「ともしび」を観る2021/02/21



シャーロット・ランプリング主演の映画です。

会話のない老夫婦。妻は寝る前に夫の背中をマッサージしている。
その次の日、夫は警察に行き、逮捕され戻って来なかった。
妻は夫が不在でも淡々と日常生活を続けていく。
家政婦の仕事をし、演劇サークルに行き、会員制プールで泳ぐ。
しかしいつしか少しずつその日常に齟齬が生じてくる。
激しくノックする音、天井からの水漏れ、無言電話、餌を食べない犬…。
孫の誕生日にケーキを作って持って行くと、息子に来るなと言ったはずだと追い返され、孫にも会えない。

そんなある日、封筒に隠されていた写真を見つける…。

ランプリングの映画は「まぼろし」と「さざなみ」を観ています。2つとも良い映画でした。
この映画は会話が少ないので、ランプリングの顔の表情や行動から何があったのかを推測するしかないです。
妻は真実を知った後も真実から目をそらそうとしますが、それがもはやできないと悟った後、彼女はどう生きていくのでしょうね。
浜辺に打ち上げられた鯨が彼女を象徴しているのでしょうか。
彼女の苦悩と孤独がとてもやるせなくなる映画でした。
(題名がよくわかりませんが)

誉田哲也 『世界でいちばん長い写真』2021/02/22

遅くなりましたが「埼玉県高校図書館司書が選んだイチオシ本2020」が発表されていたので、紹介しておきます。

1・『雲を紡ぐ』 伊吹有喜 
2・『なぜ僕らは働くのか』 池上彰 監修 
3・『水を縫う』 寺地はるな
4・『逆ソクラテス』 伊坂幸太郎
5・『おとめ六法』 上谷さくら
6・『晴れ、時々くらげを呼ぶ』 鯨井あめ
7・『わたしの美しい庭』 凪良ゆう
8・『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』 左右社編集部 編 
9・『10代から知っておきたい あなたを閉じ込める「ずるい」言葉』 森山至貴
10・『夜明けのすべて』 瀬尾まい子

なかなかいい選択だと思います。
学生ならこの頃学校図書館で本を借りる人が少ないらしいので、すぐに読めるでしょう。
大人は急がないのなら公共図書館で予約しましょう。
近所の図書館では『逆ソクラテス』なんか500人ぐらいの予約なので、忘れた頃に読めます、笑。

そうそう本屋大賞受賞作品はここで。

高校生に伊吹さんの作品の『雲を紡ぐ』もいいのですが、『犬がいた季節』も捨てがたいです。


誉田さんの青春モノです。
中学3年生が主人公で、YA向けの本ですが、もちろん大人が読んでも問題ありません。この本2018年に映画になっているみたいです。

親友の洋輔が転校してから、宏伸の毎日はつまりません。学校でも家でも、何をやっても上の空。
写真がそんなに好きでもないのに、入った写真部では部長の三好にしかられてばかり。ノルマで毎月最低五枚、撮らなきゃならないし、撮ったのを見せたら、「キモい」だってさ。やってらんないよ~。

そんなある日、祖父の経営する「リサイクルショップ竹中」で不思議なカメラに出会います。カメラのことを聞こうにも、お祖父ちゃんは行方知らず。
店番をしている美人だけど口の悪い従姉妹のあっちゃんに、カメラを見せてもらい、フィルムを使うことがわかったので、買って来て入れようとしますが、どう入れたらいいのかわかりません。
二人は街の写真館にカメラを持って行って教えてもらうことにします。

土曜日、バッチリ化粧しているあっちゃんと一緒にイオンの真裏にあるミヤモト写真館にカメラを運びます。
そこにいたおじさんは、このカメラはスリットカメラといい、改良して自転するようになっているので、360度パノラマ写真を撮影できるカメラだと教えてくれます。
カメラに興味を持ったおじさんはフィルムをプレゼントしてくれ、三脚も貸してくれ、現像もしてくれることになります。

