認知症で老人施設に入っています。
施設の料金を滞納しているため、もっと料金の安い施設に移ることを勧められています。
妻のためになんとかしてお金を用意したいヴィンセントは、施設から薬を盗み売りますが、大したお金にはなりません。仕方ないので孫の口座から全額引き出し、最後の望みと馬券を買います。大バカですね。
負けて家に帰ると、借金取りがいて、妻のジュエリーを持って行こうとします。
止めようとして、ヴィンセントは脳卒中を起こして倒れてしまいます。
ヴィンセントが迎えに来ないので、一人でバスに乗って帰ってきたオリヴァーが見つけて病院に運んだので、ヴィンセントは助かります。
リハビリに励み、何とか家に帰れることになったのですが…。

その頃、オリヴァーは学校で「私たちの周りの聖人」を探し、発表することになります。
オリヴァーが選んだ聖人は…。

原題を見てしまうとわかってしまいますね。
「聖人は人間だから、悪いところもあるよ」ってことで、ハッピーエンド。

ビル・マーレイが嫌われもので偏屈だけど優しいところもあるクソオヤジを見事に演じています。
オリヴァーの発表で泣かせられるのですが、クズはクズのままで終わるところがいいですね、笑。
エンドロールまでしっかりと見ましょうね。

中島京子 『ムーンライト・イン』2021/04/16



野宿のできない大雨の中、栗田拓海が辿り着いたのが一軒の建物。
「NN」を「INN」だと思い、ベルを鳴らすと、出てきたのが一人の外国人女性。
つっけんどんな態度の彼女に追い返されそうになった時に一人の老紳士が現れ、屋根を直してくれるんなら泊まってもいいと言われます。

その建物は元ペンションで、高齢の家主・中林虹之助と彼の知り合いで車椅子の小柄な老女・新堂かおる、元介護士で主に家事全般を担当している津田塔子、日本に介護福祉士になろうとして来たフィリピン人のマリー・ジョイとが共同生活をしています。
翌日、拓海は屋根を修理中に屋根から落ちて歩けなくなってしまい、しばらくそこで暮らすことになります。
最初は拓海を胡散臭そうに見ていた三人の女性たちですが、彼女たちにはそれぞれそこで暮らすしかない事情がありました。

人が生きていく上で避けられない親子問題と介護問題、介護の仕事でありがちなセクハラや職業蔑視、外国人差別、セクシュアリティなどを、シリアスになり過ぎない、よい塩梅で書いてあります。

男女差と言ってしまうと問題がありますが、あまりにも出てくる男性たちが情けなかったですねぇ。
女性たちはウジウジ悩んでも、良くも悪くも最後はキッパリ決めてましたよ。
マリー・ジョイが特にいいです。

ムーンライト・インはムーンライト・フリット(夜逃げ)してきた人たちが、一時羽を休ませる場所。
訪れた人にとっては、拓海の言うように実家みたいな場所。
旅立った先に幸せがあるといいね、と思えるお話でした。

「フロリダプロジェクト 真夏の魔法」を観る2021/04/17

フロリダというと、太陽と浜辺、リゾート、ディズニーワールド…。
なかなかいいイメージがありますよね。
私のようにこの映画をディズニー・ワールドで楽しむ子どもたちの何かのプロジェクトの話かなんて思って観ると、ガッカリすることになります。
これは厳しいアメリカの現実を描いた作品です。


(ネタバレあり)
シングル・マザーのへイリーは娘の6歳のムーニーと、ディズニーワールドに近い安モーテル「マジック・キャッスル」に住んでいます。
ムーニーはそこに住んでいる2人の子どもたちといつも遊んでいますが、彼らは悪ガキそのもの。
止めてある車につばを吐きかけ、人にお金をたかってアイスを買い、モーテルの電源を落とし、プールに魚を入れ、観光客に水風船を投げつけ etc.。
モーテルの管理人のボビー(ウィレム・デフォー。とてもいい演技です)はそんな子どもたちに手を焼きながらも、優しく見守っています。

