出水千春 『吉原美味草紙 (2)&(3)』2021/05/01



道場主であった父が亡くなり、大阪から江戸に出てきた平山桜子(さくら)は三十歳。伯父の店で料理の修業をしようと思っていたら、伯父は亡くなっていました。
ひょんなことからいとこの力也と一緒に竜次の働いている吉原の妓楼<佐野槌屋>の台所で働くことになります。

『吉原美味草紙 (2) 懐かしのだご汁』
さくらが<佐野槌屋>で働き出してから五ヶ月が経ちました。
肝ノ臓の病で倒れた楼主の長兵衛がさくらに前の女房のお滝との唯一の思い出である小禽雑炊のことを話してくれ、作る約束をしたその夜、長兵衛は亡くなってしまいます。
彼が最後にさくらに願ったのは、義理の母のお勢以と娘のおるいとの仲を取り持って欲しいということでした。
さくらのおせっかいの虫が騒ぎます。

長兵衛が亡くなってから女将お勢以の後見人として長兵衛の弟喜左衛門がやってきます。
彼がお勢以を手籠めにしようとしたのを止めたさくらは恨みを買い、難癖をつけられ見世を追い出されてしまいます。
竜次が奉公先として瓢亭という小汚い居酒屋を探してきてくれます。亭主の正平は味音痴でしたが、心根はいい人でした。何故かお客は滅多に来ませんが、ここで働きながら佐野槌屋にいつか戻ろうと思うさくらでした。

一方、さくらのいなくなった佐野槌屋では、喜左衛門が権力をふるい始め、千歳の突出しでは大層なお披露目をしない、売れない女郎は他の小見世に売る、言うことを聞かない奴は辞めさせるなどということをやり始めます。
佐野槌屋がどうなるのか、気をもむさくらでした。

『吉原美味草紙 (3)人騒がせな蟹祭り』
千歳が三代目佐川の名前を継ぐお披露目の花魁道中が盛大に行われました。
しかしそのすぐ後に、吉原で火事が起こります。
竜次は花魁佐川の願いを聞き入れたため右手に怪我をしてしまいます。
包丁が元のように持てるのか心配するさくら。

そんな頃、さくらはお披露目の宴会に来ていた白水屋の大泉由右衛門に声をかけられます。彼は竜次を知っているといいます。
竜次こと竜太郎は名のある御家の次男坊で、生まれついてのだんじり狂いで、だんじり祭りの花形だったのですが、十年前に突然出奔しました。父親の彦左衛門に恩がある由右衛門は、竜太郎が出奔した事情を知りたいというのです。
またさくらのおせっかいの虫が…。

三十歳というと昔は大年増と言われていました。それなのにさくらは随分幼い感じがします。そして竜次は言葉の下品な男という風に書かれていて、残念ながら両人ともにあまり魅力が感じられません。
おまけに肝心のお料理も美味しそうには思えません。
それなのに何故読むのかと言われそうですが、吉原のことを知りたいからということもありますし、実は他の女料理人の本と思って買ってしまったのです、恥。
次の巻で思い人と結ばれて終わりになるかも、笑。

小湊悠貴 『ホテルクラシカル猫番館 横浜山手のパン職人 4』2021/05/02

薔薇が綺麗な季節になりました。散歩しながら楽しんでいます。
薔薇を鉢植えで咲かせようとしましたが、水やりを忘れてしまうと、てきめんに枯れてしまいました、笑。

Googleレンズで薔薇の名前を探してみました。


この薔薇はロサ・ケンティフォリアでしょうか?


こんな薔薇は初めて見ましたが、Googleレンズで調べると、ピンクの薔薇と同じ種類のようです。


これはつるバラのカクテル?


これはロサ・フィリップスでしょうか。
家庭でも色々な薔薇を咲かせることができるのですね。
ちょっと歩いただけでも色々な種類の薔薇が見つかりました。


かわいい表紙の本です。
ホテル猫番館は横浜山手にあるホテルで、高瀬紗良はそこで働くパン職人です。
今回のお話は4つ。

<一泊目>
大晦日の日、鎌倉の実家に行った紗良は兄の冬馬と鉢合わせをしてしまいます。
冬馬は法律事務所で働く弁護士で、紗良よりも六つ年上です。
実は高瀬家は代々政治家を輩出している一族で、紗良はパン職人になるのを反対されていました。
幸いにも父親が娘の意志を尊重してくれたため、製菓専門学校に入学でき、卒業と同時に家を出て、パン屋に就職したのです。
兄から見合いを断ったことをなじられ、相手がいると紗良は言ってしまいます。
これを聞いた兄が確かめるために猫番館に宿泊の予約を入れてきます。
さて、紗良はどうするのでしょうか。

<二泊目>
猫番館のコンシェルジュ・本城要の妹・結奈が大学の交換留学を終えてロサンゼルスから帰国しました。
猫番館は本城家の父親が出資をしており、母親が実質的に経営をしています。
要はゆくゆくは母の後を継ぎ、オーナーになりたいと思っています。
前のパン職人が辞め、高瀬紗良が新しいパン職人だと聞いた結奈は、名家のご令嬢でまだ24歳の紗良がパン職人になったことに興味を持ち、帰国早速に猫番館に泊まりに行くことにします。そして家に帰ると、要が縁談を断り、その理由が紗良と付き合っているからということを聞きます。
俄然、紗良のことが気になる結奈でしたが…。

