ヘイリー・リンド 『贋作に明日はない』2012/02/05



第一作『贋作と共に去りぬ』に続くシリーズです。
贋作に関する薀蓄は全くと言っていいほどなくなりました。こういう作品に期待しても無駄でした。北森鴻さんは偉大です。

サンフランシスコの高級画廊のオープニングに招待された疑似塗装師のアニーは、金持ちの招待客と知り合いになって仕事を回してもらえればと思って参加したのに、オークの木にぶらさがっている死体を見つけてしまいます。
警察を待っている間にたまたま話をした女性には、アニーの父親の古い知り合いの彫刻家パスカルが盗んだ彫刻を取り返すようにと頼まれてしまいます。
ちょうど同じ頃、画廊の隣にあるブロック美術館で絵の盗難がありました。
盗難にあった絵の側にはアニーの友人、ブライアンがいました。興奮しやすいブライアンはパニックを起こしてしまい、警察に協力をしないため、犯人ではないかと疑われてしまい、アニーに助けを求めてきます。

画廊からの帰りにスタジオの前で車を止め、車のドアを閉めると、スタジオの鍵は助手席に・・・。仕方なく裏手の窓から入ろうとすると、警報装置が作動してしまいます。そのため避けていた大家のフランクに見つかり、絵画修復の仕事を依頼されます。フランクはいい男なので、彼に元贋作師だったことがバレてしまわないかと心配なアニーです。

次の日、パスカルを探しに彼の家に行くと、どうも中にいるようなのでドアの前で彼が出てくるのを待つことにします。協力を申し出た友達たちがやってきて、退屈まぎれにドアの前で酒盛りが始めってしまいます。天岩戸のようで楽しそうですが、普通はこんなことやりませんよね。

アニーが何かをやるたんびに騒動を起こすのが、このシリーズのお約束事。
最初の何ページかで、時間的には4~6時間でアニーは以上のようなことをやっています。
それでも前回よりアニーのパワーが落ちてきているように思います。なにしろ前回はクラッシャーでしたから。

今回はアニーのお母様まで登場。素敵な人なのですが、昔に男関係で何やらあったようです。
お爺ちゃんも変っていましたが、アニーの家族ってまともじゃなさそうです。
電話でしかお目にかかったことのないお爺ちゃんとアニーの二人でタッグを組み事件を解決しようなんてことをしたらどんなことが起こるのか、ちょっと怖いけれど、見て(読んで)みたい気もします。

一見無関係そうなことがうまくひとつに終息していき、大家のフランクからアニーは「確かに、きみはとてつもなく恐いな。だがどうやら、その恐さにそそられてきたようだ」と言われて、一応事件はうまく解決します。イケメン二人(フランクと前回登場の泥棒さんももちろん出てきます)とアニーの関係がどうなるのかしら。

本格的ミステリーではないですし、元贋作師の事件簿というわりにたいして贋作についての薀蓄も書いてありません。
ミステリー色のついたユーモア小説という感じの本です。
アニーにどれだけ親近感を抱くかによって好き嫌いが分かれるでしょうね。