この360度パノラマカメラをグレート・マミヤと名付け、何を撮ろうかと考える宏伸。
最初の一枚は緑川公園で撮ることにします。
一発勝負で撮れたモノは、宏伸のぶにょーんと伸びた顔、笑。
再度挑戦。さて、何を撮ろうか。
それからの宏伸の毎日はグレート・マミヤのことばかり。
考えついた次なる被写体は・・・ひまわり畑です。
あっちゃんの協力の下、ひまわりが満開の日に写すことができました。
今回は意外と良い出来です。

三好に内緒にしていたのですが、ひょんなことからカメラのことを知られてしまいます。
そのため宏伸はカメラの持ち主と全校生徒を巻き込んで、あることに挑戦することになります。

パッとしない普通の中三の男の子が、パノラマカメラと出会うことで変っていくというのがいいですね。
誰でも興味の持てることと出会えれば変われるんですね。
それにしても女の子の怖いこと。もはや遠い世界で忘れてしまったけど、中三の女の子と男の子の関係ってこんな感じなのね、笑。


ヨーキーは何歳になっても走り回るのが大好きです。
ミックス犬の兄なんかおもちゃに目もくれず、ソファーでくつろいでいます。
餌の量を変えていますが、この前のトリミングの時の体重は兄3.5㎏、弟3.1㎏でした。


真剣な目で獲物を見つめます。


ハアハアいっているのに、止めようとはしないので、ママは適当なところで切り上げます。
兄はおやつを使い、待ての練習をします。


ずっと待っています。
我慢強い兄です。

トリミングから三週間でもうボサボサの二匹です。

原田ひ香 『サンドの女 三人屋』2021/02/23



三人屋』の続編です。

朝は三女・朝日のコーヒーとパンのモーニング、昼は次女・まひるの讃岐うどんのランチ、夜は長女・夜月のスナックという「三人屋」でしたが、朝日がIT企業に就職したため朝のモーニングと昼のうどんのランチがなくなりました。
その代わりにまひるが早朝から昼前までコーヒーと自家製の玉子サンドイッチを売り始めました。

スナックをやっている夜月のところに近藤理人という新しいボーイさんが入ります。近所の古屋豆腐屋の店主の彼氏で、一緒に住んでいるのですが・・・。
夜月には原稿が書けない作家の彼氏・中里一也がいます。

サンドイッチを売り始めたまひるは収入が少し減りましたが、小学生の子どもと過ごす時間が増えました。
まひるの彼氏は携帯屋の店長・望月亘で、昼間に慌ただしく会っています。

朝日は加納透と結婚間近です。
一緒に暮らすマンションを探しています。
実は透の実家は不動産を沢山持っていて、家賃収入が数億という家なのです。
透は今住んでいるマンション一棟の持ち主なのですが、なかなか朝日にはそのことが言えません。

そんな頃、「三人屋」の建物が名義は亡くなった父親のままで、夜月の借金のカタに、二番抵当まで入っているということがわかります。
夜月に他にも借金があるのか?気になる男たち。

三姉妹に関係する男たち5人から見た三姉妹が描かれています。
どうみても彼らは女たちに振り回されています。
彼らの人生が彼女たちによって変っていくのが面白いですね。
女は強し、です、笑。

読んでいて、玉子サンドが食べたくなりました。
三人屋で出す玉子サンドって三種類あって、厚焼き玉子をはさんだものと、ゆで玉子を潰してマヨネーズで和えたものをはさんだもの、そして表紙に描いてあるゆで卵を半分に切って、そのままはさんだもの。三番目のはあまり見たことがないわね。
電車に乗って買いに行きたいけど、今は我慢します。
自分で作りたいけど、厚焼き玉子、上手くできるかしら?

