長岡弘樹 『教場0 刑事指導官・風間公親』2017/10/12



警察学校の鬼教官、風間の過去の話というので、彼が刑事だった時の活躍が読めるのかと思い本を開くと・・・違いました。
風間は教官になる前は現場で見込みのありそうな新米刑事を1対1で指導していたのです。
名付けて「風間道場」。
現場を見て、彼はすぐにすべてを理解し、新米刑事に謎かけのような言葉を与え、解いてみろと迫ります。
解けないのなら交番勤務に戻れとか言っちゃって、プレッシャーをかけます。
新米刑事たちは選ばれただけあって、なんとか風間の期待に応えていきます。

風間に鍛えられた刑事たちがどんな刑事に成長したのか、続篇があるのかもしれませんが、風間の方にもっと興味のある私は、風間が現場の刑事だった時の話を読んでみたいです。
長岡さん、よろしく。

『教場』や『教場2』のような物を期待した人はがっかりすることになると思うので、気をつけて読んでくださいね(笑)。

桜木紫乃 『砂上』2017/10/13



桜木さんの描く北海道の風景と、どうしようもない女が好きです。
今回は今までとは少し違う内容です。

北海道江別に住む柊令央は、元夫からの慰謝料の5万円とビストロのパートで生計を立てていました。
彼女の夢はいつか作家になること。
40歳になるというのにその夢を捨てきれず、色々な文学賞に原稿を送っていました。

ある日、元夫から呼び出され、子どもができるので、これから2万円しか送れないと言われます。
どうやって暮らして行こうかと行く末を思う令央。
そんな彼女の元にある出版社の編集者と名乗る女、小川乙三がやってきます。
彼女の言う言葉のひとつひとつが令央の心をえぐります。
令央は彼女に導かれ、何かにとりつかれた様に何回も何回も推敲を重ね、自分と自分の母のことを描き上げていくのでした。

真の小説家とは書かずにはいられない人のことなのでしょうね。
一人の孤独な書くこと以外に何のとりえもないどうしようもない女が小説家になるまでのお話です。

この頃読んだ漫画2017/10/14




二ノ宮知子 『七つ屋志のぶの宝石匣』
『のだめカンタービレ』を書いた二ノ宮さんの作品です。
志のぶは銀座にある質屋・倉田屋の娘。
彼女には宝石を見るとその石の「気」を感じるというとんでもない能力を持っています。
そんな彼女には質流れした婚約者・北上顕定がいます。
彼はフランスの高級ジュエリー店で働いているイケメン。
彼が倉田屋に現れると、女のお客がさっとうして売り上げが倍増。
実は彼の実家は名家なのですが、一家離散。祖母に質屋にあずけられたのです。
彼は自分の家にあったという鳥が舞う赤い宝石を探していました。

五巻まで出ています。
顕定の真のねらいと共に志のぶとどうなるのかが楽しみな作品です。

羽海野チカ 『三月のライオン 13』
今流行の将棋を扱っていますが、なかなか主人公の桐山雫君が活躍してくれないというところが残念です。
このままでいくと、50巻目になっても雫君は今のままかしら?

よしながふみ 『きのう何食べた?』
とうとう主人公の二人が50歳になってしまいました。
それでも年を感じさせない二人です。
もう二人は老いてどちらかが亡くなるまで一緒にいますね。
美味しそうなご飯をマネしたいと思うのですが、量が少なく(家には大食らいがいるのよ・笑)、家には向いてないようです。

内田春菊 『がんまんが~わたしたちは大病している~その1・その2』
内田さん、大腸がんを患っているんですね。
知りませんでした。
糖質ダイエットをしている時に見つかったようで、淡々と描いてあります。
これからどういう治療をしていくのでしょうか・・・。



家の犬たちは元気です。
兄犬は散歩というと、嬉しくてたまらないという表情をします。
弟はちょっとしいたげられているので、こんな卑屈な表情をすることがあります。
人間も犬も一緒に育っても個性がありますから、個性に合わせて育てるのも難しいものがありますね。

中嶋博行 『検察捜査』2017/10/15



刑事物ではなくて、検事物を読んでみました。
今まで読んだ検事物とはちょっと違います。
ヒロインが横浜地検の検察官、岩崎紀美子。
検事になって2年目の美人で鼻っぱしの強い女性です。

