宮部みゆき 『希望荘』2017/08/29



「杉村三郎シリーズ」の第4弾。中編4話。

妻の不倫で離婚し義父の経営する今多コンツェルンも辞めた杉村は、父親が重篤な病気に罹りホスピスに入ったことを聞き、故郷の山梨に戻ります。
父が亡くなるまで山梨で仕事をし、たまたま知り合いになった<オフィス蛎殻>のオーナー蛎殻昴に勧められ、心機一転、フリーの探偵をすることにします。
北区の親切な地主の竹中さんのおかげで、探偵事務所にすることのできる部屋も借りることができ、<オフィス蛎殻>からの調査依頼があるため、なんとか細々と暮らしていけています。
その上、元職場のビル内にあった喫茶店「睡蓮」のマスターが、店舗の賃貸契約更新を機に杉村の近所に引っ越してきて、喫茶店<侘助>を開店しました。
絶品のホットサンドが食べられます。

彼のところにやってきた仕事とはというと、死んだはずの女性の幽霊を見たという話(「聖域」)、亡き父が生前に残した「昔、人を殺した」という言葉の真偽調査(「希望荘」)、美味しい蕎麦屋をやっていた男が不倫の末に女と失踪事件(「砂男」)、そして<カジュアルアンティークAKIMI>のオーナーの行方捜し(「二重身」)です。

どの話もすっきりとはいきません。
絶対的な悪があるならいいのですが、たまたま<憑きものみたいなもの>(「希望荘」)に囚われてやっていまうということもありますから。
それが人間の性でしょうか。