あさのあつこ 『残陽の廓 闇医者おゑん秘録帖』2023/04/05

今回は二冊とは違い長編作品で、吉原に潜む謎を追って行きます。


産んではいけない子どもを孕んだ女たちを受け入れ、子堕ろしを行う「闇医者」のおゑんは新吉原美濃屋久五郎方の花魁、安芸の元へ月に一回手当をしに通っている。
そんなある日、美濃屋の主、久五郎と吉原の惣名主、川口屋平左衛門から話があると言われる。
川口屋の振袖新造、春駒を診てもらいたいと頼まれるのだが、おゑんの手当のかいもなく亡くなってしまう。
川口屋は、姿がふっと見えなくなり、倒れているのが見つかったときはすでに虫の息で、数日寝込んでそのまま亡くなってしまう、そういう女が春駒で三人目で、是非ともおゑんに助けてもらいたいと言う。
おゑんは引き受けることにし、遊女たちの命を次々と奪う病の正体を、美濃屋の用心棒、甲三郎とともに追う。

いつも思うのですが、武士とは一体何なのでしょうね。
大義のために死ぬことを厭わない。それが美学と言われると、そうですかとしか言いようがありませんけど…。
おゑんはきっぱりと言います。

「女は大義そのものに殉じたりはしないのだ」
「しぶとく生きる。生きることを諦めない。命に勝る大義も天命もないのだ」

おゑんさん、カッコいい。安芸じゃなくても惚れてしまいます、笑。

「悔いは杭(くい)だ」という言葉もいいです。

「悔いの気持ちってのは、杭ですよ。長いか短いか、太いか細いか、そりゃあ人それぞれでしょうがね。でも、杭なんです。人の気持ちに打ち込まれるんですよ。一度打ち込まれたら、なかなかぬけてくれなくてね。辛いものです」

江戸時代を生きる女の悲しい性(さが)を描いた作品です。
江戸時代に生きる男も女も辛いですねぇ。
それに比べれば、今の世の方がまだ生きやすいといえるのかは何とも言えませんけど。
とにかく何があっても生きていくことが大事だと思いました。

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