大物弁護士、西垣文雄が自宅で殺されていました。
拷問を受けたのか、悲惨な殺され方でした。
たまたま仕事がなかった紀美子が担当になります。
恨みの線から西垣の手がけた案件を調べていくと、産廃処理業者の社長の自殺事件に行きあたります。
この事件の背後には弁護士会の内紛や権力闘争が関係しているようでしたが・・・。

検察官になる人が減っていると書いてありましたが、今はどうなんでしょうね。
法曹会の闇って深いのでしょうか?
女性が少ない職場では出る杭は打たれるというのは検察官でも同じなのですね。
それにしても上司があまりにもひど過ぎです。

ミステリとして読むと物足りないけど、作者は現役弁護士で、この作品で1994年に江戸川乱歩賞を取っているようです。


ボールが好きです2017/10/16

ボールが大好きな弟犬です。
雨で散歩に行けず、不満があるらしいので、遊んであげました。


そうすると、ボールを咥えて離さなくなりました。


ホント、面倒な犬です。
兄犬はボールでは遊ばず、ママとサシで遊びます。

中嶋博行 『新検察捜査』2017/10/17



『検察捜査』の続きの本です。
『検察捜査』を書いてから14年も経っているのですね。

なんとまあ、検事・岩崎美紀子はFBIで研修を受け、36歳、バツ1になっており、4歳の娘までいました。
彼女が横浜地裁で任された事件は2つ。
女性を殺し、心臓を取り出し、スライスして食べたという少年、『ソウルガード』が司法入院した後のフォローと、診療点数の水増しをしていた大塚という医師が法廷で頭をぶち抜かれて殺された事件でした。
この2つの事件は全く関係がなさそうだったのですが・・・。

司法試験は難しい試験として有名ですが、合格者を水増ししているんですか。
確たる合格の基準があるんだとばかり思っていました。
歯科医と同じように弁護士が溢れてしまいそうですね。
弁護士は使命感のある人がなるんだとばかり思っていましたけど。

美紀子が相変わらずの美貌と行動力で巨大な悪に迫ります。
相棒が神奈川県警の郡司刑事。
彼は『検察捜査』にもでてきています。

最後はアメリカ映画みたいな大仕掛けです。
前作よりパワーアップ。
シリーズにして続けて書いてもらいたいですね。



ランチに食べたのが、黄色いオムレツ。
カボチャの黄色は元気の出る色です。

福田和代 『星星の火』2017/10/19



警視庁保安課の上月千里は堅物の刑事。
その友、警視庁通訳センターで中国語の通訳捜査官をしている城正臣は上月とは全く正反対の型破りな性格。
城は結婚して子供がいますが、美貌の妻がどこかに行ってしまったので、一人で子供を育てるために刑事を辞め、通訳捜査官となっていました。
彼の中国語は完璧で、中国人と間違われるほど。
元刑事なので勝手に自分のいいたいことを絡めて通訳をしてしまいますが、それもご愛嬌(?)。
上月にとっては頼りになる通訳なのです。

違法パチスロ店を摘発するために、通訳として城を連れ、上月は池袋の雑居ビルに向かいました。
容疑者の中国人を捕えようとすると、違法なピストルで上月は撃たれそうになります。
取り調べると、「竜生九子」という中国人組織の存在が明らかになり、城は中国人のコネを使い捜査を始めます。

その頃、家を出ていた城の妻、凜子が突然帰ってきます。
彼女は何かトラブルが起こると城に解決を迫るという悪い癖がありました。
今度は勤めている美容院に嫌がらせがあり迷惑している上に、凜子が何者かに付けられているというのです。
城が調べ始めると、何者かに目の前で凜子と娘が拉致されてしまいます。
城は一人で凜子たちを探そうとしますが・・・。

来日する中国人が増えていくと、古くからいる中国人との間で世代間のギャップがありそうですね。
そういえば今までなかったのに、この頃、中華街でごみ捨てのトラブルがあるとニュースで伝えられていました。
日本人といい関係を築いてきたのに、ニューカマーによってその関係が崩れるというのは誠に残念です。