読んだ本2021/02/25

読んだ本が溜まってきたので、ミステリー以外をまとめて載せておきます。


篠田節子 『廃院のミカエル』
ギリシャを舞台としたサスペンス。
食品輸入会社に勤めていた美貴は男で失敗し、遠くレバノンに飛ばされたが、紛争のためアテネに逃げて来た。何か商売になるものはないかと探していると、絶品の糖蜜と出会い、その糖蜜の産地であるギリシャ北部、アルバニア国境に近いピンドス山中の村に行くことになる。
村に行く途中で廃院になった修道院があり、壁に大天使ミカエルの絵が描かれていた。薄ら寒いものを感じ、早々に後にするが、その後に不思議な現象が起こるようになる。

オカルト的なお話で、舞台のギリシャの廃院っていうのは好きなのですが、登場人物たちにはまったく共感できませんでした。
キリスト教的なものが好きな人なら楽しめるかも。

一色さゆり 『コンサバター 幻の≪ひまわり≫は誰のもの』
晴香が助手をしている元大英博物館のコンサバター(修復士)・スギモトの工房に、行方不明になっていたゴッホの≪ひまわり≫が持ち込まれ、修復と鑑定をすることになる。しかし持ち主に返却する前日に≪ひまわり≫が盗まれてしまう。
同じ頃、個人宅でフェルメールの≪少女と手紙≫も盗まれていた。
しばらくすると一通のメールがロンドン警視庁に届く。そこにはこの2点の絵画と引き換えに、ヒースロー空港地下倉庫の盗品をすべて渡すようにと書いてあった。
スギモトと晴香はロンドン警視庁美術特捜班の刑事マクシミランと共に調査に乗り出す。

大事の割にあまりそう感じられないのは何故かしら?
作家さんの筆力と出てくるキャラのせいかもね、笑。
ガチのミステリーと思って読むとガッカリしますよ。ライトノベルのちょっとミステリー色のついたものとして読んでください。

溝口智子 『万国菓子舗 お気に召すまま 真珠の指輪とお菓子なたこ焼き』
『万国菓子舗』の店長・村崎荘介と店の接客・経理・事務担当で荘介と付き合っている斉藤久美。今回は主にこの二人のラブラブな姿が描かれています。
荘介から指輪をもらい、彼の親とも会い、プロポーズもあり、後は結婚式だけです。次回にハッピーエンディングが待っているでしょう(たぶん)。
それにしても息子の婚約者とたこ焼きを食べる親たちってなんか変ですねぇ。
犬用のケーキなんかがでてきて、そろそろタネも尽きた?

今回食べたかったのは、バレンタイン用のチョコレートテリーヌです。

青山美智 『木曜日にはココアを』
お探し物は図書室まで』を書いた青山さんの本、二冊目です。
小さな喫茶店「マーブル・カフェ」の出会いから、次々と人が繋がっていき、最後はまた「マーブル・カフェ」に戻って来ます。
軽く読める、心がほんわかする本です。あまり頭を使いたくない時にどうぞ。

風野真知雄 『わるじい慈剣帖 五 あるいたぞ』
相変わらず孫の桃子LOVEの愛坂桃太郎です。
前回は桃太郎の妻と嫁が桃子のところに押しかけてきていて、慌てる桃太郎で終わっていましたね。何故慌てたかというと、嫁は珠子と桃子のことを知らないのです。(桃太郎の息子の浮気相手が珠子で、できた子どもが桃子です)
どうも嫁が桃太郎が赤ん坊を背負って街を歩いているという話を聞きつけたらしく、急遽妻は珠子が桃太郎の隠し子ということにしたようです。
桃子は掴まり立ちをするようになりましたが、今度は長火鉢が桃太郎を悩ませることとなります。やけどしたら困りますものね。どうする桃太郎。
そしていよいよエレキテルを巡って対立してきた北町奉行所の与力・森山平内と決着をつけなければならなくなります。
じいじは(悪?)知恵を働かせて、江戸に戻って来た大泥棒・音羽屋花三郎と共に森山平内に一泡吹かせることにします。

じいじ、大活躍。いつ読んでも楽しいお話です。

藤本登四郎 『祇園「よし屋」の女医者』
京都、祇園で50年続くお茶屋「よし屋」の一人娘の月江は現夢和尚のところで学問を学んでいた。才能があるので、医師の小島源斎が立派な女医者にしこむので預からせてくれと言ってくる。月江の母親・喜久江はカンカンになって断り、松の内があけるとすぐに月江を舞妓として見世出しすることにする。月江は源斎の申し出を受けたかったのに…。
ある日、源斎の恩師が江戸にやって来る。源斎は彼から新しい医書を借り筆写することになる。舞妓の仕事と筆写を一日おきということで、喜久江は月江が筆写の手伝いに行くことを許す。
しかししばらくして、母に内緒で月江は癇狂を患う生糸問屋の娘・小雪の治療を手伝うことになるが、なかなか小雪の治療は上手くいかない。

