妃川蛍 『お弁当代行屋さんの届けもの』2018/07/13



眞琴は元フレンチシェフ。今はお弁当代行屋で、たまに知り合いのために仕出しをやる時もあります。
ウェブデザイナーをしている彼女の甥の陽仁は助手を勤め、主にリサーチを担当しています。

母親が亡くなった、アレルギーを持つ子の弁当作りや、余命少ない老人のために彼の妻が作ったお弁当を再現したり、不器用で料理ができず、妻との約束のお花見弁当を自分の代わりに作ってもらいたいと依頼する夫など、どの話もワケありです。

『鴨川食堂』と似た感じだなと思いながら読みました。
どういうお弁当が望まれているのかを探るところなんか推理小説みたいですが、陽仁が眞琴に気がある様子がアリアリで、この部分、いる?と思いました。
ライトノベルの部類に入るので、必要なのかな。
作者の経験に基づき、色々と旬な話題を取り上げているのに、そこが残念でした。

家庭で作るお弁当って大事なんだなと思います。
私はお弁当に思い出がないので、思い出がある人がちょっとうらやましいです。

樋口明雄 『レスキュードッグ・ストーリーズ』2018/07/14

朝、兄犬の甘え鳴きで目が覚め、休日なのに早く起きました。
ご飯を食べ終わって、犬部屋を見てみると・・・。


こんな風につまらなそうにしている兄。
「ママ、早く僕をかまってくれないかなぁ・・・」という感じです。
今も膝の上にのり、腕を舐めようとしています。

家の犬より人様の役にたっている犬が登場するお話です。


後書きを読むと、実際は南アルプス山岳救助隊にはレスキュードッグはいないとのこと。いてもいいように思いますがね。

大学時代に山登りをしたことがあります。
山は初めてだったので知っている人に着いて登っていました。
地図は必ず用意し、天候が崩れるようなら登りにいくのは止め、雪山には行きませんでした。
山の経験豊富な友人が春の八ヶ岳に登り、残雪に足を滑らせてしまい、肋骨を折ったことがあります。
どんなに経験があっても、山では何があるのかわからないんだなぁと思いました。

私は社会人になって同僚と行った山で、低血糖から気分が悪くなり、みんなに迷惑をかけて以来、山登りは諦めました(笑)。
今はもう体力がなく、高尾山にも登れないかもしれません。

この本の中には色々な遭難者が出てきます。
どの人も遭難しようと思ってしたわけではありませんが、どこかに山に対する甘えのようなものがあるような気がします。
人間って自然の中では何もできない小さな存在なのです。

この本を読むと、山に行きたいというよりも、山の怖さを感じます。
シリーズ物らしいので、これから山に行こうかなという人は、このシリーズを読んで、いかに山岳救助隊の方々が山の安全を守っているのかを知るのもいいかもしれません。

矢崎在美 『森のシェフぶたぶた』2018/07/15



「ぶたぶた」シリーズの最新作。
ぶたぶたさんは色々な職業につきますが、私が一番好きなのはシェフになったぶたぶたさんです。
今回は嬉しいことに、古いリゾート地(軽井沢っぽい)の森の中に建つオーベルジュのオーナーシェフです。
(オーベルジュとは「泊まって食事を楽しむレストラン」のことです。)

「ル・ミステール」というオーベルジュには泊まった人にしかわからない「謎」があるといいます。
しかし、一組しか泊まれないので、「謎」は深まるばかり。
そのオーベルジュに様々な人たちがやってきます。
女友達、カップル、家族連れ、子ども…。

シェフがぶたぶたさんだとわかったら、あなたはどんなリアクションを取るでしょうか?

犬連れでもOKだったら、泊まりに行きたいです。
ア、家のヨーキーはボールが好きなので、ひょっとしたらぶたぶたさんをおもちゃだと思って咥えて走り回るかもしれまいわね、笑。
彼は齧るのが好きだから、ぶたぶたさんは齧られて、死んじゃいそう。
「いけません」と怒ったら…。


「ごめんなさい」と縮こまっていました(笑)。

このシリーズも20周年だそうです。
次のぶたぶたさんの職業が楽しみです。是非ともお料理関係でお願いします。

伊吹有喜 『風待ちの人』2018/07/16



暑い日が続いています。
我が家の犬たちは、なかなか散歩に連れて行ってもらえません。
その代わり家で大騒ぎですが(笑)。
昨日の2時頃、買い物に出かけようと家から出ると、たまに見かけるヨーキーを飼っている80歳ぐらいのおばあさんが、シルバーカーを引きながらヨーキーをお散歩させていました。
2時過ぎですから気温は最高です。
ヨーキーもお婆さんも熱中症にならないか心配です。



疲れた大人のための恋物語です。

東京の銀行で働いていた哲司は会社に行けなくなってしまい、その上、首まで曲がらなくなってしました。
しばらく休職し、その期間を亡くなった母の遺品整理に使うということで、妻子を東京に残し、海の傍の母の家で過ごすことにします。
そういう彼のところに現れたのが、ヒッチハイクをしていた喜美子。
彼女はトラックの運ちゃんたちから「幸せを呼ぶペコちゃん」と呼ばれていました。
哲司は彼女を車に乗せてやります。
その後、家に来た彼女に家の片づけを手伝うから、クラッシック音楽について教えて欲しいと頼まれます。
最初は喜美子のおばちゃん風おせっかいが迷惑だった哲司ですが…。