中国人社会の暗闇が余すところなく書かれているのはよかったのですが、途中から失速してしまいました。
なんか残念。
続篇では上月と城コンビがもっと活躍していて欲しいし、城と凜子の関係がよくわからなかったので、そこをもっと書いていてもらいたいものです。

太田愛 『幻夏』2017/10/21



この本の前に『犯罪者』があり、後に『天上の葦』が続くようです。
『幻夏』から読んでも差しさわりがありませんが、人間関係がわかりずらいかも。
『犯罪者』で何があったかわかってから読んだ方がいいかもしれませんね。

23年前、川岸にランドセルを置いたまま親友がいなくなった。
23年後、少年は半端物の刑事になっていた。

しがない興信所を経営している鑓水は息子を探して欲しいという依頼を受ける。
家に行くと母親らしき女性がいて、鑓水に300万と家の鍵を渡し、23年前にいなくなった息子を探してくれと言って去っていった。
鑓水は部下の修司を使い、23年前を調べていく。

同じ頃、少女が連れ去られた。
所轄の交通課にいる相馬は後方支援として駆り出される。
相馬は少女が連れ去られた現場から23年前、親友が最後に目撃された河岸にあった流木に掘られていた、同じ印を発見する。

少女の連れ去り事件と23年前の少年失踪事件は何か繋がりがあるのか。
相馬は一人、捜査を続けていくが・・・。

扱っているのは「冤罪」と「復讐」です。
是非、読んでみてください。お勧めです。

太田愛 『犯罪者』2017/10/23



太田さんの『幻夏』がおもしろかったので、『幻夏』の前に出ていた『犯罪者』を読んでみました。
kindleで読んだので厚さはわからないのですが、全く長さを感じさせない本でした。

たった一回しか会ったことのない女の子に呼び出されて、駅前で彼女を待っていた修司は通り魔事件に巻き込まれてしまいます。
4人が殺され、修司、たった一人が生き残りました。
病院で不思議な男に会います。
彼は修司に後、10日間生き延びろと言って去っていきました。
病院を抜け出した修司は刑事の相馬に助けられ、彼の友人の鑓水に預けられます。
相馬は死亡して見つかった男が通り魔だとは思えず、鑓水と修司の助けを借りて捜査を始めます。

一見無差別に殺されたかのような犠牲者たちでしたが、その陰に恐るべき犯罪が隠されていたのです。

これ以上書くと、読む楽しみが減ってしまうので書きません。
是非、お手に取って読んでください。
次から次と、判明する謎にわくわくしながら読み進んでいけます。
太田さんは「相棒」などの脚本家だそうで、言われてみるとテレビや映画など映像向きの話かもしれませんね。
最後に悪に勝つというような勧善懲悪の話ではなくて、そこが妙にリアルっぽくてよかったです。
この本は2012年に出版されていたようですが、私は見逃していたようです。
三作目の『天上の葦』は必ず読もうと思います。

大倉崇裕 『オチケン!』2017/10/25



落語は嫌いじゃあないです。
大分前に寄席に何回か行ったことがあります。
ある時、桂歌丸を聞き行ったら、何故か来なくて、ガッカリしたのを覚えています。
あの頃は寄席もがら空きでしたが、今はどうなんでしょうね。

大学に入学して早々、落語研究会に無理やり入部させられてしまった越智健一。
名前がオチケンだからなんちゃって(笑)。

3人部員がいないと、オチケンは部室をもらえないんだって。
越智が入らないと、部員はたったの2人。
入るのや~めた、と言いたいのに、そして授業にも出たいのに、何故か先輩の中村と岸に懐柔されてしまう越智。
嫌と言えない性格なのね。
その性格のおかげでオチケンの部室を狙っている他の研究会からにらまれて大変です。

一応この本、ミステリーらいしですが、たいした謎はないです。
優柔不断の越智君がどんな騒動に巻き込まれるのかがおもしろいだけです。
先輩の中村と岸の二人の方が謎めいてますわ。
心配なのは授業にもでない越智君が卒業できるのかどうかです。
友達を早く作っとかないと、単位修得の極意がわからないわよ。
頑張れ、オチケン!

一応でてくる落語の一つは初心者用の「寿限無」です。
落語の入門書になる・・・かな?