「奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ」を観る ― 2021/09/06
2014年の実話に基づくフランス映画。

始めからびっくりしました。
卒業したイスラム教徒の女の子が卒業証明書をもらいに学校に来たら、スカーフをしているので、スカーフを取らないと証明書は渡せないと事務員も校長も言うんです。
女の子は私は三年間我慢した、もう卒業したのだから、信仰のために従わないと言うんですが、規則だからと頑として受け付けないのです。
日本の学校なら、こういうことはないですよね。
他の国から来た子が信仰のためにスカーフを被らなければならないと言われたら、許可しますよね。
まあ大方日本人は宗教に興味がないですから、寛容ですよね。
フランスの公立学校では宗教教育は禁止されていますし、2004年にはビジャーブ(スカーフ)禁止の法律が制定され、2011年には公共の場で顔を覆うものを着用することを禁止する法律が施行されたそうです。(この法律は欧州全体に広がっているようです。イスラム教徒に対する色々なことがあるのでしょうけど…)
どうも顔を覆うと表情などがわからないことが嫌なのかもしれませんね。
マスクをしたくない人が多いのもこのためかも。
日本人にはわからない感覚ですね。
パリ校外のレオン・ブルム高校で歴史と地理を教える、教師歴20年のアンヌ・ゲゲンは新学期から落ちこぼれ学級を担当することになる。
生徒の国籍や人種、民族、文化的宗教的な背景は様々。
イヤフォンやスカーフ、帽子をとりなさい、鞄を机の上からどけなさいなどと注意することから授業が始まる。
そんな生徒たちにゲゲン先生は私はつまらない授業はしないと宣言する。
(私が生徒だったら、何をこのおばはんは大口叩いてんだと思いますわ)
授業では宗教画らしきものを見せ、生徒に気づいたことを自由に発言させてから、絵の中に潜むプロパガンダ的な面や異なる歴史認識等を教えていく。
毅然とした態度のゲゲン先生は生徒の気持ちを掴んだようで、彼女の母親が亡くなり、代わりの先生がやって来た時の生徒の態度はひどいものだった。
子どもというのは残酷なもので、敏感に自分たちが生き残るために必要な人を見分け、その人には媚び、どうでもいい人にはひどい態度を取るものだ。
生徒たちは代わりの先生の話を全く聞かず、悪ふざけをして大騒ぎをする。
他の授業でも、例えば数学の授業では、マネキュアは塗るわ、寝るわ、おしゃべりをするわ、痴話げんかを始めるわと好き勝手な行動をしている。
こんな生徒たちは、もちろん、学校では問題になっている。
そこでゲゲン先生はクラスにある提案をする。
国が開催するレジスタンス運動と強制収容を扱うコンクールに参加するということを。
生徒たちは反対する。
でもゲゲン先生はひるまない。そんなことは織り込み済み。
「文句ばかりいうのは笑われるのが怖いから、自分に自信がないからでしょう。二カ国語クラスなら喜んでやるわよ」と生徒たちの自尊心をくすぐる。
さて、このクラス、紆余曲折はあるが、どうなっていくのか。
映画の中で実際のアウシュビッツの生存者が実体験を話しています。
残念ながら映画撮影の後にお亡くなりになったそうです。
彼が映画の中で語っていた言葉を記しておきます。
「命と尊厳は戦って守らねばなりません。重要なのは人種差別と永遠に戦い続けることです。収容所にいた期間で友情の大切さと結束の重要さを学びました。私は神ではなく人間を信じています」
日本でもそうですが、戦争体験者が次々と亡くなり、次の世代に語り継ぐ人が少なくなっています。かれらの記録を残し、どうそれを活用していくのかを考えていかなければならないですね。
私が習った日本史は江戸時代の途中まででしたが、明治時代以降の歴史、特に第二次世界大戦前後の歴史を学びたかったと今更ながら思います。
今はどうなのでしょね。
映画では一人の教師が生徒たちを変えていきます。教育にはこういう力があるのです。
特に学校の先生たちに観てもらいたい映画です。
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