飯島夏樹 『ガンに生かされて』2007/08/08

『ガンに生かされて』とは重い題です。
著者の飯島夏樹さんのことは、この本にも触れてあるのですが、テレビのドキュメンタリー番組で知りました。
プロウィンドサーファーだった人が末期癌に冒されながらも、家族と共に頑張っているという姿が感動を呼びました。
その時にハワイに移住するということを言っていたように記憶しています。
その後、どうなったのか知りませんでしたが、本屋の文庫本の新刊の所にこの本があり、彼ら家族のその後を知りたいと思い、読み始めました。
癌患者が書いた本ではジャーナリストの千葉敦子さんの『死への準備日記』があります。
冷静な目で自らの死を見つめている千葉さんの強さが印象的でしたが、その孤独な姿は痛々しくも感じられました。
しかし『ガンに生かされて』では、千葉さんとは違い、家族と共に生きる飯島さんの姿が、病気であるにもかかわらず羨ましく感じられるのです。
飯島さんはこう書いています。

『なぜ、全ての病が癒されなければいけないのだろうか?なぜ、健康だけが幸せの源であるべきなのだろうか?病気の人は生き生きと輝くことは許されない、なぜ、そんな風潮があるのだろうか?
決してそんなことはないはずである。』

『我が家に、人に伝えられる言葉があるとしたら、次の言葉だろう。
「あなた方の悲しみは喜びに変わります」』

『二年半の肉腫との日々は、僕ら二人を一心同体にしてくれた。きっと子どもたちもそれを感じているのだろう。毎日とても嬉しそうだから。
夫婦にとって同じ土台があることがどれだけ素晴らしいか、それは今も毎日「生かされている」と知ることで感じられる。』

夫婦についての例えが載っていました。
最初は「殻付きの茹でタマゴ」で傷ひとつない綺麗な状態でも、「生きていくことは至難の連続である。
何の苦労もなく、タマゴの表面がつるつるで、綺麗なことなどありえない」「将来(新婚の)従兄弟たちが傷だらけのタマゴの表面を見て、ああこの傷はあの時苦労した時のものよね、これはあの時のと、二人で語りあえたらどんなに素晴らしいだろう。」
これが究極の夫婦の姿ですね。

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