香山リカ 『61歳で大学教授やめて、北海道で「へき地のお医者さん」はじめました』 ― 2024/07/01

香山リカさんというと精神科医でマスコミによく取り上げられていた人ですよね。
なんであれほどマスコミに登場していたのか?
この頃、メディァに出ていないなと思っていたら、北海道でへき地(むかわ町国民健康保険穂別診療所)の医者をしていると知り、どうしてなのか興味を持ったので、この本を読んでみました。
知らなかったのですが、リカさんは北海道の小樽出身だったのですね。
父親は医師でしたが、娘を医師にさせる気は一切なかったようです。
東京の高校に通うために上京し、一浪して医大に入学。
特に医師になりたかったというわけではなく、東大に落ちたけど、医大に受かっていたので…という感じのようです。
もともとは科学好きで、小学生の時に読んだ本が『少年少女科学名著全集』。
中学では古生物学や天文学に興味を持っていたそうです。
大学時代にポストモダン文化に出会い、「香山リカ」の筆名でコラムやエッセイを書いていました。
ここからして、ちょっと普通とは違う感じですね。
詳しくは本を読んでね。
なんでへき地の医者になろうと思ったのかというと、2016年に偶然、地域医療の最前線で働く同級生たちに出会ったことが発端だそうです。
充実した姿の同級生たちを見て、リカさんはいつか私も地域医療の仕事をやってみたいと思ったそうです。
そして2019年、59歳の時に、リカさんは実際に動き出します。
これには「ふたつの死」が関係しています。
ひとつは母親の死。
母親との関係についてリカさんがどう分析して書いているのか、私は知りませんが、共依存?毒親?っぽいです。
もうひとつは、面識はないらしいのですが、アフガニスタンで亡くなった中村哲さんの死。彼も精神科医だったそうです。
色々とあったのですが、詳しくは本を読んでもらうとして、なんで北海道のむかわ町国民健康保険穂別診療所なのかと言うと、面白いですよ。
リカさんの古生物好きが縁になったのです。
古生物というと恐竜です。
「カムイサウルス」って知っていますか。
えらそうに訊いていますが、私は知りませんでした。
カムイサウルスの化石は2003年に北海道むかわ町穂別地区で見つかりました。
この化石は「恐竜博2019」で展示され、リカさんはそれを見て、魅了されたそうです。
たまたま「北海道地域医療振興財団」のHPに「むかわ町国民健康保険穂別診療所」が副所長の求人を出しているのに気づきます。
北海道のどこなのかとグーグルマップで調べてみると、診療所と200メートルぐらいしか離れていないところに「むかわ町立穂別博物館」があったのです。
これで決まりました。
リカさんはすぐに「北海道地域医療振興財団」にメールします。
リカさんは意外とミーハーなんですね。
人生なんて、いくつになってもどうなるのかわからないものです。
特にリカさんのような才能豊かな人なら、色々とチャレンジできるのでしょうが。
本を読むと、わたしでもできるかもと思わせられるところがいいです。
五十歳を過ぎた方が読んでみると、勇気づけられるかもしれません。
スイスイと読める本ですので、時間がない方でも大丈夫ですよ。
「完璧な計画を作ってがんばっていても、人生、何が待っているかわからない。だとしたら、流れにまかせて、そのときやりたいと思ったこと、急に興味をひかれたことをやれば、それでいいんじゃないかな」
「1年後、2年後、そして5年後の自分はどうなっているか。それは誰にもわからない。おそらくあなた自身にも。どんなことが待っていようとも「これでよかったんだ」とそのときの自分にうなずきながら、変化を楽しみつつこれからの日々を生きていってほしい」
う~ん、こうポジティブに考えられるといいですね。
そうそう、弟さん、いいキャラですね。こういう弟ならほしいですわww。
中山七里 『ドクター・デスの再臨』 ― 2024/07/02
刑事犬養隼人シリーズの七作目。

