吉永南央 『月夜の羊 紅雲町珈琲屋こよみ』2021/11/07

「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズの第九弾。


コーヒー豆と和食器のお店「小蔵屋」を営む杉浦草は、道端で「たすけて」と書かれたメモを拾います。
誰が書いたのか気になった草はメモを取っておきました。

そんな頃、店に寄り道をしていた女子中学生が行方不明になったことを知ります。
彼女があのメモを書いたのかと心配になった草は警察に報せますが、少女はその後すぐに見つかります。家出して東京にいる父親に会いに行っていたようです。
彼女は変装が得意な子で、小蔵屋に来るときはメイクをして制服を着ていないので、大学生ぐらいに見えていたのでした。話しをすると意外と良い子です。

彼女がメモを書いたのではないなら、一体誰が書いたのか…。
草は気になってしょうがありません。

ある朝、草は昔もらった町内会の名簿と地図を持ち、近所の家を見て回りました。すると通販カタログや新聞が散乱し、玄関ドアに鍵を差したままの家を見かけます。
声をかけてから思い切って玄関を開けてみると、高齢の女性が倒れていて、微かに脈があります。救急車を呼び、これでお役目ごめんのはずだったのですが…。

小蔵屋の従業員の久美は一ノ瀬と同棲を始めます。
よく親が認めたなと思っていたら、言っていなかったんですね。
結婚しちゃえばいいと思うのですが、何故か久美は嫌みたいです。
山を辞めて会社員になった一ノ瀬ですが、山仲間がなかなか諦めてくれず、連絡を取ろうとしてきます。仲間の中に女性がいて、心がざわつく久美。
二人はこれから一山、二山、三山と超えなければならなさそうです。

このシリーズには毒があるので、読んだ後にザラッとした不快感が残ります。
生きていると、思った以上に様々な感情が行き交うもので、善人ばかりいるもんじゃないし、育った家庭にも色々と問題があり、それぞれの人が心の中に闇を抱えているものです。
読みながらトルストイの『アンナ・カレーニナ』の中の有名なことばを思い出しました。
「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである」

何故草は自分とは関係のない、親子のことに関わろうとするのか。
死んだ息子のことがあるからなのか。
そのうちにっちもさっちも行かなくなり、大変なことが起らなければいいのですが。

気になった言葉。
「子供は残酷だ。それに、その自分の残酷さに将来自分が必ず打ちのめされることを知らない」


また買ってしまった「アトリエうかい」のクッキー。



今回は大缶です。真ん中のイチゴのクッキーがちょっと酸っぱくって苦手です。

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