食べ物を扱う女性職人シリーズ(時代小説) ― 2025/02/22
江戸時代に生きる若い女性たちを描いたシリーズです。
彼女たちは料理人や菓子職人、茶屋の経営などをしています。

泉ゆたか 『うたたね湯呑 眠り医者ぐっすり庵』
京都から戻った藍は≪ぐっすり庵≫が≪福もみ屋≫になっているのを見て驚く。
藍がいなくて差し入れが滞ったので、久の忠言をきき、福郎と猫のねうが按摩の仕事をしていたのだという。
神田明神下の茶屋、千寿園は藍が考案した”かくし茶”で繁栄しているが、赤字寸前で、このままでは半年も持たないという。
一心から次なる一手を考えるように言われる藍。
さて、どうする、藍。
そんな時に、兄の松次郎を探しているという為五郎という男がやって来る。
どうも長崎では松次郎の首に賞金がかかっているらしい。
為五郎が、松次郎が江戸に戻っていることを知らない伯父夫婦のところにやって来たらしく、それから彼らの様子が変わったという。
そこに京都にいるはずの幸四郎が現れる。
自暴自棄になっている松次郎に幸四郎は大草能登守のお姫さま、咲子の病の治療の話を持ってきた。
咲子の病を治すことは、大草に無実の申し開きをする、またとない機だが・・・。
眠りの大切さを教えてくれるお話です。ねうのような眠り猫がほしいです。
お話もハッピーエンドということで、これで終わりなのでしょうか。
美味しい日本茶が飲みたくなるシリーズです。
シリーズの順番
①『猫まくら 眠り医者ぐっすり庵』
⑤『うたたね湯呑 眠り医者ぐっすり庵』(本書)
中島久枝 『おでかけ料理人 おいしいもので心をひらく』
元日本橋の老舗「三益屋」の娘で今は出張料理人の佐菜は16歳。朝は大鼓の石山流宗家の一人息子の専太郎の朝餉を作り、その後に神保町の煮売り屋のおかねの店で働いている。依頼があれば、その家に行き、料理を作る。
今回は、須田町の居酒屋、満々屋の大将から黒門町に住む独り暮らしの母親へ料理を作る依頼と日本橋の白蘭屋のおかみかから軍鶏鍋の依頼、能の太鼓の石山名人と大工の甚五郎から船場汁の依頼、郷里から出てくる父親に食べさせるれんこん料理の依頼だ。
心に一物があり、なかなか心を開けなくても、いっしょにおいしいものを食べれば、心が通じるということはありますよね。
上方と江戸前では料理の味がちがうそうですが、食いしん坊の私は佐菜ちゃんと同じくどちらも好きです。
江戸は目の前が海ですが、京は新鮮な魚介類が手に入らないので、京の料理人が知恵をしぼり、工夫を重ねたそうです。
佐菜の腹違いの弟の市松の今後が気になります。
シリーズの順番
③『おでかけ料理人 おいしもので心をひらく』(本書)
中島久枝 『にぎやかな星空 日本橋牡丹堂 菓子ばなし(十三)』
日本橋の浮世小路にある菓子屋、二十一屋はのれんに牡丹の花が白く染めぬいてあるので、牡丹堂と呼ぶ人もいる。職人は主で親方の徹次と徹次の息子の幹太、留助と伊佐、昨年、伊佐と所帯を持ったばかりの二十歳の小萩だ。
小萩はなんとか一通りの菓子が作れるまでになったので、小萩庵という看板を出し、お客の注文を受けている。
今回の注文は、夜咄の茶事のお菓子と二人静にちなんだお菓子、『鉢かづき姫』の物語にちなんだ最中。
二十一屋では幹太の考えた市村座の『阿古屋』で難役阿古屋に扮する人気女形の仲屋咲五郎にちなんだお菓子「咲五郎の阿古屋」を作って、芝居小屋で売ることになる。
私的には幹太の恋のお話が一番よかったです。
幹太は年上の母親と似た女性に恋したのですが、心の始末のつけ方が粋でした。
小萩がお客さんの事情に関わりすぎて、つかれ過ぎることを心配する伊佐はいい旦那さんです。
小萩は子どものことを考えていますが、仕事のことがあるので、思い切れないみたいです。伊佐は父親と幼い頃に別れたので、父親というものがわからず、自分みたいな者でも父親になれるのかと言っていますが、どうにかなりますよね。
シリーズの順番
⑥『はじまりの空 日本橋牡丹堂 菓子ばなし』
⑬『にぎやかな星空 にぎやかな星空 菓子ばなし』(本書)
坂井希久子 『菊むすび 花暦 居酒屋ぜんや』
お妙の体の調子が悪い日が続いている。
そんな時に、俵屋の若旦那とお梅の祝言の料理を何品か作って欲しいとの依頼がくる。
『ぜんや』で何度も飯を食べている花嫁のお梅を、思い出の味で慰撫してやろうというのだ。お花がお妙の代わりに作ることになるが、果たしてお花にお妙の代わりが務まるのか。
やっとお花も『ぜんや』を継ぐという強い意志を持ったようです。
いくらなんでも今まではいい加減でしたものね。
次が楽しみです。
シリーズの順番
②『萩の餅 花暦 居酒屋ぜんや』
⑦『菊むすび 花暦 居酒屋ぜんや』(本書)
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