<三泊目>
ホテル猫番館のオーナーの本城綾乃は二三年ぶりに姉の真弓と会うことになりました。というのも、姉の真弓が急に泊まりたいと言ってきたのです。家出したとのことです。
真弓は47歳で、近所のドラッグストアでパートをして早十二年。
夫の会社は業績不振が続いており、年収は下がり、息子がこれから私立大学に入学します。
それに比べると、妹の綾乃はシンデレラストーリーのような結婚をしています。
どうしても比べてしまいます。
さて、家出はどうなるのでしょう。

<四泊目>
猫番館のシェフの天宮隼介に、兄で南青山のフレンチレストラン『リエール』のオーナーの武藤鷹志から連絡がきます。
猫番館の前に隼介はそこで働いていたのですが、円満退職ではなかったという噂がありました。
会ってみると、鷹志は隼介に『リエール』に戻らないかというのです。
隼介の答えは…。

今回の美味しそうなパンは黒豆パンやオレンジ風味のブリオッシュ、卵液にロイヤルミルクティーを加えたフレンチトースト、メロンパンです。
食事は洋風おせちや賄いのポム・デ・テール・ブーランジェール、クロケットが食べたいです(唾液が…)。

合間にかわいいイエネコのメインクーンのマダムが独り言を言っています。
それが可愛いですねぇ。
犬と違い猫って気位が高いですからねぇ。
そうそう、猫番館には薔薇の庭があり、それが人気の一つらしいです。
これから訪れるといいかも(と言っても実際にはないホテルですけど)。

大野更紗 『シャバはつらいよ』2021/05/03

散歩中に見た花シリーズ。


色が独特です。たぶんアフリカキンセンカの一種だと思うのだけど…?


これはウツギの一種かな?
結構知らない花がいっぱい咲いているので、何の花か調べるのが楽しいです。



大野さんの本は『困ってるひと』を読んでいますが、その後がどうなったのか気になったので読んでみました。
2010年6月末から2013年4月までの様子が描かれているようです。

大野さんはミャンマー難民支援や民主化運動に関心を持ち大学院に入ったのですが、病に倒れてしまいます。
なかなか病名もつかず、困っていましたが、やっと「皮膚筋炎」と「筋膜炎脂肪織炎症候群」という病名がつきます。
「自己免疫疾患」で、本人曰く「全身の免疫システムが暴走して、自分自身を攻撃するという類の病」だそうで、原因がわからない、治療方法もわからない「難病」です。
この本には通算九ヶ月間の入院を経て退院してからのことが書かれています。
入院中に色々とあったので、退院後は「一人で生きていく」と決めたようですが…。

入院していると「特定疾患」を申請しても月に12万円ほどかかったそうです。
大野さんはご両親が働いているので払えますが、もしお金がなかったら、どうなるのでしょうね。
退院後、病院まで歩いて2、3分のところに部屋を借りて住み始めます。
ご両親の住んでいる福島には病気を治せる医者がいないから仕方がないのです。
ヘルパーを一日一時間頼めることになったそうですが、それにしても日本の福祉って厳しいですね。大野さんのような人でもヘルパーが一時間ですか。
自分ではできない家事を頼むと一時間なんてすぐに終わってしまいますよ。
寝たきりではないので、やれることは自分でやれということなのでしょうか。

Twitterっていうのはやったことがないので、わからないのですが、何かつぶやくと、それを読んだ人が助けに来てくれることがあるんですね。
大野さんはTwitterに大分助けられています。親切な人っているんですね。
定期的にというのが負担でも、たまたま時間が空いていたり、気が向いた時になら人助けができることがありますものね。
Twitterができなくても、その時に必要な助けを求める術は何かないでしょうか。

2011年3月11日には区の相談支援担当の職員の方が安否確認に来てくれたそうです。どこの区にお住まいかわかりませんが、区によってはこういうこともしてくれるのですね。私の区はどうなのかしら?
Twitterで『おせっかい、高齢者、障碍者、難病患者、周辺近所に声をかけまくって』、『ステロイド、透析、血液製剤、免疫抑制剤等、医療行為・薬品が生命維持に毎日不可欠なひとのライン確保を』とつぶやいたそうです。
これは大野さんだからこそわかることですね。
病気のない元気な人にはわからないことです。
人に迷惑をかけないように、ひっそりと生きていくのもいいのですが、有事の時は声を上げないとわからないことがあるので、声を上げていくことも大事ですね。

色々と大変なことがあっても、それをサラッと書いているところが読んでいても好感が持てます。
シャバで移動する時は杖を使い、ヘトヘトになりながらだったので、電動車椅子を買うことにして、やっと届いた所で終わっていますが、その後が気になりました。
車椅子で色々な場所に行けるようになったのかしら?
あとがきに2013年4月に別の大学の大学院に入り直し、社会保障のシステムの勉強を始めたと書いてありましたが、今は何をなさっているのでしょうか。
調べてみると、今年の4月に東京大学医科学研究所公共政策研究分野特任研究員になったようで、ずっと研究中心の生活をなさっているようです。
お元気そうで、何よりです。

