桜木紫乃 『家族じまい』2020/08/04



美容室でパートで働いている智代は、子供が独立し、今は夫の啓介と二人暮らし。
ある日、妹から電話がきます。
母のサトミがボケちゃったみたいだというのです。
智代は長年両親とは会っていませんでした。
父は元理容師で、理髪店経営よりも副業の方に熱心で、何度か騙されていました。
懲りずにリゾートホテル計画に手を出し、理髪店を手放さなければならなくなりました。
智代を自分の跡取りにするため、高校へはやらず、仕込んでいたのですが、それも無駄になりました。
そのことがあってから、智代は啓介と駆け落ち同然に結婚し、父親からは距離を取っていたのです。
どう親と関わればいいのか、戸惑うばかりです。

妹の理乃は親の目が姉にばかり向いていたのを面白くなく思っていました。
しかし、母がボケたのをきっかけに二世帯住宅で一緒に暮せることになり、やっと親に選ばれたと思ったのですが・・・。
父は年を取っても変わっていませんでした。

この智代と理乃の姉妹と父母の関係を、家族や周囲の人の視点から描いています。

家族には色々な形があり、一見幸せそうに見えても、どうかわかりません。
どの家族もそれなりの問題を宿しています。
表面に出ていなかった問題が親の介護を巡って現れる場合があります。
長年積もった恨みを吐き出す人もいれば、しょうがないと諦めて、子の責任を果たそうとする人もいるでしょう。
いいとか悪いとか言えるものじゃないです。
でも、最後に悔いが残らない終わり方がいいような気がします。
親との関係って近いからこそこじれるとなかなかやっかいなものですものね。

まだ両親が生きている50代の方が読むと、身に染みる内容でしょう。
自分の老い先をも考えさせられます。
お勧めの本です。