原田マハ 『奇跡の人』2018/10/25



「奇跡の人」というと、アン・サリヴァン先生とヘレン・ケラーですね。
彼女たちのことを書いたのかと思ったら、違いました。
舞台を日本の津軽、時代を明治二十年にしています。

9歳の時に渡米し、最高の教育を受けて日本に帰って来た弱視の女性・去場安は結婚の勧めを断り、伊藤博文の紹介で6歳の少女・介良れんの家庭教師となるため、津軽へと旅立ちます。
れんは目が見えず、耳が聞こえず、口もきけない少女で、手づかみで食事をし、排泄の躾もされず、暗い蔵に閉じ込められていました。
そんなれんを「気品と、知性と、尊厳を備えた『人間』になってもらうために」、安は根気よく導いていきます。
一番の障壁は身内でした。
れんが行儀よく、大人しくなればそれでいいという父親とれんをひたすら甘やかす母親、自らの結婚のことしか考えない兄。
彼らはれんの中にある可能性を認め、伸ばそうとはしないのです。
安の努力により花開き始めたれんの可能性はことごとく潰され、安の苦悩は深まるばかりでした。

日本独自の旅芸人やイタコなどを登場させ、日本的な味付けがされています。
安とれんの話が途中で飛んでしまったので、安の奮闘をもっと読んでみたいと思いました。
津軽三味線の名手とれんの関係が最初はわかりませんでしたが、最後には判明し、そこが感動物なのでしょうね。
悪くはない話でしたが、ヘレン・ケラーの自伝や映画、舞台を見ていない人の方がもっと感動できたでしょうね。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://coco.asablo.jp/blog/2018/10/25/8983745/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。