桜木紫乃 『ワン・モア』&『蛇行する月』2017/01/25

桜木紫乃さんの本を読むたびに、私の育った北海道の内陸と彼女の描く海沿いの町との違いに驚きます。
私の育った町は歴史もしがらみも少なく、無味乾燥な町でした。
彼女の描く釧路近辺は、こんなこというと怒られそうですが、わけありの人々がひっそり隠れるように住んでいるような荒涼とした場所という感じです。
物書きと普通の人間の感性の違いなのでしょうね。


離島に飛ばされた医師、美和から始まり、彼女とかかわる人々の話が連鎖的に続いていきます。
どの人もそれぞれに満たされない心を抱いて生きていますが、珍しくこの本には救いがあります。
それがイイと思うかどうかは人それぞれ。
たまにはいいかも。


釧路の高校の図書部に所属した少女たちの卒業後の25年間を描いた作品。

清美・・・割烹ホテルの営業として働き、わりきれない思いを抱いて、転職。
桃子・・・カーフェリーの従業員。同じ会社の人と不倫をしている。
順子・・・高校時代の国語教師に心を寄せ、三年間国語のテストで100点を取る。
     卒業後、和菓子屋に勤め、そこの職人と駆け落ちをし東京で暮らして      いる。
美菜子・・・人知れず順子と同じ教師を愛していた。教師になり彼と遭遇し結婚       する。
直子・・・看護師。親元に暮らす。

この5人が一見不幸に見える順子の生き方を通し、自分の人生を思います。

「幸せ」って人から判断されるものではなく、自分で感じるものなんですね。
一途に思いこめることは「幸せ」なんだなと思えました。

『ホテル・ローヤル』を最初に読みましたが、あまり好きではありませんでした。
その後、他の本を読んで、桜木さんは好きな作家の一人となりました。
彼女の描く暗い(?)北海道が好きなんです。
お勧めの二冊です。

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