へイリーは定職につかず、安い香水をブランド香水の瓶に移し替えて、観光客に売って稼いでいます。
食事は配給や友人のアシュリーが働いているダイナーからパンケーキをもらったりしてまかなっています。
そのうち子どもたちのいたずらがだんだんとエスカレートしていき、空家を燃やして火事を起こしてしまいます。
このことに気づいたアシュリーは、児童家庭局に知られることを恐れ、子どもにムーニーと遊ぶことを禁じ、へイリーとの付き合いも止めます。
カンカンになったへイリーはアシュリーの働いているダイナーに行き、大声で悪態をつき、テーブルに座り込み、娘に何でも頼んでいいと言い、料理が届くとゲップ大会をやり始めます。汚いですねぇ。
ちょっと普通ではないへイリー。(彼女の育った家庭環境が気になります)

いつものように香水を売っていると、そのホテルの警備員に見つかり、追い出されます。
とうとうへイリーは売春に手を出してしまいます。
お客の男からマジックハンドを盗んで売り払っていたのですが、そのお客がモーテルに文句を言いに来ました。ボビーが追っ払ってくれましたが、売春をしていることがわかってしまいます。
ボビーから暗に売春は止めるように言われ、へイリーは頭にきて、使用していた生理ナプキンを窓にたたきつけます。キッタネェ。
家賃が払えなくなったへイリーはアシュリーのところに行き、前のことを謝り、家賃を貸してくれるようにお願いしますが、アシュリーは断り、売春のことでへイリーを嘲ります。
逆上したへイリーはアシュリーの顔を殴りつけます。

児童家庭局に誰かが電話したらしく、ヘイリーの部屋に職員がやって来ます。
防犯カメラに写った9人の男の出入りとウェブ広告が見つかり、ムーニーは一時的に里親に預けられることになります。
へイリーは逆上し、怒鳴り、暴れ、手がつけられなくなります。
職員達がへイリーをなだめようとしている隙にムーニーは逃げだし、友だちのところに行って、2人は…。

実際にディズニー・ワールドへ続くハイウェイ192号線沿いに安モーテルが軒並び、低所得者の住みかになっているそうです。
サブプライム住宅ローン危機などで家を失ったり、高騰する家賃を払えなくなった人たちが住んでいるそうです。
「Hidden homeless(隠れホームレス)」がアメリカに多く存在するということです。
日本でもネットカフェ難民とか女性ホームレスとかがそうだそうです。

虚構であるディズニー・ワールドと現実である貧困問題。
走って行くこどもたちの未来に果たして希望があるのか…。

青木祐子 『コーチ! はげまし屋・立花ことりのクライアントファイル』2021/04/18



犬と散歩に行くと、いい香りがしてきました。
ジャスミンが花盛りです。
家にはジャスミンティーがなかったので、代わりに二ナスのマリー・アントワネットを飲みました。これもいい香りです。



コーチとは「はげまし屋」、達成したい目標がある人と一緒に考え、励ます伴走者。目標が達成できたら契約終了。

立花ことりは27歳、コーチ歴一年半。元編集プロダクションの契約社員。
たまたま「楠木はげまし事務所」に応募したら採用されてしまいました。
事務所には通販好きの所長の楠木海人と事務の羽菜子さん、ベテランコーチで美声の時村仁政がいます。
電話が基本で、たまにLINEやZoomを使うことがありますが、クライアントとは直接会うことはありません。
最初の1回は一時間五千円、その後はチケット制です。

ことりのクライアントにはダイエットで痩せたい、筋トレで筋肉を付けたい、転職したい、お店を持ちたい、小説家になりたい、婚活したいなどの目標がある人がいます。
職業はクラブのホステスから不動産の営業マン、編集者、受付など多種多様。
ことりはクライアントの達成したいことを聞くと、すぐに書店に行って関連する本やノウハウ本を探して読み、情報収集をして、アドバイスできるようにします。
セッションでは目標達成のために、クライアントに、いつまでに、具体的に何をするかを決めさせます。
コーチはプラニングの手伝いはしても、判断や決定はクライアントがするのです。とにかく目標達成まで、励ましていきます。

