瀬戸内寂聴 『いのち』2018/04/07



95歳になった瀬戸内さんが、自分の作家人生を振り返り、主に2人の女流作家との交流を描いた自伝的小説、というよりエッセイみたいなものです。

2人の女流作家とは、河野多恵子と大庭みな子です。
瀬戸内さんはもちろんのこと、この人たちの作品は何冊か読んでいます。
特に河野さんの特異な世界観には驚かされました。
すべて想像なのだと思っていたら、瀬戸内さんがバラしています。
河野さんは女児が嫌いで男児が好きなのですね。
旦那さんとサドマゾ関係のような感じがうかがえます。
人の性癖をどうこういえませんが、ちょっとびっくりしました。
性格的にも河野さんは変わった人のようです。
瀬戸内さんは何回も裏切られているのに、気がいいのでしょうね、お金を送って欲しいと言われれば送っちゃうのには驚きました。

その一方、大庭さんは旦那さんに愛され、女王みたいにかしずかれていて、うらやましいです。
でも、脳梗塞で倒れて半身不随になっても、旦那さんのために生き続けていかなければならないのは御免ですね。大庭さんはさぞ苦痛だったことでしょう。
瀬戸内さんは大庭さんの方を認めているようですが、彼女の作品をそれほど読んでいないので、私はなんとも言えませんが。

残念ですが、この本は瀬戸内さんの書いた本としては物足りないものでした。
同じ話がでてきたり、これは誰のことだとか読み返したりすることがありました。
やっぱり90歳を超えると仕方ないのでしょうね(もしくは連載だから?)。
『御宿かわせみ』を書いた平岩弓枝がひどかったのに比べると、まだいいですが。

テレビで見る瀬戸内さんのかわいらしいこと。
若い秘書さんをはべらせて、楽しく暮らしている様子が垣間見られます。
私もあんなおばあさんになりたいと思いますが、なれるかしら?