岡井崇 『ノーフォールト』 ― 2017/07/17
現役の産婦人科医の書いた本です。
医師で本を書く人は結構いますが、自分の臨床の現場のことを描くことは勇気のいることだと思います。

大学病院に勤める産科医、柊奈智は当直の深夜、容態が急変した妊婦に緊急帝王切開を行い、胎児を救いました。
しかし、母親の方の出血がひどく、病棟医長の君島の助けを借り、無事に止血をしました。
その後、原因不明の出血が続き緊急手術をするのですが、奈智たちの必死の努力もむなしく、母親は死亡してしまいます。
この母親のことは奈智の心に重くのしかかります。
奈智は卒後5年目、患者の信頼も厚い産科医でしたが、シングルマザーで子供を自分の母親にあずけながら働いており、毎日の過重労働で疲れ切っていました。
医師としての仕事を何とか継続していた奈智でしたが、遺族に名指しの訴訟を起こされます。
遺族に信頼されていたと思っていたのに、そうじゃなかったのか・・・。
思い悩む奈智。
そんな彼女に追い打ちをかけるような心無い弁護士からの罵声に、ついに奈智は追い詰めら、精神的に不安定になってしまいます。
奈智たちに過失があったのか。
裁判で争われることになりますが・・・。
この本は2007年に書かれています。
産婦人科医になる医師が減少しているとの報道があって、あれから何年も経っていますが、現状はどうなのでしょうか。
近所でお産をしたいという妊婦たちの望みはかなっているのでしょうか。
実は私の祖母は助産婦でした。
何千人もの赤ちゃんを取り上げていました。
今は亡くなりましたが、話を聞いておけばよかったと今更ながら思います。
この本を読んで、現代医学は万能ではないということを再認識しました。
昔よりもお産で亡くなる人が減ってはいるけれど、常にリスクがあるということを肝に銘じておかなくてはならないと思います。
どの医師も全力を尽くして患者を救おうとしている(と思いたい)ことは理解しておりますが。
最後の手紙はちょっといらなかったかな。
誰だ、これはと思ってしまいました(笑)。
真面目な本の後は笑っていただきましょう。
スヌーピー小屋でひっくり返る兄犬です。

何故か頭が出ています(笑)。
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