クライアントは個人情報を言わなくてもいいということになっていますが、言葉のはしばしからある程度わかります。
クライアントは嘘をいうことは規定の路線で、語った言葉から真実を見極め、相手を特定していくのもコーチの仕事です。
「よりそって一緒に悩むタイプのコーチ」であることりは、クライアントの職場を調べ、そこに行って仕事ぶりを見たり、お菓子のお店を開きたい人のためには、内緒でその人のお菓子を取り寄せて味見をし、店舗の物件を見に行ったりします。
そこまでやるのかという感じです。
ことりは善人ですからいいのですが、変なコーチなら何が起こるかわかりませんよね。若い女性クライアントのストーカーになるコーチなんかいそう。
今回はコーチの方じゃなくて、クライアントが問題ありでしたけどね。
まあ、ことりのコーチってどんな感じかは読んで確かめて下さい。

美声の仁政さんに一度コーチをしてもらいたいなと思ったりしました、笑。
ことりの過去はある程度わかったので、何か謎めいている楠木所長や羽菜子さん、仁政さんのことが知りたいですね。
続きに期待しましょう。

中山七里 『ラスプーチンの庭』2021/04/20

1月に出版された犬養隼人シリーズの最新作です。


犬養隼人の娘の沙耶香は腎不全で帝都大付属病院に入院しています。
沙耶香と仲のいい、同じ15歳の庄野祐樹は別の治療法に切り替えると言って退院していき、その一ヶ月後に亡くなります。
犬養は紗耶香と葬式に行き、祐樹の首から下に変な痣があるのに気づきます。
それからしばらくして多摩川台公園で女の自殺死体が見つかり、その死体にも祐樹と同じ痣がありました。
二つの家族は<ナチュラリー>という小冊子を持っていたため、犬養は<ナチュラリー>を調べてみることにします。

<ナチュラリー>は自然治癒団体名で小冊子は会員にしか配付されていません。
主宰が織田豊水といい、怪しい経歴の持ち主で、ラスプーチンみたいな男でした。
世田谷区にある本部で織田から話を聞いたところ、痣は根気棒を使い、家族が施術しできたものであることがわかります。

そんな頃、<ナチュラリー>が世間の注目を集めます。
というのも、神楽坂46の絶対的エース、桜庭梨乃が子宮頸がんに罹り、<ナチュラリー>の施術で完治したと公表し、与党国民党の久我山照之議員は緊急会見を開き、自分は食道がんのステージ2である、<ナチュラリー>の会員で、<ナチュラリー>に関する誹謗中傷や医療行為への妨害を一切許さないと宣言したからです。

やがて桜庭梨乃のsnsのコメント欄には誹謗中傷、脅迫文、殺人予告まで寄せられるようになります。
庄野家と四ノ宮家には悪意のこもった匿名の手紙が届き、庄野の母親が自殺未遂をします。
そして同じ頃、織田豊水が死体となって見つかります。
犬養は殺人事件が起こり、やっと大っぴらに捜査ができることになりますが…。

民間療法がどのように殺人につながっていくのか、そこに行くまでがとっても長かったです。
犯人の動機は理解できますが、なんでそんなことが復讐になると思ったのか、そこがわかりません。
だって帝都大付属病院は全然打撃を受けてませんよ。
自分たちと同じような不幸な人を増やしているだけでしょう。
どんでん返しもないし、ちょっと残念は作品でした。

このシリーズではこれから紗耶香ちゃんのことがメインとなっていくのでしょうかね。
次のテーマは何かしら?