三月十五日、下谷署に何者かが家宅に侵入し、寝たきりのALSの母親を殺害し、現金を奪ったという通報があった。
犯行態様は以前世間を騒がせたドクター・デスの事件と酷似していた。
模倣犯か。
ドクター・デスは安楽死の代金に受け取ったのは二十万だったが、今回、被害者が用意した現金は二百万。
警視庁捜査一課に出動が要請され、犬養隼人は高千穂明日香と共に現場に駆けつける。
三月三十日、往年の大女優、岸真理恵の亡骸が自宅で発見される。
彼女はパーキンソン病の既往症があった。
遺書があり、その中でJKギルドに安楽死を依頼したことが書かれていた。
JKギルドとは何か。
JKとは初代ドクター・デス、ジャック・ケヴォーキアンの略称か。
ギルドが職業別組合の意味なら、犯人は一人とは限らないのではないか。
何者かが東亜日報にリークし、岸の遺書が世間に知られてしまう。
世間は安楽死問題で喧しくなる。
捜査に行き詰まった犬養は苦肉の策として、拘置所にいるドクター・デスこと雛森めぐみに模倣犯の心当たりがないか訊きに行く。
日本の安楽死や終末期医療についてよくわかる内容です。
全く安楽死についての議論が進まない現状を鑑みて、中山さんは再度、書きたかったのでしょうね。
ミステリとしての出来は今一です。途中からラストが予測できてしまいます。
こうなれば御子柴が雛森の弁護をするしかないかなww。
刑事犬養隼人シリーズ
①『切り裂きジャックの告白』
②『七色の毒』
③『ハーメルンの誘拐魔』
④『ドクター・デスの遺産』
⑤『カインの傲慢』
⑥『ラスプーチンの庭』
⑦『ドクター・デスの再臨』
東野圭吾 『クスノキの女神』 ― 2024/07/04
『クスノキの番人』の続編。

直井玲斗は大学の通信教育部で勉強する傍ら、月郷神社の管理人として働き続けている。
伯母の千舟はMCI(軽度認知症障害)を患っており、時々記憶が抜け落ちることがあるため、二ヶ月前から玲斗は柳澤家の屋敷に住んでいる。
ある日、神社に三人の子供がやって来る。
女子高生と小学校の高学年らしき少年と彼より年下の少女だ。
女子高生は早川佑紀奈といい、神社に自分の詩集を置いて欲しいという。
代金は200円。作りが雑なので、売れないとは思いつつも、玲斗は引き受けてしまう。
詩集を置いてからしばらくして、アロハシャツ姿の男が詩集を盗む。
玲斗は彼を捕まえ、代金を払うように言うが、金がないので払えないという。
そこにやって来た佑紀奈は気が向いた時に払ってもらえばいいと言って男を帰す。
その男は千舟の小学校時代の同級生、久米田松子の息子だった。
近所で強盗致傷事件が起る。
被害者は命に別状はないが、血を流して倒れていて、保管してあった現金が消えていたという。
被疑者として詩集を盗んだ久米田が捕まる。
そんな頃に、千舟といっしょに認知症カフェに行った玲斗は記憶障害のある少年、針生元哉と出会う。
彼は絵を描くのが上手く、『スター・ウォーズ』の熱烈なファンだ。
『スター・ウォーズ』の話がきっかけになり、神社に来るようになる。
その時に、たまたま佑紀奈の詩集を手に取った元哉は詩からインスピレーションを受け、絵を描いた。
その絵を見た玲斗が佑紀奈と元哉を会わせると、二人は意気投合し、いっしょにクスノキの絵本を作ることになる。
玲斗の回りに警察の姿がチラつく。
強盗致傷事件に関することか…?
ミステリというよりも、一人の青年と縁があって関わり合う様々なバックグラウンドを持った人たちとの心暖まるお話です。
『クスノキの番人』ではなんだこいつと思うような奴だった玲斗が素の自分を取り戻し、千舟を始め、特に二人の少年少女にそっと手を差し伸べます。
簡単に言うと、過去や未来を思い煩うよりも現在を大切に生きようということですね(簡単過ぎ?)。
ア、いっしょに絵本も出版すると、売れると思いますよ(下世話な話でゴメンなさい)。
久しぶりに泣いてみたい方、是非読んでみて下さい。
東野圭吾のガチなミステリを読みたいぜ、という方には勧めませんけどww。
食にまつわるお話、三冊(文庫本) ― 2024/07/05
文庫本がたまっているので、三冊いっしょに紹介します。

