森晶麿 『かぜまち美術館の謎便り』2017/06/08



黒猫シリーズを書いた森さんの別の本を読んでみました。

過疎化が進む香瀬町に学芸員の佐久間と彼の娘のかえでがやってきました。
佐久間は町の美術館に館長として迎えられていました。
彼らが町に来てから、不思議なことが起こります。
18年前の消印のついたハガキが届いたのです。

18年前に、絵を描く少年が亡くなり、郵便局員が一人行方不明になっていました。

ハガキには少年の描いた絵が描いてありました。
ハガキの謎を解く鍵は少年が描き、亡くなる前に保育園の園長にあずけたパブロ・ピカソの≪パイプを持つ少年≫のオマージュでした。


佐久間は絵の中に込められた謎を次々と解いていきます。

佐久間と娘の会話がとってもほんわかしていていいのです。
子どもって発想が豊かですね。
そのほんわかさと悪意は全くそぐいませんが。

6つの物語の謎を解く鍵は少年の描いた絵のオマージュです。
第一話はピカソ、第二話はシャガールの≪私と村≫、第三話はミレーの≪種をまく人≫、第四話はマティスの≪ダンス≫、第五話はセザンヌの≪リンゴの籠のある静物≫、第六話はゴーギャンの≪我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか≫。
どういう風に描かれているのか、本を読んで想像してみるといいかもしれません。

絵の好きな人には謎解きがおもしろいでしょう。

佐久間の言葉を載せておきましょう。
「むしろ豊かな誤解を生むような絵こそが、真の芸術の名にも値すると言えるんじゃないでしょうかね」
「人にどう思われても構わない。大地に恥じない風として生きられれば」
「お年寄りと子供の違いって何でしょう?」「いちばんの違いは―過去を持っているかどうかです」
「年をとるにつれて・・・一度経験しているからこそできない我慢もあるのです」
「風もまた大地とつながっている」
「料理の発想も子供みたいに自由でなくてはいけないんですね」



風のように自由な犬。
うらやましいですわ。