『ボヘミアン・ラプソディ」&「アリー スター誕生」を観る2021/05/04

シンガーが主役の映画を観てみました。


クイーンの歌はいくつか知っていますが、ファンではなかったのでバンドのメンバーは4人ですが、そのうち3人しか知りません。
フレディ・マーキュリー、ブライアン・メイ、ロジャー・テイラー、後一人は誰かしら?
ドラマーのジョン・ディーコンだそうですが、彼って目立ちませんものねぇ。

フレディ・マーキュリーはゾロアスター教徒のペルシャ系移民出身で、ファルーク・バルサラが本名です。音楽をやりたかった彼は、父親とは折り合いが悪かったようです。
ブライアン・メイとロジャー・テイラーがやっていた「スマイル」というバンドのヴォーカルが抜けたので自分を売り込み、新生バンドを作り、「クィーン」と改名します。自分の名前もフレディと変え、デビューするときに名字をマーキュリーとしました。
この頃、ブチックの店員だったメアリー・オースティンと知り合い、後にプロポーズをします。

売れて行くにしたがい、フレディは自身のセクシャリティに悩んでいきます。
それに気づいたメアリーはフレディと距離を置きます。
やがてフレディはパーティ三昧の生活を送り始め、酒と麻薬に手を出すようになります。
そのため家族を持つようになったバンドの他のメンバーとも上手くいかなくなり、マネージャーのポールの邪魔もあり、フレディは孤立していきます。
しかしメアリーのおかげで自分を取り戻し、ポールとも別れ、メンバーとまたバンドをやりたいと思い始めます。
メンバーたちは難色を示していましたが、フレディの熱意に折れ、再度バンド活動を行うことになります。
その頃、フレディはエイズに罹っていることがわかります。
フレディは昔パーティのウエイターをしていたジム・ハットンを探しだし、交際を始め、家族にもジムを紹介し、彼らは受け入れられます。
ハットンとメアリーはフレディが亡くなるまで側にいて、フレディを支え続けました。

フレディ役の人が歌も上手いし、そっくりでしたね。
歯があんなに出ているなんて、知りませんでした、笑。
パソコンで観たので、コンサート場面は迫力はありませんでしたが、映画館ではできないこと、一緒に歌えたのでよかったですわ、笑。
事実を描ききれていないところがあるそうですが、私のようにクイーンをよく知らない人たちが、フレディの一面をそれなりに知ることができたので、いいのではないでしょうか。


レディ・ガガ主演の映画です。
これは1937年に公開された『スター誕生』の三度目のリメイクだそうです。

カントリーロック歌手のジャクソン・メインはカリフォルニアでのコンサートの後、ドラッグバーに立ち寄り、そこで歌っていたアリーの歌を気に入り、彼女にコンサートで歌わないかと持ちかけます。
最初は断ろうと思ったアリーですが、ジャクソンのコンサートで歌うことにします。
コンサートの受けがよかったので、それからアリーはジャクソンのコンサートツアーに同行することになり、いつしか二人は愛し合うようになります。

やがてアリーはメジャーデビューをし、ポップ歌手として売れ、グラミー賞にノミネートされるまでになります。
その一方、ジャクソンは耳の不調もあり、酒に溺れていきます。
グラミー賞当日、受賞したアリーが挨拶をしている時に、ジャクソンは失態をおかしてしまいます。
断酒会に行っても遅刻をし、アル中の治療施設に入っても三週間で出てきてしまうジャクソン。
アリーは彼をコンサートに参加させたいと言いますが、マネージャーのレズは反対します。
レズはジャクソンに、欧州ツアーのことを話し、君はアリーのキャリアには邪魔な存在だ、また酒を飲むことがあったら、アリーと別れてくれと言います。
アリーはツアーはキャンセルになり、勢いがあるうちに次のアルバムを作ることになったと嘘をつきます。そして今夜が最後のコンサートだから一緒に歌いましょう。会場で会いましょうと言って出て行きました。
アリーの嘘に気づいたジャクソンは…。

期待してみたのですが、感動まではいきませんでした。
ジャクソンが情けないですね。女の成長を喜べるほどの器量がなかったということですかね。
フレディもそうでしたが、成功しても満たされず、酒とドラッグに溺れるというのは、人生で本当に必要なものは成功ではないということでしょうか。
アリーのお父さんの仕事はなんなのか気になりました。いつも友人がいるのはなぜなのかしら?
曲がそれほど好みではなかったのが残念でした。


今日、お散歩に行くと、暑かったので弟がへばっていました。


立ち止まり水を飲むと、こんな風に座ったり、伏せたりしていました。
ヨーキーは暑さに弱いのかな?

青木祐子 『これは経費では落ちません! 8』2021/05/05

このシリーズ、毎回安定した面白さです。
経理のことは知らない私ですが、こんなことが経理の人にはわかるんだという驚きがあります。
経理の目を誤魔化そうとしても駄目よ!