柳瀬みちる 『神保町・喫茶ソウセキ 真実は黒カレーのスパイスに』
『神保町・喫茶ソウセキ』の続編。
神田神保町に文豪カレーが人気の喫茶ソウセキを開いて一年半。千晴もなんとか経営に慣れてきた。ところが突如、不穏な雰囲気が漂い始める。というのも、嫌がらせを受けるようになったのだ。
どうも大辛シムロという文学系VTuberが小説家・葉山トモキをぶん殴れとか、店を叩き潰せ的なことを言ったので、その信者がやったようだ。
なんとかシムロを突きとめるが、次々と事件が起り…。
ネットの影響って大きく、一旦起った嫌がらせはなかなかおさまらないものなんですね。
便利だけど、使う人の道徳観に任せられるのってよく考えたら、怖いかも。
新しい文豪カレーはシチューポットパイをカレーでアレンジした『太宰カレー』とタイのプーパッポンカリーをベースにアレンジした『林芙美子カレー』、昭和レトロに見えるけど辛口スパイシーな坂口安吾カレー。
そして、文豪には関係ないのですが、メキシコの『モレ・ポブラーノ』をベースにしてチョコレートを使った黒いカレーが出てきて、どれも美味しそうです。
嫌なことがあったけど、シェフ心が刺激され、美味しいカレーができればいいじゃないのと言いたくなりましたww。
斉藤千輪 『出張シェフはお見通し 九条都子の謎解きレシピ』
出張シェフの九条都子は様々な場所に呼ばれ、料理を作り、そこにあるトラブルを解決していく。例えば…。
①貸し切りのクルーザーで音楽家ロッシーニをテーマにした料理を作り、一歩が踏み出せない大学時代の後輩を勇気づける。
②入院していた母親の快気祝いを作った先の家で、母親が雑誌を山のように買っている謎を解く。
③料理提供に行った先の婚活パーティに数あわせに参加し、もてない男性をカップリングさせる。
④ハウスダイナーの三周年パーティで、意地悪な記者の取材に答えるために急遽フランス人シェフと即興で作る料理バトルをやることになる。
北海道の甘い栗の入った茶碗蒸しが出てきて、懐かしくなりました。
赤飯に甘納豆を入れるのと同様に、北海道以外ではあまり入れないのでしょうかね。美味しいのに。
都子の辛い過去が明らかになりましたが、続編がありそうな終わり方です。
長月天音 『キッチン常夜灯 クロックムッシュ』
『キッチン常夜灯』の続編。
前回の主人公はチェーン店「ファミリーグリル・シリウス浅草雷門通り店」の店長の南雲みもざでしたが、今回はチェーン店を経営している株式会社オオイヌの本社営業部に所属している新田つぐみです。
株式会社オオイヌは「女性活躍」を目標に、女性店長を増やし、その代わりにベテラン男性社員が本社勤務になっている。居場所を失った彼らに気を遣いながら仕事をしているつぐみは疲労困憊してストレスがたまっている。結婚を意識した彼氏との間も上手くいかず、電話も来なくなり、会うこともなくなった。
クレーム処理をして遅くなった日、みもざから店のパソコンの調子が悪く、売上げを報告できないかもしれないとの電話がくる。その後、みもざに連れて行かれた店が「キッチン常夜灯」だった。
そんなある日、つぐみはデザートメニューの開発をすることになる。甘い物が苦手なつぐみは困り、常夜灯のシェフに相談する。
会社がどこまで社員のことを考えているのかは難しいところですよね。
会社の「女性活躍」という勝手な目標のために、みもざもつぐみも大変な思いをしています。
でも会社がクレームを重く受け取ってくれたので、つぐみのなやみが解消されました。クレームって役立つものなのね。
世の中の頑張って働く女性のために、常夜灯のようなレストランがあればいいなぁ。
お腹が空いていると、美味しいお料理が食べたくなるお話です。
軽い本が読みたい時にどうぞ。
時代小説ミステリ、二冊(文庫本) ― 2024/07/07