合わないのに合わせようと頑張り過ぎてしまうと、心が風邪をひいてしまいますよね。
そうなる人とならない人の違いはそう簡単にはわかりませんし、ならない人にはなる人のことがわからないでしょうね。
せっかくいい風が吹き始めたのに、ぶち壊わす哲司の妻でした、笑。

最後は好き嫌いが分かれるでしょう。
私としてはハッピーエンドでよかったです。
これからも幸せに暮らしましたとさっていう大人のための童話でいいじゃないですか。

乃南アサ 『六月の雪』2018/07/20

何年か前に『五月の雪』という台湾映画を見たことを思い出しました。
調べてみると、『五月の恋』という題名でした。よく題名をうろ覚えしていることがあります(恥)。
映画で、主人公の男の子と女の子が「五月の雪」を見に行く場面が印象的だったので、勘違いしていたようです。

これから紹介する本に詳しく書かれていますが、戦前、台湾は日本の植民地だったので、日本のような街並みが少なからず残っています。
それが昔の日本を見るようで、懐かしく思われます。

「五月の雪」は「油桐花」のことで、「六月の雪」は「欖李花」という白い花のことです。
台湾に雪が降らないので、白い花を雪に例えているんですね。


声優になるという夢破れ、派遣をやっている32歳の未來は祖母と一緒に暮らしていました。
両親は仕事の都合で九州にいます。
隣の彼女の生家は長年行方不明だった叔母たち家族に使われています。

そんなある日、ふと祖母が自分の生地が台湾の台南であると話します。
それは未來にとって意外なことでした。
写真を取りに行こうとした祖母が、階段から落ちて骨折し入院したので、祖母を元気づけるために、未來は台湾に行き、祖母の思い出の地を探すことにします。
台湾では日本語を話す台湾の人たちに助けられ、戦前の日本人たちが住んでいた場所を訪れ、祖母の生家があった場所まで見つけることができました。
台湾と日本の歴史を知った未來はある決断をし、日本に戻ってくることになります。

台湾が日本の植民地だったことや、日本人が去った後の台湾のことは知らない人が多いでしょうね。
恥ずかしながら私は台湾映画を見るまでは詳しくは知りませんでした。
学校の世界史では教えないし、征服された方は忘れないけれど、征服した方は簡単に忘れてしまうんですね。
興味を持った方は私のように候孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『冬冬(トントン)の夏休み』や『悲情城市』、『戯夢人生』などを見ると、台湾のことを少し知ることができると思います。

台湾は一度行ったことがあります。
映画で見た九份と台南、高雄に行きたかったのです。
九份には行けましたが台南や高雄には行けませんでした(残念)。
この本を読みながら、台湾のムッとした大気とバイクの群れ、排気ガスの臭いなどを思い出しました。

台湾が懐かしくなったので、ツタヤで『五月の恋』を借りてきてもう一度見ましょうか。
それとも台湾ティーのお店「Gong cha」でお茶でもしましょうか。
台湾のかき氷もいいかも(笑)。

M・C・ビートン 『アガサ・レーズンの不運な原稿』2018/07/21

アガサ・レーズン・シリーズの10作目。


かわいそうに、アガサは隣に住むジェームズのことが忘れられず、未練を断ち切るために、やけくそで適当に引越し先を決めてしまう。
ノーフォークのフライファムへと。
猫二匹と一緒に行ってみると、「男に捨てられた女」というレッテルをつけられてしまう。
頭にきたアガサは探偵小説を書くために来たんだと嘘をつく。
しかし、その嘘がとんでもないことに。
村のお屋敷の夫婦をモデルにして小説を書き始めたのだが、なんと、彼女の書いた手口でお屋敷の主人が殺されてしまう。
たまたまアガサに話を聞きに来た警部に原稿を読まれてしまい、アガサは第一容疑者になってしまう。
そのため、たまたま遊びに来ていた準男爵のチャールズとアガサは一緒に犯人捜しを始める。

この本を読むと、イギリスの地方の村に住むのは躊躇します。
詮索好きの女性たちと閉鎖的な村が嫌ですもの。
クリスティの時代から変わっていない感じがしますが、実際はどうなのかしら?