森若沙名子は天天コーポレーションの経理部員。
営業部の山田太陽とつきあっていますが、太陽は大阪営業所に異動してしまいます。会えなくて、ちょっと淋しいのですが、毎日しつこく(?)ビデオ通話アプリで話すので、大丈夫です。

天天コーポレーションは今期から社長が代替わりし、二つの会社―『トナカイ化粧品』と『篠崎温泉ブルースパ』―を吸収合併して新しい会社になりました。
そのため経理部は大忙しで残業ばかり。
それなのに経理部には補充はなし。

<第一話>
大阪で開かれるトナカイ化粧品の新規キャンペーン会議の稟議がなかなか回ってこなくて、何故か沙名子がキャンペーンに反対だと思われ、おかしいと思い調べてみると、なんと沙名子、単純な計算間違いをしていました。
沙名子、ショック!!
そのためか営業部に三人の増員が…。

<第二話>
トナカイ化粧品の総務部にいた槙野徹が製造部の配属になりました。
経理関係でお世話になっていたので、沙名子は密かに彼が経理部に来てくれることを期待していました。
彼は静岡の工場勤務なため、妻子を東京に残し単身赴任だそうです。
彼の出張伝票がおかしくないかと同じく経理部員の美華に声をかけられます。
神奈川の工場へ出張で、月曜日と金曜日に日帰り出張になっています。
家族が東京にいれば、土日は自宅に帰ると考えられます。
彼の有給休暇を調べてみると…。

<第三話>
太陽は大阪で楽しくやっているようです。
今はキャンペーンと手洗いブースの設営で忙しいとのこと。
そのキャンペーンイベントに、ウェブサイト『プライムファン』の記者が取材にやってきます。その記者がなんと、太陽の元彼女でした。気になる沙名子。
営業部は太陽の代わりに鎌本と組んだ山野内亜希が大変な目に遭っています。
鎌本は癖があり、機嫌の浮き沈みが激しく、口の悪い奴で、相手を選んで問題発言を繰り返しています。
それとなく山野内をいたわる沙名子。
東京でのキャンペーンでは案の定、トラブル勃発!
鎌本はトラブルが起こると投げやりになり、解決するのではなく、犯人探しをするというとんでもない奴で、自分のせいなのに、山野内のせいにします。
大阪から手伝いで出張していた太陽は鎌本の性格がよ~くわかっています。
さあ、どうするのか、太陽。

<第四話>
やっと経理部に新人が入ってきます。
トナカイ化粧品で総務部にいた27歳の岸涼平です。
当面は真夕の手伝いということになりました。経理は初めてでも、仕込むと使えるようになりそうです。
やっと安心というところに総務部の玉村志保がトラブルを持ち込んできます。

どんな仕事にも向き不向きがあります。
経理に関しては沙名子は向いているということです。
彼女がすごいのは、誰かが何かやらかしたらすぐにわかるというところです。
そのため知りたくもなかったことを知る羽目になってしまいますが。
本人は勘と言っていますが、美華は経験則と言います。
果たして長く仕事をしていれば、身につくのでしょうか?

「パブリック図書館の奇跡」を観る2021/05/06

前に「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」を観た時に、日本の図書館とアメリカの図書館は成り立ちが違うことがわかりました。
この映画の舞台であるオハイオ州シンシナティ図書館もNYと同じように「 Public Library」なんですね。

(ネタバレあり)


シンシナティでは大寒波に襲われ、ホームレスのシェルターの収容人数が足りず、ホームレスたちには凍死の恐れがありました。
毎朝、ホームレスたちは暖を求め、図書館の前に並び、図書館が開くのを待っています。

図書館員のスチュアート・グッドソンが図書館にやってくると、正面玄関に見慣れぬシロクマが置いてありました。
館長(だよね)のアンダーソンによると、自然史博物館が改築中なので、借りてきたそうです。彼に話があるので正午に評議室に来るように言われます。
同僚のマイラは遅刻の常習犯。バスは遅れるから車を買って乗ればというスチュアートに、車の二酸化炭素排出による環境破壊が嫌だとへ理屈ばかり述べます。
彼女は文芸セクションへの異動を4回も出していますが、また出すようです。

先ほど並んでいたホームレスたちはトイレに押しかけ、顔を洗い、歯を磨き、噂話をしています。
昨夜二名の仲間が死んだそうです。図書館に泊めてくれればいいのにと言う彼ら。
一人のホームレスがそこにいたスチュアートに家に泊めてくれと言いますが、スチュアートは泊められないと言い、お金をあげようとしますが、からかっただけだよといってかわされます。
見かけない顔がいたので、誰かと聞くと、モンタナから来たジョージだとのこと。

どこからか歌が聞こえて来ます。
窓に向かい、裸で歌を歌っている男がいます。曲は映画「クールランニング」の中の"I can see clearly now”のようです。
マイラは「好きな歌なのに…」と嘆いています。
警備員がやってきて、裸の男を捕らえるのはオレの仕事じゃないと言いますが、急に男がぶっ倒れます。

もちろん普通の住人もやって来ます。
レファレンスでは様々なことを聞いてきます。
「地球儀がありますか?」「そこにあります」「実物大のが欲しいのですが」「使用中です」。
「ジョージ・ワシントンのカラー写真が欲しい」。
「破れば刑務所に戻れる法リストは?」etc.

