乃南アサ 『風紋』2015/11/19



高校生の真裕子は4人家族。
母は平凡な専業主婦。
父は土日はゴルフで出かけ、その後に愛人のところへ行っている。
姉は二浪し、そのストレスからか家庭内暴力をふるい、母に当たっていた。

ある日、保護者会に行った母が帰ってこない。
真裕子は一人、淋しい思いをしながら母の帰るのを待っていた。
父も姉もその日は帰ってこなかった。
次の日、真裕子が警察に連絡をしようと言ったのに、父は母は黙って旅行にいったのだろうから、帰るまで待ちなさいと言う。

母の失踪から三日たち、母は車の中で死体となって発見された。
殺したのは姉の元担任で母は彼と関係を持っていた。

この時から真裕子の人生は変わっていく。

一方、加害者の家族も崩壊していった。
二人の子供は長崎にいる祖父母の元にあずけられ、妻の香織はだんだんと自暴自棄になっていった。

被害者と加害者。
どちらも深い瑕をおってしまうのが、こういう事件なのです。
1994年に出版されていた本ですが、今読んでも違和感のない、普遍性を持った内容の本です。

乃南さんの本は何冊か読んだのだけれど、この本ほど登場人物たちがどうなるのだろうと気になった本はありません。
事件から七年後を描いた『晩鐘』も読んだので、明日紹介します。