森谷明子 『千年の黙(しじま) 異本源氏物語』
「第一部 上にさぶらふ御猫(長保元年)」
出産のために宮中を退出する定子に同行した猫が牛車に繋いでおいたのにいなくなってしまう。その猫もならぬ体だという。左大臣までが即刻さがしだせと命令を出し、大捜索が始まる。一体猫はどこに?
「第二部 かかやく日の宮(寛弘二年)」
法華八講の後、小侍従ともう一人の女房が供物を下人小屋に思って行こうと庭を歩いていると、御堂のある島の方から想夫恋を吹く笛の音が聞えてくる。
二人で御堂に行ってみると、だれもいない。笛の主はどこに?
源氏物語も四十帖になったが、『かかやく日の宮の草子』がないことが判明する。一体誰がどうやって草子を持ち出したのか?
「第三部 雲隠(長和二年ー寛仁四年)」
式部の君が『かかやく日の宮の草子』の行方の謎を解き、亡き物にしようとした者に復讐を遂げる。
大河ドラマと同じ時代のお話なので、大河ドラマファンなら面白く読めるのではないかと思います。(私は見ていないので、わからないのですが)
それよりも私が高校生の時にこの本を読んでいたら古典の授業にもっと身を入れて勉強できたのではないかと思います。(今ならナンでも言えるよねww)
謎解きをするのが、のちに紫式部と言われた式部の君で、ワトソン的な働きをするのが阿手木(あてき)という女房です。
第一部では、あてきが十二歳ぐらいの木登り上手の童だったのに、第二部以降は阿手木という夫もある女房になっていて、ちょっとびっくりしました。
呼び方が変わるので、誰が誰だか混乱することもありました。
無知故のことですから、仕方ないですね。
『源氏物語』を読んでいると、もっと面白いでしょうね。
今から読もうとは思いませんでしたが、笑。
勇気のある方、どうぞ『源氏物語』を読んでからお読み下さい。
面白さが倍増します(たぶん)。
次はクスッと笑える、軽いお話です。

風野真知雄 『魔食 味見方同心(二) 料亭駕籠は江戸の駅弁』
「第一話 どっぷり汁」
金物問屋<武蔵野屋>のあるじが出先で亡くなり、駕籠で運ばれてくる。身体が脂でべたべたで変な臭いがしている。南町奉行所味見方同心の月浦魚之進が臭いを嗅いでみると、牛の肉の臭いがする。あるじは魔食会の会員なのか?
調べて行くと、あるじは二、三日前にどっぷり汁を食いに行かないかと誘っていたという。
「第二話 料亭駕籠」
近頃、江戸の名所を回りながら、料亭の弁当をつかう料亭駕籠が話題になっている。その料亭駕籠で旗本の笠原忠義が殺害される。笠原は将軍から絶大な信頼を得ている旗本の中野石翁の替わりに乗ったという。笠原は中野と間違えられて殺されたのか?
魚之進は中野に下手人捜しを命じられる。
「第三話 食い合わせそば」
中野石翁から魚之進は呼び出され、食い合わせそばを食べる手配をするように命じられる。食い合わせそばを考案した医師の坂本丘庵の家に行くと、どんでもないことが起っていた。食い合わせそばを食べていたお目付の大貫丹後が急に苦しみだし、亡くなったというのだ。食い合わせは迷信ではないのか?
「第四話 侍包丁」
<奇勝庵>という料亭が、武士が包丁の代わりに刀で刺身を切り出すという<侍包丁>という料理を売り物にしているという。
魚之進はまた中野に呼び出され、侍包丁を食べたいと命じられる。
実は中野は二十年前に女中見習いに手を出し、身籠もさせてしまい、侍包丁の遣い手がその子ではないかというのだ。
魚之進は侍包丁を披露している武士について調べる。
相変わらずこんな料理が本当に江戸時代にあったのかと思わせられるものばかりです。
料理駕籠なんか乗りたいですね。三両ですから、今の12万円ぐらいですか。無理だわ。
なんとわるじいこと愛坂桃太郎が第三話から登場しました。まだ現役で、カッコいいです。
次はどんな料理が出てくるのか、楽しみなシリーズです。
原田ひ香 『古本食堂 新装開店』 ― 2024/07/09
『古本食堂』の続編。

