読んだ時代小説(文庫本)2023/12/26



横山起也 『編み物ざむらい 二 一つ目小僧騒動』
凸橋家から召し放たれ、浪人になり、家からも勘当された黒瀬感九郎は、悪党を懲らしめるという裏家業の「仕組み」を手伝ったことから、墨長屋敷に居候することとなる。
そんなある日、仕組みの仲間で、自分のことを「不老不死」であると宣っていた戯作者コキリが屋敷からいなくなる。
コキリのことを心配したジュノこと手妻師の能代寿之丞は屋敷の女主人・御前にコキリの居場所を調べてもらう。
コキリが武蔵国は五日市宿にある大旅籠「秋河屋」の離れにいることがわかり、感九郎とジュノはコキリに会いに旅に出るが、感九郎の許婚の真魚までもが旅について来てしまう。
果たして感九郎たちはコキリと会えるのか…?

前作では時代小説なのに、「悪いことが起きるのは全て自分のせいなのだ」という思いに囚われている自分について悩む感九郎が珍しく思ったのですが、今回は主にコキリの過去を知ることが主で普通の時代小説に近付いているのが残念です。
感九郎の異能が生かされていません。
次作は御前かジュノの過去が明かされるのかもしれませんね。

篠綾子 『龍の髭 小烏神社奇譚』
冬の日の朝、江戸湾に再び蜃気楼が現れる。
前回は鵺が蜃の力を使い蜃気楼を生み出し災いをもたらしたが、鵺は竜晴が退治したはず。その鵺が復活したのか?
同じ頃、刀の付喪神・小烏丸が姿を消す。
竜晴が気配を辿ると、蜃気楼と共に小烏丸の気配も消えた。
竜晴と泰山、そしてもう一柱の刀の付喪神・抜丸は小烏丸を探しに、蜃の吐き出す蜃気楼の世界、平家一門が栄華を誇っていた時代に行くが…。

今回は全盛期の平家の様子が描かれています。
竜晴も人だったということがわかって、少し安心しました。

五十嵐佳子 『凧あがれ 結実の産婆みならい帖』
時は慶応三年(1867年)。時代が変わっていくと共に治安も悪化してくる。
産婆として独り立ちし、父の弟子である源太郎と祝言をあげてから二年が経とうとしているが、結実の気持ちは落ち着かない。
彼女は人知れず、子が出来ないことに悩んでいた。
町火消しの栄吉と一緒になり、ふたりの子の母になったすずは、夜のお産や長くかかるお産に立ち会えないので、往診を中心に行っていて、結実の負担が増えていた。
そんな頃、結実はかつて手習いで一緒だったくらと再会する。彼女は火事で仕事を失い、彰義隊の隊員の子を宿しているという。

時代の波と戦いながら、どう生きていこうかと悩みつつも前進していく結実の姿がすがすがしいです。
江戸時代も令和の時代も同じ。女は仕事と家庭の両立で悩みが多いんです。
結実とすずに「頑張れ」とエールを送りたくなりました。

髙田在子 『まんぷく旅籠 朝日屋 とろとろ白玉の三方づくし』
<第一話:命の潮>
船宿を営んでいる権八郎と弟分の三人が、魚河岸の恵比寿屋で修業している利々蔵が何物かに痛めつけられ倒れていたのを見つけ、朝日屋に運んでくる。
一体誰にやられたのか、権八郎たちが調べるという。
<第二話:過去>
慎介の修業仲間、矢太朗の弟子、一平が朝日屋にやって来る。矢太郎は加賀で店を出して十年になる。三十年以上も前に、弟子を取ったら、慎介の店に修業に出すという約束をしていたのだ。一平は朝日屋に泊まりながら、連日、江戸の町へ繰り出し、帰ってくるとぷんぷんと酒の臭いがする。ちはるは一平が料理修業の旅を隠れ蓑にして遊び歩いているのではという疑念を抱く。
<第三話:天職>
この頃、仲居のおふさの様子がおかしい。怜治が聞いてみると、このまま仲居の仕事を続けていいものだろうか迷っている、自分の天職について考えているという。そんなおふさに怜治は火盗改時代のことを話し、辞めるなら、その前に一平の案内役を立派に務めろと告げる。怜治の意図は?
<第四話:朝影>
おふさの祖父、橘屋の彦兵衛が古希を迎え、家族そろって、朝日屋で祝いの膳を囲みたいという。祝い膳の参考に、ちはると慎介はおふさに彦兵衛の昔話を聞く。すると彼は昔はやんちゃで、山寺に預けられたことがあることがわかる。慎介は精進料理を参考にしようと思い、ちはるたちを天龍寺の慈照の教えを請いに行かせる。
ちはるは三世の祝い膳『三宝づくし』を考える。

だんだんとちはるが一人前の料理人に育ってきています。
おふさも迷いましたが、自分の進む道は仲居だと決めました。
いい感じになってきている朝日屋です。

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