西條奈加 『婿どの相逢席』2021/08/03



小さな楊枝屋の四男坊・鈴之助は、大店の仕出屋『逢見屋』の長女・千瀬に見初められ、『逢見屋』へ婿入りすることになります。
男ながら玉の輿などと揶揄されていますが。
この時代、長男以外の男子は長男が死んだ時のスペアぐらいにしか思われていなくて、可哀想ですね。

さて、鈴之助はというと、千瀬とは相思相愛で楽しい毎日と言いたいところですが、嫁に入ったのと同じですからそうは問屋が卸しません。
祝言の次の日、申し渡されたのが、婿がすべきなのは跡取りを作ることだけで後は何もするな、ですから。
『逢見屋』は代々、女が家を継ぎ、女将として店を差配してきたそうです。
ようするに初代逢見屋は遣り手で、油や雑穀、飛脚の問屋を次々と成功させ、その儲けで仕出屋を始めたのですが、二代と三代が継いだ二十年の間に問屋がすべて潰れ、唯一妻の女将がまわしていた仕出屋だけが残ったというのです。
そんなの聞いていないよぉ~、と思う鈴之助ですが、千瀬は鈴之助に、「私は鈴さんの才を高くかっている」と言います。
鈴之助の才とは、「人の気持ちを和らげて、その懐にするりと入っていく」ことだそうです。

鈴之助は腐らず、逢見屋で自分のできることを一生懸命やっていき、逢見屋の忌まわしい呪いを解いていきます。

なるほどと思った言葉があります。

「あたりまえこそが、もっとも恐ろしい敵となり得る。
 外れたとたん、白い眼を向けられ、容赦なく石をぶつけられる。丸く描かれた円     から、尖った切っ先が突き出したり、円からとび出せば、はぐれ者の烙印を押される。
 世間の識から逸脱し、それでも後ろ指をさされまいとするなら、己を厳しく律し、後々の不安の芽は、すべて摘み取らなくてはならない」

男が継ぐのがあたりまえの時代に女が継ぐということがどれだけ大変なことか。
そのために取捨選択してきたものがあり、それが後に災いをもたらすこともあるのです。

新聞の連載小説を一冊にしたようです。
西條さんらしいほっこりとした後味の残るお話です。


今週のおやつ。
マドモアゼルCのクッキーです。二度目の購入。


紙包みがピンクで可愛いのですが、缶は白一色なので、何にでも使えます。
でも薄いピンクにすると、もっといいかもしれませんね。

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