この話のように、舞妓をしながら医師の手伝いをするなどという女性が本当にいたのでしょうか?
作者は精神科医なので、癇狂の描写は正確なのでしょうが、上手く行き過ぎという感じが残りました。

<今日のわんこ>
夜中の四時過ぎにワンワン吼える弟犬。
どうも夫を起こそうとしているみたいです。
夫が平日、四時過ぎに目覚ましをかけているのをちゃんと覚えているようです。


平日ならいいのですが、休日は止めて欲しいです。
犬は休日だとわからないので困ります。

読んだ漫画2021/02/26



よしながふみ 『大奥 第十九巻』
なんと『大奥』が描かれ初めてから16年が経ったのですね。
徳川将軍が女ということが、とっても斬新で驚いたものです。
最後に女の歴史が男の歴史へと書き換えられてしまいますが、ジェンダーというものは難しいものです。
よしながさん、お疲れ様でした。
次は『きのう何食べた?』の続きを期待して待っています。

石塚真一 『BLUE GIANT EXPLORER 2』
ヨーロッパからアメリカに渡った宮本大は、西海岸シアトルから南部へと足を踏み入れていきます。アメリカではジャズはもはや過去の音楽なのか?
世界一を目指す彼は過去の遺物なのか?

日本でも数少ないジャズファンに送る漫画です。是非一読を。

いくえみ綾 『ローズローズィローズフルバッド』
漫画家正子は少女漫画を描きたかったのに、おすもうに憧れるケーキ職人見習い「ファブ郎」でウケて17年。40歳になり、妹の直子と暮らしていましたが、妹が結婚するので一人暮らしになります。
少女漫画が描きたいという気持ちがだんだんと強くなり、編集者にも言うのですが…。
そんな時にたまたま喫茶店で隣あった男の子の父親でドラマ制作をしている鷹野に出会い、久々の胸キュンです。
甦るか少女漫画魂!?

波津彬子 『雨柳堂夢咄 18』
骨董店「雨柳堂」には様々な想いを持った品々が集まります。
主人の孫息子の蓮はその想いを感じ取れる不思議な力があります。
彼とその品々の想いが織りなすお話です。
不思議な魅力を持った漫画です。1991年から続く傑作です。

Cuvie 『絢爛たるグランドセーヌ 17』
イギリスのロイヤル・バレエ・スクールに入学した奏は、ロイヤルバレエ団の年末公演に「くるみ割り人形」のネズミ役で出演することになります。
学校の方では振付コンクールがあり、ルームメイトのキーラがエントリーし、奏たちが踊ることになるのですが…。

こんなにバレエ・スクールで学ぶ子たちは仲がいいのでしょうか?先生たちもいい人たちで、こんな学校で学べるといいですね。
奏がどんな風に成長するのか楽しみです。お勧めのバレエ漫画です。

水谷綠 『こころのナースの夜野さん 3』
今回のテーマは薬物依存症とDV、そしてコロナ禍での精神疾患を持った患者たちです。
患者に告られた夜野さんはどうするのかしら?

東元俊哉 『プラタナスの実 1』
ちょっとかわった小児科医・鈴懸真心。彼はおかっぱのYoutuber。「まこチャンネル」やってます。
川崎市立中央記念病院でアルバイトをしています。今日も様々な親と子がやってきます。
子どもが好きだけではやっていけない現場で、どう真心は親と子に向き合うのでしょうか。彼自身の親子関係も色々ありそうです。

ヤマシタトコモ 『違国日記 7』
おとうさんがどういう人だったかで悩む朝でしたが、軽音部に入り、新入生勧誘のために歌うことにします。彼女なりに少しずつ世界を広げています。
一方、男たちは「男社会の洗礼」に悩んだ過去を話し合います。
自分とは何か。解けない謎ですよね。

ひるなま 『末期ガンでも元気です 38歳エロ漫画家、大腸ガンになる』
著者が言っていますが、ステージ4と言われても末期ではありません。
無責任な人の書いた書籍やネットや知人からの情報は参考程度にして、かかりつけの医師や薬剤師の指示を最優先にするようにとのことです。
病気は人それぞれということですね。

いくえみさんの話がどう転ぶか、次回が楽しみです。


我家の犬たちは相変わらず元気です。
今日もかまってくれと五月蠅いです。


兄はソファーの上でお座りしています。写真を撮ろうとすると、いつものようにカメラから目をそむけます。毛がモジャモジャ~。次のトリミングは?

