髙田郁 『あきない世傳金と銀 十二 出帆篇』2022/02/22

いつも楽しみにしているシリーズの最新版です。


宝暦元年(一七五一年)、浅草田原町三丁目に店を開いてから十年。
武士の小紋染めを町人のものにし、麻疹禍に鉢巻き用として江戸紫の小紋染めの切り売りをし、買い手のことを第一に考える商いをしてきた「五鈴屋江戸本店」ですが、呉服仲間を追われて、太物商いのみになってしまいました。
それでも工夫を忘れず、湯帷子を浴衣へ転じ、勧進大相撲冬場所では、力士と揃いの浴衣を、浅草太物仲間の店で売り出してきました。
再び呉服も扱えるようになりたいという願いが、浅草太物仲間の協力を得ていよいよ叶いそうです。
奉行所からの沙汰はなかなか来ず、やっと来たかと思ったら、桁外れの冥加金を出せば、浅草太物仲間の結成を許すというものでした。
躊躇いなく出せる額ではありません。
幸の考えついたことは…。

なんとか呉服を扱えるようになったのですが、因縁の相手からの横槍が…。
亡き兄の朋友からの追書きに助けられます。
このことがあってから五鈴屋江戸本店には武家のお客が来るようになり、客層が広がっていきます。
しかし馴染みのお客からの言葉に何やら引っかかりを感じる幸。
買い手も売り手も幸せにする「この国一」の商いとは何か。
悩みは尽きません。

そんな時に吉原から衣装競べの話が来ます。

今回はこれといった困難がなく、ちょっと凡庸な内容でした。
トントンと上手くいくというのは、髙田さんの小説には合わないような気がします。
この本を読むのは、とことんヒロインが過酷な状況につき落とされるからですよねぇ(マゾかwww)。
無事に五鈴屋江戸本店は大海へと出帆しましたが、次にどんな大波が来るのか、楽しみに次巻を待ちましょうね。