スチュアートが評議室に行くと、あるホームレスに体臭を理由で退館を求めたことで図書館が訴えられているとのことです。
そのホームレスには精神疾患があり、他の利用者から苦情が来ていたのです。
弁護士のデイヴィスは体臭を理由に退館を求めたのは間違いだ、お金で片を付けると言います。
やりきれない思いのスチュアートたち。
デイヴィスは次の市長選挙に出るつもりのようです。

ピザを買って家に帰ると、管理人のアンジェラがハンマーで配管を叩いています。
スチュアートの部屋のセントラルヒーティングが壊れているのです。配管を叩いても直らないと思いますが。
(家も外と同じように寒いから、家に泊められないと言ったのですね)
スチュアートは家に汚損された本を持ち帰り、補修をして小銭を稼いでいるようですし、ピザに育てている野菜をのせたりして、なかなか図書館員の生活も楽ではないのですね。
意気投合したアンジェラにスチュアートはアルコール依存症でホームレスだったことを話します。そしてキスをし…。

翌日、図書館の前でホームレスが一人凍死していました。

閉館10分前。
スチュアートのところにホームレスのジャクソンがやってきて、シェルターはいっぱいなので、これから図書館を占拠すると告げます。
アンダーソンに図書館を解放することを提案しますが、自分には開放する権限がないと断られた上に、評議会がスチュアートの解雇を考えているということを聞かされます。

ガードマンたちがやって来ますが、扉を閉めて抵抗するホームレスたち。
スチュアートはガタイのいいジョージに頼んで本棚を動かし、扉が開かないようにします。

ネゴシエーターをしているビル・ラムステッドが呼ばれます。
彼の息子はホームレスで、どこにいるのか探している最中でした。
ビルがスチュアートに電話をし、平和的解決を求めていると話します。
スチュアートはこれは平和的デモで、図書館か他の施設をシェルターとして用意してくれと頼みますが、ビルは代わりに何を差し出すのかと聞いてきます。(ネゴシエートだから?)
困惑したスチュアートが差し出す物はないというと、ビルはスチュアートに「君は抜けろ」と命令し、そこにいたデイヴィスが「言うとおりにしろ」と口を挟みます。
デイヴィスに気づいたスチュアートは、デイヴィスを外に出し、コンクリートの上に直接5分間寝せることを要求します。
スチュアートの仕返しだと思ったデイヴィスは、コンクリートの上に寝た後、TVのインタビューで、スチュアートを危険な精神病者だと決めつけます。

ちょうどその頃、管理人のアンジェラが図書館の前まで来ていました。
スチュアートに電話をし、図書館内をビデオにとって彼女に送るように言います。

病気になったホームレスと一緒に外に出たマイラはデイヴィスにスチュアートのことを聞かれ、彼の意に反し、スチュアートとは五年間働いていたが、彼は善良な市民で、信頼できる人であると答えます。
アンジェラはTVキャスターのレベッカに人質はいないことを話し、スチュアートが撮ったビデオを送るので観て欲しいと頼みます。
しかしレベッカはビデオを観ようともせず、こんなに注目されている事件は滅多にない、事件は悲劇で終わるからいいのだと言い、真実を伝えようとはしません。

ホームレスたちがシェルターを求めて立てこもっただけなのに、いつのまにか人質事件になり、スチュアートの犯罪歴が暴かれ、と言っても大した犯罪ではないのですが、スチュアートは首謀者になってしまいます。
警察もマスコミも当てにならないことを悟ったアンダーソンはホームレスたちと一緒に図書館に立てこもることにします。

レベッカからのインタビューに答えていたスチュアートは、何を話しても無駄であることに気付き、『怒りの葡萄』の一説を朗読します。
意味を理解できないレベッカはアンジェラに「よくもいかれた奴を紹介してくれたわね」と怒りますが、マイラがすかさず「まだこれが人質事件だと思っているなら、お天気レポートも無理じゃない」と返します。ナイス、マイラ、笑。

やがて機動隊がやってきます。
そしていよいよ突入ですが…。

監督兼主役のエミリオ・エステベスは59歳にもなるのですね。
私の好きな映画『アウトサイダー』や『セント・エルモス・ファイヤー』に出ていましたが、誠実な図書館員がぴったりで、いい年の取り方をしたようですね。
アレックス・ボールドウィンは融通が利かなさそうなネゴシエーター役でした。こんな父親だから息子が利己主義な自分のことしか考えない奴になってしまったのね。
クリスチャン・スレーターはホント、クソッタレと言いたくなるような嫌われ検察官役が合っていましたね。何がなんでもスチュアートを犯罪者に仕立て上げたいというのは何なんでしょうね。

最後にどういう解決策を思いついたのか、期待していたのですが、肩すかしでした。
ホームレスに女性がいないのが気になっていたのですが、そうくるか…。
まあコメディっぽいところは、色々なところにありましたけどね。
堅苦しさは捨てて、楽しみながら考えてもらおうという感じですか。
エミリオが監督した他の映画も観たいです。

そうそう「クール・ランニング」は観ましたが、歌は覚えていません。
最後に一緒に"I can see clearly now”を歌ってもいいかも、笑。
「クール・ランニング」は実話を元にした映画で、オリンピック出場の夢に破れたジャマイカの陸上選手が、冬季オリンピックのボブスレーに挑戦するというコメディです。なかなか笑える映画なので、お暇な時にどうぞ。



連休中はパパが家にいるからか、またワンワン五月蠅くなりました。
パパはいつもテレビをつけたり、音楽をかけたりしているので、音に敏感な弟は嫌なのかもしれません。
今日はパパはテレワークですが、明日は出勤なので、久しぶりの静寂の中、よく眠れるかもしれませんね。

歌田年 『紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人』2021/05/07

『このミステリーがすごい!』大賞の作品が次々と出ていますね。
この本は第18回の大賞受賞作品です。
私的にはこの頃読んだ『このミステリーがすごい!』受賞作品の中で、一番のお勧めです。