珊瑚と美希喜の鷹島古書店は順調だ。
しかし、美希喜が三冊二百円の格安文庫コーナーの値上げやレジ横をカフェスペースにしたいなどと言い出し、珊瑚は溜息をついてしまう。
カフェスペースのために本棚を動かすと、棚の裏側の壁にびっしりカビが生えていた。
まさか他の壁も同じなのか…。
美希喜はカフェスペースのせいで、今まで来てくれた常連さんが来なくなるのではと心配する。
現に来ない人がいる。
帯広にいる珊瑚の恋人の東山は手を骨折し入院したという。
それなのに珊瑚には連絡をくれなかった。
気になる珊瑚は思い切った行動を取る。
珊瑚は70代、美希喜は20代で世代が違いますから、古書店に対する思いが違うのは当たり前ですよね。
珊瑚さんってさっぱりした人かと思っていたら、どうもそうではないみたい。
美希喜ちゃんや東山さんとちゃんと話そうよぉと言いたくなりました。
でも珊瑚さん、最後は頑張ります。どうなったのかは次のお楽しみかな?
今回も味のあるお客様が来てくれました。
特に美希喜のお母さんの親戚の三姉妹がインパクトありました。
それぞれのお客様に紹介した本はどれもすぐに読めそうです。
わたしはモモちゃんシリーズを読んでいないので、気になりました。
もちろん美味しいご飯が出てきましたが、わたしが一番食べたいのは、岡田三姉妹が持って来た「日本で一番古いお弁当屋のお弁当」です。
どこかと探してみたら、日本橋弁松総本店のお弁当らしいです。
神保町ではないのね。
今度都心のデパ地下に行ったら探してみます。
ひ香さんは食べ物を食べて、お話している人の描写が上手いです。
わたしも中に入りたくなりました。
例えば六花亭の喫茶コーナーで、「うんうん、わたしも八百円のケーキなんか見たらぎょっとするよ」なんて言いたいわ。
六花亭、ショートケーキなんて326円よ。安い!
インバウンドのせいで、もしかして今年ぐらいから値上げとかないよね。
帯広には行ったことがないので、次回北海道に行くことがあったら行ってみたいです。
『古本食堂』を読んでいなくても、大丈夫です。
わたしもすっかり内容を忘れ、思い出しながら読んでいますからww。
小説家志望の奏人って誰?って感じで、未だに思い出せません。
お勧めの本です。
あさのあつこ 『おもみいたします 凍空と日だまりと』 ― 2024/07/10
『おもみいたします』の続編。

揉み仕事の依頼を受けお梅に取り次ぐ役割をしているお筆がやって来るが、なかなか仕事のことを言おうとはしない。
お武家からの依頼らしく、揉み治療に来てくれれば二十両を出すと言っているという。
そこに依頼した武家が二人現れる。お筆をつけてきたらしい。
彼らは詳しくは語れないが、すぐに来て主の腕が動くように治療をしてくれと言う。
興味を持ったお梅は十丸が反対するにもかかわらず、承諾する。
その三日後、お梅は武家の屋敷に行く。
屋敷には嫌な気が満ちていた。
出てきた女にお梅の揉み師としての決め事を話すが、女は先がないから無用だと突っぱねる。
武家には武家の生き方がある。恥を知り、恥を恐れ、恥を雪ぐために身命を賭す。そういう生き方で、町方とは異なるのだと言うのだ。
それにも関わらず、お梅は当主と会う。
そして、当主のどうしようもできない行く末を知り、自分の力と回りの助けを借り、生き続けるための道筋をつけていく。
今回は武家の当主が患者です。
町人とは違い武士は本当に生きづらい人種だと思います。
お梅が何を言おうが聞こうとしないんですから。いいえ、聞えても、心を閉じているのです。
凝りは人そのもので、揉むというのは、身体だけではなく、心の凝りもほぐしていくもの。人として一日、一日を楽しめるように。
何回も言いますが、わたしもお梅に揉んで欲しいです。
なんか前とは違い、お話が大きくなり過ぎている感じで、そこが残念です。
まだ十七歳のお梅がお節介過ぎで、武家相手にそこまでやれるのと言いたくなりました。実際にはこんなに上手くはいかないですよね。
それにお筆の孫のお昌ちゃんが全く登場しないし、仙五朗親分はもっと活用してほしかったです。
人ではない存在の十丸とお梅の会話はよかったです。
天竺鼠の先生はお酒に目がなく、仕事もわすれて飲んで騒いでいます。可愛い♡
次は短編で江戸に住む様々な人たちのことを書いて欲しいです。
そういえばこのお話、ミステリだったっけ?
今回はミステリ色を全く感じませんでした。
桜木紫乃 『谷から来た女』 ― 2024/07/12

