佐伯泰英 『己丑の大火 照降町四季2』2021/05/15

火事と喧嘩は江戸の花と言われていますが、今回のお話のテーマは火事です。


文政12年(1829年)3月21日。

八頭司周五郎と蘭方医大塚南峰はいつものように鉄砲町の一刀流竹村道場で朝稽古をしました。
初めて打ち合いをした南峰は手の打ち身がひどく早帰りをしたため、周五郎は奉公している鼻緒屋にいつもより早く行くことにします。

その頃、神田佐久間町の保管蔵で、見習職人が捨てた煙草の吸い差しから火が出、運悪く風が強かったため、火は瞬く間に広がっていきました。

火事の様子を見に行った周五郎は佳乃に話し、病気で寝込んでいる佳乃の父親・弥兵衛を深川黒江町の因速寺に避難させることにします。
宮田屋にその日に行くことになっていた吉原のことを断りに行くと、大番頭の松蔵は周五郎に何か頼みたいことがあるようでした。

火は日本橋を焼き尽くし、照降町まで迫ってきました。
宮田屋の主一家と女衆は深川入船町の別邸に避難しました。
佳乃は照降町に残り、御神木の梅の木を火から守ると言い出します。
周五郎と町の人々は佳乃の熱意にほだされ、彼女と共に梅の木を守り通します。
周五郎は宮田屋の松蔵に、焼失後の宮田屋と若狭屋を盗賊や解き放たれた囚人から守って欲しいと頼まれます。

八頭司周五郎、活躍します。
長男に生まれなかったため、無役の閑人としてしか生きる術のなかった周五郎ですが、剣の腕は達人級、人を率いることは一流と今回の火事場の働きではっきりしました。
女職人の話かと思っていたのですが、これ以上ゴタゴタはなさそうなので、これから周五郎の話になっていくのでしょうね。
刀を捨てられない周五郎の行く末は如何に。
特設ページを見ると全四巻って書いてあるので、他のシリーズのように長くはないようです。