渡部圭は新宿にある渡部紙鑑定事務所の紙鑑定士兼紙営業士です。事務所といっても彼一人しかいないんですけど。
紙鑑定士とは何か。
「持ち込まれた紙のサンプルを調べ、メーカー、銘柄、紙の密度でもある米坪を推定し、紙厚を測定する」職業らしいです。
得意なものは本で、カバー、オビ、表紙、見返し、口絵、本文、上製本なら芯ボールなど、それらのパーツにどんな銘柄の紙が使われているかを鑑定します。
予算に合わせて、それらに準ずる銘柄を提案することもやります。
どこの版元であろうが、書籍や雑誌の使用紙明細や刷り部数も聞きだすことができます。
判型とページ数がわかれば、納品数量から逆算して部数を弾き出すこともできます。
こういう風に書くと、本当にある資格みたいですが、実はないんです。
紙営業士(ペーパーアドバイザー)は本当にある資格です。

彼の事務所に二十代半ばの可愛らしい女性がやってきます。
カレシの浮気調査をしてもらいたいとのこと。
アレ、ここは紙鑑定事務所ですよね。
彼女は<渡辺探偵事務所>と間違って入って来たのです。渡辺探偵事務所には神探偵がいて、何でも解決してくれるんだそうです。
「神」と「紙」の間違いですね、笑。
彼女は米良杏璃という美容師で、鑑定士ということからどんなものでも鑑定できちゃうと思ったのか、渡部にプラモデルの写真を見せて鑑定してくれといいます。
それは戦車のジオラマで、今までプラモデルなんか作ったことのないカレシが急に作ったそうです。
こんなの鑑定できないと渡部は断りました・・・と書きたいんですが、彼は懐具合が寂しかったので、引き受けちゃいました。
前に勤めていた会社の得意先に月刊の模型専門誌があり、そこから専門家を紹介してもらおうと考えたからです。

『ホビーグラフ』の鈴木に会い、フリーのプロモデラーを紹介してもらいましたが、その人は別の人を紹介してきました。
超ベテランモデラーの土生井昇という「伝説のモデラー」です。
高尾に住んでいる土生井のところに行ってみると、ゴミ屋敷かと思われるようなとんでもない家に認知症の母親と一緒に住んでいました。
室内に入ると、もの凄い数のプラモデルが…。”積みプラ”って言うんですって。
彼は何らかの事情で自分の作品を発表できなくなり、今はメーカーからの依頼でプラモの完成品を作る仕事をしているようです。
土生井はネット情報に疎いようなので、作品を載せられるようにTwitterを教えてあげました。
杏璃から渡された画像を見せると、流石としか言い様のない推理を聞かせてくれました。

杏璃の問題は土生井のおかげで無事解決しましたが、報酬を値切られ、持ち出しとなり、ガックリきた渡部でした。
悪いと思ったのか、杏璃がお客を紹介してくれました。
これまたプラモデルのことで相談したいというのです。
専門でないので断るつもりが、また金に引かれて引き受けてしまいます。
依頼人は曲野晴子。三ヶ月前から行方不明の妹を探してもらいたいというのです。彼女は同居している妹の部屋にあった白い家のジオラマを持って来ました。
警察はジオラマの写真を撮って行ったけど、それ以来連絡はなし。
探偵社に依頼すると騙され、困っていた時に渡部の話を聞き、藁にも縋る思いでやってきたのでした。

プラモデルのことは土生井ということで、新しいジオラマが出現するたびに渡部は土生井に見せ、土生井は的確に推理していきます。
渡部の紙鑑定士の資格は事件には全く関係がないです、笑。
渡部は土生井の意のままに動くだけ。土生井がホームズで渡部がワトソンですね。

ジオラマを調べていくうちに、渡部と土生井は、それがとんでもない計画を示唆していることに気づきます。

著者の歌田さんは29年間出版社に勤務し、プラモデルと紙の専門的な知識を培ったそうです。どうりで詳しいはずですね。
シリーズ物にしてもらいたいです。よろしくお願いいたします、笑。


そうそう、新国立バレエ団で「コッペリア」を2時から無料で無観客ライブ配信しています。
明日が最後で、コッペリアが小野絢子ですので、是非観てみてください。
ついでに「上野の森バレエホリデー2021」でも9日までオンライン・プログラムを見ることができます。
まだ観ていませんが、モーリス・ベジャールの特別講演会「バレエ・リュスと自作を語る」を観てみようかと思っています。

「サウンド・オブ・メタル―聞こえるということ」を観る2021/05/08

2019年に公開され、第93回アカデミー賞、編集賞と音響賞を受賞した作品です。
(ネタバレあり)


ドラマーのルーベン・ストーンはトレーラーハウスでアメリカ中を移動しながら、恋人のルーと組んだバンドでライブ活動をしながら暮らしていました。

ある日、急に耳が聞こえなくなります。
病院で聴覚検査をしてみると、最大音量にしても右耳29%、左耳24%しか聞き取れていません。
医師は急激に聴力を失いつつあり、失った聴力は戻らない、今の聴力を維持するだけだという診断をくだし、大音量にさらされるような環境から遠ざかるようにと言います。
人工内耳を埋め込むこともできますが、保険がきかず、4万から8万ドルするそうです。