赤城ミワはアイヌ紋様デザイナー。
母親が九州出身の日本人で父親がアイヌ人。
背中に父親が彫ったアイヌの紋様がある。
ミワと関わる大学教授やデザイン学校の同期の女、教育通信の記者、レストランシェフ、北海道テレビプロデューサー、そしてミワの父母の出会いを描いた六つの短編集。
桜木さんの本を読むたびに、私の無知を思い知らされます。
北海道で育ったというのに、全く北海道のことを知らないのです。
今までアイヌ人に会ったことはありませんし、学校でアイヌの歴史や文化について学んだことはありません。
アイヌ人に対する差別と言われても、はっきり言ってわかりません。
「あなたに見えない壁が、わたしには見えるんだ」
というミワの言葉が心に刺さります。
時系列にそってお話が並べられていないので、戸惑うこともありますが、不思議な魅力のあるお話です。
北海道出身のわたしとしては、ミワの凛とした生き方に魅了されますが、それ以上に自らの無知さを見せつけられ、ちゃんと知ろうとしなければと思わせられました。知らないではすまされませんよね。
ボニー・ガルマス 『化学の授業をはじめます。』 ― 2024/07/13

エリザベス・ゾットは奮闘していた。
アメリカの1950年代から60年代は、女性は劣っているという偏見に支えられた家父長制社会だった。
UCLAで修士号を取ったが、彼女をレイプしようとした指導教官に暴行を働いたため、博士課程進学許可を取り消され、仕方なくヘイスティングズ研究所に職を得た。
彼女は科学者としてヘイスティングズ研究所に勤務しているつもりだったが、与えられる仕事は男性の補助的な仕事ばかりだった。
ある日、ノーベル賞候補にまでなるようなスター科学者であるキャルヴィン・エヴァンズとの幸運な出会いがある。
実態はとんでもない出会いだったが、その後、彼らはつき合い、一緒に暮らし始め、唯一無二の存在として互いに認めあうようになる。
二人の育った家庭は悲惨なものだったが、キャルヴィンは家族になろうとエリザベスにプロポーズするが、断られる。
エリザベスは結婚しないし、子どもも作らないという。
その代わりに、彼らはシックス=サーティという野良犬を飼う。
ところが悲劇が起る。
キャルヴィンが事故で亡くなったのだ。
失意のエリザベスに遺されたのは、思ってもみなかった物だった。
エリザベスは妊娠していたのだ。
社会は未婚で子供を産む女性に対して不寛容で、エリザベスはヘイスティング研究所から解雇される。
最悪なことに科学研究部部長のドナティは後援者からの寄付金を得るためにエリザベスの功績を我が物とする。
解雇されてからエリザベスは自宅に研究室を作る。
生計を立てていくために、自分の名前を出さずに相談に来た元同僚の仕事を代わりにやり、料金をもらうことにしたのだ。
子どもが産まれてから、エリザベスの毎日は修羅場となる。
そんな彼女に隣人のハリエット・スローンという助っ人が現れる。
ハリエットは夫と上手くいっていないが、カソリックであるため離婚をしようとは思わずにいた。
最初はエリザベスの手助けをし、できるだけ家にいないようにしようと考えたのだが、最終的に彼らは友人となる。
エリザベスに転機が訪れる。
それは娘のマデリンのお弁当が誰かに盗まれているとエリザベスが気づいてから始まった。
お弁当を盗んでいたアマンダ・パインの父親でテレビ番組のプロデューサー、ウォルターがエリザベスに料理番組に出演しないかと声をかけたのだ。
背に腹は代えられないとエリザベスは引き受ける。
しかし、料理番組はウォルターの考えるようにはならなかった。
エリザベスは科学的に料理を説くのだ。
はたして彼女の料理番組はどうなるのか…?
1950年代から1960年代のアメリカが描かれています。
前半は読みながら胸クソ悪くなりました。
少し長いですが、本から抜粋します。
「彼らはエリザベスを管理したがり、さわりたがり、支配したがり、黙らせたがり、矯正したがり、指図したがる。なぜ仲間の人間として、同僚として、友人として、対等な相手として、あるいはただ通りすがりの他人として女性に接することができないのか」