弟は持って来いで駆けずり回ります。
時間を見て切り上げないと、永遠に続きます。ハアハア言いながら、遊ぶのを諦めません。人間の40歳はこんなに走れませんわね、笑。


ソファにママが座っていると、兄を押しのけ膝に乗ってきます。
今日もカメラ目線の弟です、笑。

中山七里 『セイレーンの懺悔』2021/02/27



今回はマスコミの報道のあり方に挑んだ中山さんです。

帝都テレビの報道番組「アフタヌーンJAPAN」は不祥事が続いたことで、番組存続の危機にさらされていました。(『切り裂きジャックの告白』参照)
起死回生を図るため、配属二年目の朝倉多香美と先輩記者の里谷太一は特ダネを狙っていました。
そこに誘拐事件が起こります。誘拐されたのは十六歳の東良彩香。
報道協定が結ばれますが、何もしない訳ではありません。
里谷たちは警視庁捜査一課特殊犯係桐島班のエース・宮藤健次を張ることにします。宮藤を着けていき、辿り着いた先は、生コン廃工場。
そこで多香美は無残な姿で殺された綾香の遺体を目撃します。

次に宮藤を着けていくと、彩香の通学していた北葛飾高校に行きます。
多香美たちは下校時間に校門で綾香と同じクラスの子を探し、インタビューすることにします。
何十人にもあたり、空振り。しかしある女の子から、彩香がクラスの一部から苛められていた、彩香が亡くなった日に、彩香が彼らと一緒に学校を出るのを見たという証言を得、そのいじめっ子グループを追うことにします。
多香美たちの取材内容を見た編集長の兵頭は、裏が取れていないからと里谷が止めるのを聞かず、独自のシナリオを考え、報道することにします。
しかし放送後、警察が逮捕したのは全くの別人でした。
犯人誤報の咎を負った多香美は・・・。

ヒロインの多香美の妹はいじめを苦に自殺していました。警察も教育委員会も学校もいじめを否定し、多香美たち家族は泣き寝入りするしかありませんでした。
そのため多香美は「自分は報道という手段で世界の歪みを正したいのだ。朝倉多香美というジャーナリストの存在を世に知らしめたいのだ」という思いが強く、里谷が言うように、「安っぽい正義感の面をしたただの野次馬根性」に陥りがちです。
「報道の原点は客観性だ。絶えず中立的、絶えず客観的な視座さえあれば、どんな下衆なネタを取材してもニュース自体の品位が落ちることはない」と里谷は多香美に言いますが、彼女はわかっていないようです。
よく刑事物のドラマに出てくる思いのままに突っ走っていく典型的なタイプで、残念ながら最後まで共感できませんでした。

気になったのは、誤報された人たちのことです。今回は誤報された方も他の犯罪を犯していましたが、それは別のこととして、一般的なことを書きます。
マスコミって誤報を謝りませんよね。下手をすればその人は社会的に抹殺されてしまったり、人生が狂ってしまったりしているんですよ。
里谷がマスコミの仕事なんか「カスみたいなもんだ」で、マスコミは「ただの野次馬根性を社会的意義とかにすり替えて免罪符にしているだけの下衆の集まりだ」とか、「世の中で本当に取り返しのつかないのは、人の命を奪うことだけだ。それ以外の失敗は大抵挽回し、償うことができる。早々に諦めちまうのは、それこそ責任から逃げているようなものだ」とは言っても、所詮は自己弁護にしか過ぎないよなぁと思ってしまいます。
マスコミが何と言おうが、浮かばれないのは誤報された人たちですけどね。命はあっても取り返しのつかないことってあるでしょう。
俺たちは正義の側なのだから、少しぐらいの誤報は許せって感じですかね。