ライブの後、ルーベンはルーに耳が聞こえないことを告白します。
ルーはツアーを止めようと言いますが、ルーベンは聞き入れません。
自暴自棄になったルーベンを見て困ったルーは知人に相談し、ミズーリ州にある聴覚障害者の支援グループを紹介してもらいます。

施設ではジョーが迎えてくれました。
ジョーはルーベンにドラッグ依存症かどうか、もしそうなら耳が聞こえなくなってから使おうと思ったか聞きます。
ルーベンは4年前からルーと付き合いだし、彼女のおかげで薬と縁が切れたのでした。
ジョーは自分のことを話します。彼はアルコール依存症で、戦争で聴力を失い、妻も子も失ったのですが、それは耳のせいではなく、酒のせいだったと。
ジョーはここで暮らしながら手話を学んで生活の基盤を作るべきだとアドバイスしますが、一人で施設に入らなければならないということがわかった時点でルーベンはジョーの申し出を断ります。
しかし翌朝、ルーはルーベンを残し、父親の元に行ってしまいます。

仕方なく施設に入ることにしたルーベン。
車のキーも携帯電話も預けなければなりません。
みんなに紹介されますが、手話がわからないので、何を言っているのかわかりません。食事の時も、みんなが楽しそうに何を話しているのかわかりません。
この施設ではそれぞれにやるべき仕事が与えられ、ルーベンはろう者の生活を学ぶように言われます。

自分が何をしたらいいのかわからないルーベンは、頼まれてもいないのに屋根を直してしまいます。それを見たジョーがやってきて、課題を出します。
朝5時に指定された部屋に行き、そこでジッと座っているという課題です。
ジッとしていられない時はテーブルに紙とペンがあるから、自分の気持ちを書いていくのです。

やがてルーベンは指文字を覚え、子どもたちと親しくなり、食事の時にはみんなと話せるようになります。
そんなルーベンにジョーは、将来この施設で彼のプログラムや学校の手伝いをして暮らしていかないかと提案してきます。
しかしルーベンはまだ望みを捨ててはいませんでした。

ルーベンは隠してあったキーを使い、車と車の中にあった機材を売り払いお金を作り、インプラント手術の予約を取ります。
手術後、施設に戻ったルーベンにジョーは言います。
「君は静寂の瞬間を感じることはあったかい。その静寂こそ心の平穏を得られる場所だ。その場所は決して君を見捨てない」と。
「難聴はハンデではなく、治すものではない」というのがジョーの信念。
ルーベンはジョーの信頼を失ったのです。

四週間後、耳に音を入れにいきます。
医師はこの音に慣れるようにと言います。

ルーベンはルーに会いに行きます。
ルーは父親との関係が改善し、ルーベンと一緒にいた頃とは全くの別の環境に身を置くようになっていました。

ルーと過ごした翌朝、ルーの家を出て、一人ベンチに座り、周りの音を聞くルーベン。
機械を取り外し、やっと訪れる静寂…。


人間の目や耳は優秀で、見たいものを見、聞きたい音を聞くといいます。
人工内耳は全ての音を拾ってしまいますから、さぞ五月蠅いでしょうね。
ルーベンは最後にやっとジョーの言った言葉がわかったのではないでしょうか。
世の中音が氾濫していますものね。
静寂に身を置くことで、自分と向き合えますから。
一人になり、ルーベンはやっとろう者として、自分の人生を歩んでいこうという覚悟ができたのではないでしょうか。

ルーベンス役の人を見るのは初めてでしたが、なかなかよかったです。
ジョー役の人の両親がろう者で、彼はコーダだそうです。だから演技が自然だったのですね。
ルーの最初と最後が違いすぎて、おんなじ人!と思いました、笑。

題名に「聞こえるということ」が入っていますが、これ、いらなかったですね。
いつも思うんですが、なんでテーマと合っていない題名がつけられていることが多いんでしょう。
この映画は「聞こえる」ことよりも「聞こえないこと」が主題のように思いますけど。
「サウンド・オブ・メタル」だけだと音楽系の映画だと勘違いされちゃいそうだからかしら?

今ならamazon prime videoで無料で見られますので、観てみてください。

New York City Ballet 2021 Spring Gala at the David H. Koch Theater2021/05/09



ニューヨーク・シティ・バレエが5月7日から20日まで「スプリング・ガラ」を配信してくれています。ここを観てください。
舞台をそのまま見せるのではなく、監督がソフィア・コッポラで、とてもスタイリッシュな映像になっています。
デイヴィッド・H・コーク劇場はリンカーン・センター内にあるバレエやモダンダンスなどのための劇場だそうで、とっても豪華な素敵な劇場ですね。

<プログラム>
DANCES AT A GATHERING(excerpt)
Music by Frédéric Chopin
Choreography by Jerome Robbins
Dancer: Gonzalo Garcia

モノクローム。
男のダンサーが一人、練習場に入っていきます。
持っていた荷物を置き、久しぶりの稽古場に懐かしさを感じながら、踊り始めます。

DUO CONCERTANT (excerpt)
Music by Igor Stravinsky
Choreography by George Balanchine
Dancers: Ashley Bouder , Russell Janzen

舞台裏のような場所にピアノが一台、その前にバイオリニストがいます。
ピアニストとバイオリニストが音楽を奏でる側で、二人のダンサーが踊ります。
ちょっとコミカルな振付です。