「ハリエットに言わせれば、男は女とはほとんど別種の生き物だった。男は甘やかされることを必要とし、すぐに傷つき、自分より知的だったり能力が高かったりする女性を許せない」
自分の言うことを聞かなければ、最後はレイプですか。
エリザベスは言います。
「要するに、女性を男性より劣ったものとして貶め、男性を女性より優れたものとして持ちあげるのは、生物学的な習性ではありません。文化的な習慣なんです」
ふと疑問が湧きました。
なんで今頃、この本が出版されたのでしょう?
「全米250万部、全世界600万部。2022年、最も売れたデビュー小説!」だそうです。
ひょっとして、日本よりも女性が活躍しているアメリカなのに、女性たちには色々と不満があるのでしょうかね。
お話の後半でエリザベスが大躍進し、最後は勧善懲悪でスカッとします。
今、何かやろうと思っても躊躇している人が読むと、一歩踏み出せるようになるかもしれませんね。
最後にハリエットとエリザベスのわたしが好きな言葉を載せておきます。
ハリエット
「家族とは、つねに保守点検が必要なのだ」
エリザベス
「勇気が変化の根っこになりますーそして、わたしたちは変化するよう化学的に設計されている。だから明日、目を覚ましたら、誓いを立ててください。これからはもう我慢しない。自分になにができるかできないか、他人に決めさせない。性別や人種や貧富や宗教など、役に立たない区分で分類されるのを許さない。みなさん、自分の才能を眠らせたままにしないでください。自身の将来を設計しましょう。今日、帰宅したら、あなたはなにを変えるのか、自身に問いかけてください。そうしたら、それをはじめましょう」
ボニー・ガルマスは1957年生まれで67歳になりますが、この本がデビュー作です。British Book Awards Author of the Year 2023をはじめ、色々な賞を取っています。
何歳になっても本が書けるといういいお手本ですね。
500ページを超える本で、最初は翻訳に違和感を感じますが(わたしだけかも)、面白そうと思った方は是非読んでみてください。
後悔はしないと思います(たぶんww)。
そうそう、犬のシックス=サーティは可愛いです。
ボニーさんの愛犬は99だそうです。
犬の名前に数字をつけるのが好きなんですね。
二匹でお散歩♡ ― 2024/07/14
晴れてきたので、急いでお散歩に行きました。
一週間ぶりに二匹でお散歩をするので、わんこたちは嬉しそうです。
この頃、花があまり咲いていないのですが、赤い大きな花を見つけました。

モミジアオイという花だそうで、「北アメリカ東南部の湿地を故郷とするハイビスカスと同族の植物で、紅蜀葵(こうしょっき)とも呼ばれる」そうです。
色々な花がありますね。

二匹でズンズン歩きます。

気温はそれほどではなさそうですが、湿気があり、珍しく兄も舌を出しています。

イギリスが故郷のヨーキー弟はハァハァ言いながらお座りしています。
彼はいつもハァハァしていますけど。

かわいらしく舌を出している兄。

お水を飲ませます。
休憩の後、兄はママのスリングに入りました。そうすると弟も入りたいのか、ママにまといつきます。
しばらくするとパパが抱きかかえました。

舌をビロ~と出している顔は可愛くないので、舌をチロっと出している写真をおみせします。
犬的にも、人間的にも、早く涼しくなってほしいですね。
<昨夜の夕食>
昨夜は外食をしました。
前菜を食べた後にパスタとピザです。

ゴルゴンゾーラのニョッキ。

ワタリガニのパスタ。
これは頼んでいないのですが、あるアクシデントがあり、頂きました。

オニオンと何か(忘れてしまいましたww)のピザ。
胃の調子が悪いので、少しずつ頂きました。
デザートはなしです。
食事の後に買物をした時にコーヒーを飲みました。
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