北森 鴻 『桜宵』2010/12/06

根津神社の横にある駒込稲荷の紅葉が綺麗でした。


右にいるおばさんは神社のお掃除の人かと思ったら、銀杏を拾っているようでした。


今年は紅葉の当たり年なのでしょうか?
何処に行っても紅葉が綺麗なようです。



『桜宵』は旗師の陶子の話ではなく、三軒茶屋にあるビアバー、≪香菜里屋≫を舞台とした短編集です。
マスターは工藤哲也という不思議な人。というのも彼の推理が毎回的を得ているのです。

≪香菜里屋≫はアルコール度数の違うビール4種類と数種類のワールドビール、そして工藤の作る創作料理が売りの店です。
なんとなく居心地のいいお店で、お馴染みさんがたくさんいます。

「十五周年」
タクシー運転手の日浦が故郷を後にして早5年。
偶然に出会った知り合いの女性に、居酒屋千石の十五周年パーティをやるから来てほしいと言われ、久しぶりに故郷の町に帰ります。
しかし、行ってみると居酒屋のお客は来ていなくて、火事で焼けてしまった小料理屋万鉄のお馴染みさんばかりいます。
何故自分が招かれたのか、日浦は不思議に思います。
そして、ひょんなことから万鉄の放火犯を探し始めるのでした・・・。

「桜宵」
神崎守衛は亡き妻の遺書を見つけました。
その中には「最後のプレゼント」をあげたいから≪香菜里屋≫へ行くようにと書いてありました。
そのプレゼントとは・・・。

「犬のお告げ」
ある会社では、リストラする人を選ぶため、候補者をホームパーティに招き、愛犬が噛んだ人にするという噂がありました。
この噂は本当でしょうか?

「旅人の真実」
金色のカクテルを探す男が≪香菜里屋≫に現れ、捨て台詞を吐いて去っていきました。
工藤はその男に友人のバーマン、香月圭吾の店を紹介します。
この男は香月の店にも行ったようですが、同じように捨て台詞を言い、帰って行ったようです。
しかし、彼はその後殺害されてしまいます。
何故彼は金色のカクテルを探していたのでしょうか?

「約束」
「桜宵」の日浦が故郷で結婚し、居酒屋をしています。
そこへ≪香菜里屋≫のマスターの工藤が休みを利用して遊びに来ます。
しかし、店が忙しくなり、工藤は手伝うことになります。
店を閉めようとすると、わけありの男女がやってきます。
彼らは10年ぶりに会うようです。
女は男に、あなたが不幸になればなるだけ、自分は幸せになった。
そして、今、自分が不幸になったのは、あなたが幸せになったからだと言います。
女は一体どういうつもりで男に会いにやってきたのでしょうか。


≪香菜里屋≫のマスターには何やら隠れた過去がありそうです。
とにかく彼は人の行動の裏を見るのが上手く、推理を働かせて、すべての謎を解きあかします。

その謎解きがいいのですが、でも、食いしん坊の私には彼の作る料理がより魅力的です。
例えば、春巻き。

「外側の皮は生湯葉。中身は松茸。鱧の千切り、三つ葉のみじん切り。春雨の代わりにくずきり。横に添えられた気泡には鰹節、昆布の濃厚な味が。土瓶蒸しそのものを生湯葉に詰め合わせた」もの。

う~ん、美味しそう。
 
海外ミステリーだけが美味しいのではないのですね。
このシリーズ、もっと読みたいものです。