LIEBESLIEDER WALZER (excerpt)
Music by Johannes Brahms(Opus 52)
Choreography by George Balanchine
Dancers: Maria Kowroski , Ask la Cour

ザ・プロムナードにあるエリー・ナーデルマンの彫刻の前で、優雅にタキシードと長いドレスを着た男女が踊ります。

SOLO (New Peck)
Music by Samuel Barber
Choreography by Justin Peck
Dancer: Anthony Huxley


ステージに一人の男性ダンサーが。
衣装が今一ですが、踊りは流れるように軽やかで優雅です。
この演目は女性が踊っても良さそうです。丈が長めの白い衣装が合いそうです。

DIVERTIMENTO NO. 15 (finale)
Music by Wolfgang Amadeus Mozart
Choreography by George Balanchine
Dancers: Emilie Gerrity, Lauren King, Ashley Laracey, Tiler Peck, 
              Unity Phelan, Daniel Applebaum, Andrew Scordato,
              Andrew Veyette 他

ここからカラーになります。
舞台裏で踊る用意をするダンサーたち。
幕が上がります。

ニューヨーク・シティ・バレエは女性ダンサーの体型が色々で、ロシアの研ぎ澄まされた体型のダンサーたちと比べて、健康的な印象があります。
とにかく音楽に合わせて楽しく踊れればいいわ、なんて感じです、笑。

コッポラが監督しただけあり、美しい映像ですので、是非ご覧になってみてください。30分ちょっとですので、バレエに興味がなくても飽きずに観られます。

風野真知雄 『眠れない凶四郎 四&五』2021/05/10

妻が殺されてから眠れなくなった土久呂凶四郎。
南町奉行の根岸肥前守鎮衛は彼を夜回り専門の同心に任命しました。
三巻で妻の事件も解決しましたが…。


『眠れない凶四郎 四』
妻の事件が解決したのに、未だに眠れない凶四郎。
彼はこの頃川柳に凝っています。
師匠はよし乃といい、凶四郎、密かに彼女に懸想しています。

滅法足が速いという女岡っ引きのしめが巷の噂を仕入れてきました。
板橋の外れあたりに土蜘蛛が出るというのです。
早速奉行の根岸に報せます。
根岸はまだ眠れないという凶四郎に調べさせることにします。

そんな頃、与五郎という中村座で裏方として働いていた男が、毒蜘蛛の糸にからまれて殺されていました。
懐には「次はおその」と書いた紙が入っていました。
中村座で話を聞いてみると、与五郎は大阪の道頓堀小屋で働いていたことがわかります。
土蜘蛛の芝居は、中村座を辞めた上村獅子右衛門という役者が上村座で『蜘蛛の巣館』という化け物の話をやっていたようです。
上村に殺しに使われていた蜘蛛の糸を見てもらうと、玄人の仕事で、名のある人の仕事だと言います。
根岸はおそのに警戒させるために瓦版を出しますが…。

湯島で女が事故で亡くなります。
行ってみると、おそのでした。
材木屋にあった角材で頭をぶつけたようですが、どうも様子が変です。
凶四郎は材木を骨に見立てたのじゃないかと思いました。
朝、奉行所に戻ると、根岸が土蜘蛛の巣にはりつけてあった紙を見せに来ます。
そこには「妙技骸骨崩し 次はおつる」と書いてあります。
上村によると骸骨崩しは上方の仕掛けをつくるのがうまい暗闇堂清臓という若い化け物師がやっていたと言います。
彼が江戸に甦ったのか。

そうするうちに次の殺人が…。

『眠れない凶四郎 五』
凶四郎、川柳が楽しくてたまらないようです。
彼の作る川柳は、もちろんお化けに関したものです。
例えば、「長雨で黴の模様になにか見え」とか「傘貸せと声はすれども雨の闇」なんかで、ちょっと怖いですね。

さて、定例の川柳の会で、幽霊が見える絵のことを聞きます。
人形町にある料亭<柳屋>の屏風絵に出るそうな。
奉行の根岸が凶四郎に何か面白いことはないかと聞くので、この絵のことを話すと、太っ腹の根岸は料亭の払いを出すから見てこいと言ってくれました。
料亭に行って見てみると、とてもきれいな絵です。
ところがしばらくして、一緒に行った源次が絵の中に幽霊がいると言い出します。
凶四郎には全く見えません。
おかしな話です。
別の日、川柳の師匠のよし乃が幽霊の絵を見てみたいと言い出します。
よし乃さん、凶四郎の懐具合はお見通しで、お願いしたのは私なので、支払いはすべてわたしということでと。いい人ね。
行ってみると、見えました。
凶四郎、ついでに幽霊の秘密までも解いてしまいます。

今回は凶四郎、大忙しです。
泥棒に入った桔梗屋で幽霊を見たと言う泥棒が現れたり、ある鍼師に鍼を打たれると幽霊が出るとかいう噂があったり、丑の刻参りで呪われたり、闇の商売をしている赤月屋を追いつめたり…。

川柳の師匠と上手くいくかと思ったら、悲しい理由で一緒にはなれないようです。
根岸曰く、「男と女はな、別に夫婦にならなくても幸せに付き合っていくことはできるぞ」。
そうです、思い合っていれば。

最後に凶四郎の川柳を。

「幽霊もおあしがないのも恨めしや」