ほしおさなえ 『金継ぎの家 あたたかなしずくたち』2021/06/06

金継ぎとは、割れたり欠けたりした器を、漆を使って修復する伝統的な技法です。
今回はこの金継ぎにまつわるお話です。


高校二年生の真緒は五年前から祖母の千絵の住む大森の家に暮らしています。
両親は三歳の時に離婚しており、母はホテルのコンシェルジュの仕事をしています。
そろそろ進路を決めなければならない時期ですが、まだ真緒は何がやりたいのかわりません。

明日から春休みという時、千絵からなにをするつもりかと聞かれ、真緒は思いつきで千絵の金継ぎの仕事をして見たいと言ってみました。
千絵は承知し、その日から教えてくれました。

千絵によると、金継ぎは真緒のひいひいばあちゃんから教わったそうです。
千絵の母の実家は飛騨高山の漆器の店で、漆があったので、祖母はお得意様に頼まれ、繕っていたそうです。
漆の器は男の仕事で、千絵は器を塗ってみたかったのですが許されず、祖母から金継ぎを習ったのでした。

金継ぎの仕事は真緒に合っていたようで、千絵の手伝いは続いていました。
夏休みに入り、千絵が買い物に出たあと金継ぎの部屋を掃除していて、道具のはいった棚の引き出しを開けてみていると、漆のかんざしを見つけます。
千絵にかんざしのことを聞くと、知り合いの職人さんが作ったもので、売り物ではないということでした。
かんざしを見ながら、千絵は「もう一度、高山に行きたい」とつぶやきました。
この言葉を聞いた真緒は千絵を連れて高山に行くことを思いつきます。

高山では千絵の過去の記憶を辿ることになります。
そしてこの旅は漆を巡る旅へと続きます。

昔はなれなかったものにもなれる今の時代。
選択肢は沢山ありますが、それだからこそ迷うのでしょうね。

壊れてしまったものは元通りにはならないけれど、金継ぎをして修復することはできます。
人間関係も同じと思いたいですね。

金継ぎの仕事と漆に関して知らなかったことがわかるお話です。
漆は植えてから10年以上経たないと採取できないし、採取した後、枯れてしまうので伐採するそうです。とても手のかかることですね。
こういう伝統工芸は残して欲しいですね。
私が若かったら、職人として弟子入りしたいぐらいです。
向いてるかどうかはなんとも言えませんけど、笑。

他のほしおさんの本と同様にしみじみとした心暖まるお話です。
特にYA(ヤングアダルト:中高生世代)の方に読んでもらいたい本です。