今週のおやつ。


太陽ノ塔オリジナルクッキー缶「タイヨウノカンカン」。

クッキーを頼むと空き缶がたまってきます。きれいな缶ばかりなので、捨てたくないのですが、使用するには微妙な大きさなのよね。どうしようかしら…。

「9人の翻訳家 囚われたベストラー」を観る2021/04/22



世界中でベストセラーになっているオスカル・ブラック著のミステリー『デダリュス』三部作の完結篇『死にたくなかった男』が出版されることになりました。
出版権を獲得したのは出版社『アングストローム』。
社長のエリック・アングストロームが12月に多言語の翻訳をスタートし、来年3月に全世界で発売すると発表します。

12月、『デダリュス』の翻訳のために9人の翻訳家が集められます。

ちなみに翻訳される言語は、英語、フランス語、イタリア語、中国語、ロシア語、スペイン語、デンマーク語、ポルトガル語、ギリシャ語です。
日本語が入ってなくて、残念です。
日本製コピー機が参加してましたが、笑。優秀ですよ。

翻訳家たちは洋館の地下室に監禁されます。
外出も許されず、電話やsnsなどの通信も禁止されます。
ただ原稿を毎日20ページずつ渡され、翻訳していくのです。

そんなある日、エリック・アングストロームの元に「冒頭の10ページをネットに公開した。24時間以内に500万ユーロを支払わなければ、次の100ページも公開する。要求をのまなければ、全ページを流出させる」という脅迫メールが届きます。
脅迫メールには翻訳家たちがクリスマスパーティで歌った曲の歌詞が引用されていたため、エリックは犯人は9人の中にいるのではないかと睨んでいました。
警備員に9人の部屋を徹底的に調べさせ、エリックは自ら犯人捜しに乗りだしますが、次なる流出が…。

種明かしされる後半からのスピード感がいいですね。
翻訳する人って何カ国語もできるのですね。
9人もいると、活躍出来ない人もいて、可哀想でした。
ネタバレしたくないので、これ以上書きませんが、興味を持った人は観てみて下さい。

クリスマスで歌われている曲は"What the World Needs Now Is Love"です。




弟は朝の4時過ぎにワンワン吼えることがあったのに、この頃、全く吼えません。一体なんだったのでしょう。
相変わらず持って来いが大好きです。
この前の血液検査では、ちょっと肝臓の値が高かっただけで、健康です。


兄は階段にやっと慣れました。ソファから降りる時に使っています。
血液検査では中性脂肪の値が高いです。小さい頃から高かったので、それほど心配はしていませんが。
持って来いは嫌いですが、ママのハンカチを使う引っ張りっこは喜んでします。
二人で遊んでくれないので、ママは大変です。

町田そのこ 『52ヘルツのクジラたち』2021/04/23

2021年度本屋大賞受賞作。
ここ何年か、似たような傾向の本が大賞を受賞しているような感じがしますが・・・。


東京から九州の田舎のさびれた港町に引越ししてきた三島貴湖ことキナコ。
祖母が亡くなるまで住んでいた家で静かに暮らすつもりだったのに、詮索好きな村の人々は彼女に関して色々とあることないことを噂をしているようです。

雨宿りをしている時に一人の少女に出会います。
その時は話しかけても反応がありませんでした。
別の雨の日、買い物の帰り道でお腹の痛みを感じ思わず座り込んでいた時、また少女に会いました。
家まで送ってもらい、濡れたので、一緒にお風呂に入ろうとしたところ、その子に虐待の痕があることに気づきます。
しかも少女ではなく少年でした。
後から村の人に聞くと、彼は元中学校校長の孫で、障害があって話せないとのことでした。

キナコは実母と義父から虐待されていました。
家に縛り付けられていて身動きができなくて、どうしようもなかった時に助けてくれたのが、アンさんでした。
彼はキナコの声を聞いてくれたのです。
しかし親たちと関係を絶ってから二年が経った頃、キナコは男と知り合い、関係を持ち、そのためにキナコはアンさんを失い、九州の村まで逃れて来たのです。

今度は私が彼の声を聞く番だ、と思うキナコ…。

題名の52ヘルツのクジラは「世界で一番孤独だと言われている」そうです。
普通のクジラは周波数10から39ヘルツで歌うのですが、このクジラは52ヘルツで歌い、あまりにも高音なので他のクジラたちにはこの声が聞こえないそうです。
題名の付け方がいいですね。
でも題名の良さの割に、展開がありきたりで読めてしまったり、アンさんの描き方が浅かったり何なりで、ちょっと残念でした。