今までの中山さんの本の中で、一番心に響かなかった本でした。
夫もこの本を読んだのですが、多香美のことを私みたいに思わなかったようです。
感じ方も人それぞれですからね。
事件の方はドンデン返しがあり、現代の家族の悲しい現実が描かれていました。
マスコミに働く女のことよりも、そちらの方を深く書いてくれたらよかったのに。
あ、事件を追うイケメン刑事・宮藤もね、笑。

アン・クリーヴス 『空の幻像』2021/02/28

水の葬送』に続くペレス警部シリーズ。


友人のキャロラインの里帰り結婚式に参加するためにシェットランド諸島の最北端に位置するアンスト島にやってきたエレノアとポリーはそれぞれ夫と恋人を連れてきました。結婚式に参加するついでに休暇も楽しもうと思ったのです。

結婚式のパーティが終わり、休暇用のコテージ、スレッツに戻りくつろいでいると、エレノアが妙なことを言い出します。三人が散歩に行っている時に白い昔風のパーティ・ドレスを着て浜辺で踊っている女の子を見たというのです。
エレノアは36歳で、子どもを欲しがっていましたが流産をし、それ以来鬱気味で、夫の勧めでしばらく精神病院に入院していました。
エレノアの夫のイアンは彼女の作り話だと聞き流していましたが、実はポリーも波打ちぎわで踊る少女を見ていました。
その夜、ポリーたちはエレノアをテラスに残し、ベッドに入りました。
次の日の朝、エレノアは行方不明になっていました。

シェットランド署の警部・ジミー・ペレスのところに部下のサンディ・ウィルソンから電話が来ます。アンスト島でエレノア・ロングスタッフという女性がいなくなったというのです。
ペレスとサンディはフェリーを乗り継ぎアンスト島に向かいます。
エレノアはテレビ番組制作会社を経営しており、近頃は幽霊に関するドキュメンタリー番組を企画していたようです。アンスト島には”小さなリジー”の話があったので、”小さなリジー”の目撃者に話を聞こうとしていたようです。

捜索隊が島中を探し回り、やがてエレノアの携帯電話が作物の囲いの中に、そしてエレノアもスレッツの南に位置する岬で見つかります。
不審死として扱うことになり、病理医と北スコットランド警察の犯行現場検査官、そしてインヴァネス署の警部・ウィロー・リーヴズが呼ばれます。
ペレスはウィローの指揮の下、サンディとこの事件を捜査することになります。

ペレスは亡くなった恋人のことがまだ忘れられなくて、時々意識がどこかに行っています、笑。彼女に娘を託されて、頑張って育てています。
ロンドンなどの都会と違ってそんなに事件がないので、子どもを育てやすいでしょうね。
ウィローは変った経歴の女性で、ヒッピー共同体で育ちました。身なりには無頓着(チャリティ・ショップで買って、丈があうように裾をおろしたジーンズと肘に穴のあいた手編みのセーターを着てるんですよ)で髪はボサボサ。でもペレスには魅力的みたいです。
彼女もペレスに個人的な関心があるようで、これからシリーズが進むに従い、二人の関係も変化していくようです。

シェットランド諸島がどこにあるのかわかりますか?
地図を見るとスコットランドを通り越して北東にずっと行った先にありますね。
風が強くて寒そうですが、景色が綺麗そうです。
シェットランドシープドッグとかセーターが有名ですよね。(他には何があるのかしら?)
イギリスに旅行で行っても、遠くて行けそうにないですが、行くとのんびりできそうな島ですね。

島が魅力的なので、続けて読み進んでいこうと思えるシリーズです。


久しぶりにパパとママ、そして二匹でお散歩しました。


弟は嬉しいらしく、ハイになっています。
ママが遅れると、弟は足を踏ん張って、パパが行こうとするのを止めます。
いい奴です。


梅の花が盛りです。
今年は桜が早いとのこと。どこに花見に行けるかしら。
昨年のように早朝花見でもしましょうかね。