原田ひ香 『喫茶おじさん』 ― 2023/11/29

57歳の松尾純一郎はバツイチで、再婚した妻は娘と暮らすといって出ていき、離婚はまだしていないが、一人暮らしだ。
実は妻の反対を押し切り大手ゼネコンを早期退職し、退職金の一部を使い喫茶店を始めたが半年で潰していた。
現在無職で、知り合いの口利きでどこかの会社に勤めようと考えている。
そんな彼の楽しみは出かけた先の純喫茶巡り。
東銀座、新橋、学芸大学、上野、渋谷、池袋…。
ネットで調べてコーヒーとその店の看板メニューをオーダーして食べるのが至福の楽しみ。
こんな彼にみんなは言う。
「あなたは相変わらず、何もわかっていない人なんですねぇ」(妻)
「お父さんって、本当に何もわかってない」(娘)
「お前は本当に、何もわかってないんだなぁ」(友人)
こう言われても、ピンとこない純一郎。
こんな彼が最後に行き着いたのは…。
世の中のお父さんの悲哀と無神経さを併せ持った純一郎の胃袋の強さに感心しました、笑。
嫌なことや挫けることがあっても、喫茶店に入って美味しいコーヒーを飲み、食事をするとすべて忘れてしまえる。
そういう彼の神経の太さが周りの人にはうらやましくもあり、腹立たしくもありなんでしょうね。
すごいんですよ。ある日なんか銀座の喫茶店に入り、ブレンドとタマゴサンドを食べた後にキッシュとケーキのセット、和栗のタルトを食べるんです。
別の日なんか赤羽でモーニングのバタートーストとコーヒーを食べた後で、またモーニングの厚切りトーストとアイスコーヒーを食べ、老舗のフルーツパーラーでフルーツサンドとホットコーヒーですから。
57歳の男性ってこんなにパンとかスイーツを食べられるものなの?
それに無職なのに、金銭感覚もおかしいです。
「安い、安い」と言いながら、一日に喫茶店2~3軒を回り、2000円から3000円程度使い、ある日なんかとんでもない散財をしています。
東京駅の某デパート内珈琲店でビーフカツサンドとコーヒーを食べたというのに、その後に駅中の某和菓子屋の喫茶店であんみつとコーヒーまで食べるのですから。
一体いくらになるの?
物好きな私はついついメニューを探し、計算してしまいました。
もったいないと思うのは私だけ?
こういう金銭感覚に疎いところが、喫茶店を潰し、奥さんに三行半を出させてしまうのかもね。
読みながらどこの喫茶店か調べて行きたくなりました。
赤羽のプチモンドのフルーツサンドや新橋のカフェテラスポンヌフのナポリタンが食べたいです。
ナポリタンの作り方が書いてありましたが、どなたか作った感想を教えて下さい。
美味しいのなら作ってみるかも。
原田さんは食べ物の描写が本当に上手いですね。
退職して悠々自適な生活なら、こんなのほほんおじさんがいてもいいかなと思いますが、真面目な方が読むと、イラッとくるかも、笑。
松尾さんのことは棚にあげておいて、純喫茶巡りを楽しみましょう。
<今日のわんこ>

久しぶりに兄がやる気になりました。
弟のサンタさんを奪い取り、取ってみろです。
弟はしばらく経つと兄が怖くてサンタさんをあきらめました。
いつもは兄を押しのけるのですけどね。

神社のイチョウも色づきましたが、散りそうです。
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