ヘイリー・リンド 『贋作と共に去りぬ』2011/09/29



新しいシリーズです。
主人公は画家兼疑似塗装飾師のアニー・キンケイド。
疑似塗装飾師とは、クライアントの望みどおりに家の装飾をする人です。たとえばトスカーナのヴィラのようにしてほしいと言われれば、そのように壁やら床やらをペイントするんです。(とえらそうに書きましたが、こんな仕事よね?)

アニーには後ろめたい過去がありました。
実は祖父が贋作師で、絵の才能のあるアニーは彼から贋作作りを仕込まれました。十代の頃に贋作作りがバレて警察のお世話になったことがあり、それがアニーの一番の弱点です。

もう二度と贋作の世界には手を出さないと決心して、まっとうな仕事を始めたアニーですが、元カレでブロック美術館のキュレーターのエルンストに頼まれて、夜中に美術館に忍び込み、美術館が購入したカラヴァッジョの『東方の三博士』の鑑定をします。

「贋作の描き方を学ぶときには、贋作の見分け方も勉強する。とはいえ、世界的な贋作師になるにはやはりきちんとした芸術的才能が必要なように、他の贋作師の特徴を見極めるには、後天的な努力にもまして、先天的な能力が必要になってくる」

アニーはこの「美的分析眼」を持っているのです。

美術館を出て、カフェでエルンストを待っていましたが、いつまでたっても彼は現れません。
心配して美術館の方へ行くと、美術館の職員用出口に消防車や救急車が停まっていました。

管理人のスタンが殺され、エルンストは行方不明になっていました。

アニーはエルンストのことも心配だったのですが、それ以上にカラヴァッジョの贋作を描いた知り合いの贋作師アントンが危険かもしれないと思い、彼の居場所を知らないかと祖父に電話をかけるのですが・・・。

ひょんなことから殺人事件に巻き込まれるアニーです。

アニーのクラッシャーぶりはすごいですよ。行くところ、行くところで騒ぎが起こるのですから。
どんなに心配な事があっても、おいしい食事をすると幸せになるアニーって能天気でいいキャラです。
ミステリーというよりドタバタ・コメディという方がいい作品です。
私としては、もっと贋作に関する薀蓄が欲しいですわ。