時代小説、三冊を読む ― 2021/07/16
本が溜まってきたので、まとめて紹介します。

佐伯泰英 『一夜の夢 照降町四季四』
このシリーズの最終巻です。
八頭司周五郎が八頭司家から呼び出され、屋敷に駆けつけると、心配していたことが起こっていました。
兄が何者かに暗殺されたのですが、このことを公にはできません。
周五郎は小倉藩当代藩主小笠原忠固の直用人鎮目勘兵衛に面会することにします。
一方、照降町では診療所が建てられ、宮田屋と若狭屋の普請が進んでいました。
佳乃の鼻緒屋も繁栄しています。
新設される中村座では佳乃をモデルにした『照降町神梅奇譚恋之道行』を新築初興行することに決まります。
周五郎はいつか照降町を出て行くと思う佳乃。
果たして周五郎が選んだ道とは…。
女職人の話かと思ったら、違いましたね。
佐伯さんの代表作は読んでないのでなんとも言えませんが、盛り上がりに欠ける作品でした。
赤坂晶 『極楽の鯛茶漬け 伊織食道楽事件帳』
芹沢伊織康昌は膳奉行並の職にあります。
祖父の康高が食中毒の咎で自刃し、膳奉行から膳奉行並に格下げになったのです。ようするに閑職に追いやられており、出仕しても土圭の間で正座したまま下城の時を待つだけなのです。
膳奉行持田次郎左衛門の娘と許嫁の関係なので、持田は伊織に目をかけてくれており、持田に将軍の食事について相談されれば助言します。
ある日、将軍の小納戸役の頭取の大道寺鳳楽に呼びつけられます。
何かと思って行ってみると、用があったのは鳳楽の料理人・安藤六堂の方で、芹沢家秘伝の薬膳料理本「神康調味集」を借り受けたいというのです。
その代わりに格下げになった膳奉行並から正式な膳奉行に戻すというのです。
もちろん芹沢家の門外不出の秘伝書ですから、断りますが、伊織は不審の念を抱きます。
案の定、その裏には驚くべき陰謀が…。
最初からシリーズにする気が満々の本ですね、笑。
表紙が可愛らしいですが、中身は硬派です。
伊織みたいな聡明で調理の腕のみか武道にも優れる人は嫌いではないので、次も読みますわ。
飽食に飽きた将軍相手ですから、料理がそれほど美味しそうではないのが難点です。何しろ将軍の好物が紅ショウガですからねぇ、笑。
坂井希久子 『江戸彩り見立て帖 色にいでにけり』
知らないで読んだのですが、『居酒屋ぜんや』を書いた作家さんの本でした。
今回の主人公はお彩。
腕のいい摺師だった父親が火事で視力と仕事場を失ったため、貧しい長屋でほそぼそと針仕事をしながら暮らしています。
そんなお彩のたぐいまれな天性の資質に気付き、それを利用しようとするのが京男の右近という男です。
一体彼の意図はどこにあるのでしょうか。
江戸時代のカラーコーディネーターのお話です。
お彩が右近を嫌ってばかりいるのが、ちょっと鼻につきますが、これからどんな風に彼女の色彩感覚が生かされていくのか興味が湧きます。
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