巻末に若きアガサを描いた「アガサ・レーズンの初めての事件」が収録されています。
初々しいアガサも時が経つにつれ、たくましくなっていったのですね。
彼女のタカピーなところは、弱さを隠すためだったようです。

予測できないラストでした。
29冊もアガサ・シリーズは出版されているとのことですが、10冊目でこれですから、この後、どうなるのかしら…。

伊吹有喜 『四十九日のレシピ』2018/07/22



熱田は妻の乙美を突然亡くし、生きる気力を失い、家の中はゴミだらけ、食べる気もおきず、口にいれたのは牛乳だけという生活を送っていました。
そういう熱田の元に、昔流行ったガングロギャルメイクをした金髪頭の女の子の井本がやってきます。
彼女は乙美の教え子で、乙美から彼女が死んだ後、四十九日まで家事などをやってほしい、そして四十九日には大宴会をやるようにと頼まれたというのです。
熱田は知らなかったのですが、乙美は「リボンハウス」という施設で少女たちに絵手紙や料理、所作などを教えていたのです。
そういう時に、娘の百合子が出戻ってきます。
乙美は百合子にとっては継母で、最期まで素直に接することができず、そのことを悔いていました。
結婚して、現在は義母の介護をしていましたが、夫が不倫をしていたことがわかり、実家に戻ってきたのです。
井本の存在に戸惑う二人でしたが…。

『風待ちの人』でもそうでしたが、読後感がとてもいい本です。
とんでもない人もいますが、出てくる人たちは概して生きるのが不器用なだけで、優しくて。
幸せってなんだろうと考えさせられます。
死んでしまっちゃお仕舞だけど、生きてるうちは精一杯好きなことをして、好きな人には優しく接しなくてはね。

テレビドラマや映画になっているようですが、俳優さんたちを見るとイメージとはちょっと違うような気がします?
井本はガングロギャルメイクなはずなのに、すっぴん風かゴスロリで、熱田が四朗、バカ夫が…。
まあ、見なければいいことなので、いいのですが(笑)。

この作家さんが他にどんな本を書いたか興味があるので、他も読んでみますわ。

「モネ それからの100年」@横浜美術館2018/07/23

暑い中、横浜まで行ってきました。
意外と横浜は近く、外はそれほど歩かなかったので、あまり疲れなくてよかったです。
私よりも元同僚、70歳、ガン患者の方が元気でしたが(恥)。


それほど人がいないと思って期待していたら、会場に入ると相変わらず人ごみが・・・。
残念ながらモネは25点ぐらいしかなく、それ以外は(解説曰く)抽象表現主義から現代に至る作家の作品が・・・。
モネ以外の絵はサッと見て行ったら、すぐに出口になってしまい、すべての会場を見ていないと思って、見直してしまいましたが作品数が少ないのね。
すぐに終わってしまいました。

              ≪睡蓮、水草の反映≫

睡蓮の連作の中で初見なのは上の絵です。
モナコのナ―マッド・コレクションだそうです。
他にも個人所蔵のものがあったりしましたが、モネを見に行ったので、物足りなかったです。
時間があまったので、ついでに美術館のコレクション展も見ました。
「Ⅰ 明治150年、開国の風景」では日本の昔の人々や風景をみることができて、興味深かったです。
現代の画家では森村泰昌の作品が失礼ながら笑えました。
モネに行った後にコレクション展もみましょうね。

ランチは軽く、「ル・サロン・ド・ニナス」で、ガレットを食べました。


一緒に頼んだミルクティーが生クリームが入ったもので、紅茶の味よりもクリームの味の方が濃くて失敗でした。
ここはランチにはポットではなく、大きいカップ1杯の紅茶です。

会計をしていると、何やら大きな歌声が聞こえてきます。
「ライオンキング」の歌のようです。


「ヤングアメリカンズ」の若者たちがパフォーマンスをしているようです。
横浜でワークショップやコンサートをやるようです。

この頃御無沙汰の劇団四季を見に行きたくなりました。


伊吹有喜 『彼方の友へ』2018/07/24

図書館に予約をしていた本が届きました。
ついこないだ予約したのですが、それほど話題になっていないのかしら?


老人ホームに入居している佐倉ハツは届けられた雑誌の付録を見て、微かになっていく記憶の中から、自分が憧れ、かかわることになった雑誌『乙女の友』にまつわる出来事を思い出していきます。

昭和十二年。
父が大陸に行き失踪したため、ハツは病弱な母のために進学を諦め、西洋音楽の私塾を経営するマダムの家の手伝いをしていました。
しかし、そのマダムも神戸の家に帰ることになり、次の働き口を探そうと思っている時に、ハツの所に転がり込んだのが、憧れの『乙女の友』の主筆である有賀の助手になるという話でした。
喜んで働き始めるのですが・・・。

何事にも誠実に真向から立ち向かうハツ。
そんな彼女のことを理解してくれる編集部の人たち。
戦争が続くにつれ時代は増々過酷になっていきますが、ハツたち編集部の者たちは「友よ、最上のものを」をモットーに『乙女の友』を発行し続けていこうとします。

NHKの朝ドラの「トト姉ちゃん」のような感じを思い浮かべてもらうといいですかね。
もちろん雑誌の対象と趣旨は違いますが。
読み終わる頃には、私の頭の中でハツはトト姉ちゃんになっていました(笑)。

最後にホッとできたのがよかったです。
伊吹さんは48歳で、元編集者ですか。
50台で何を書くか、楽しみですね。

太田忠司 『ミステリなふたり 1~3』2018/07/26

今週は毎日出歩いています。
今日は神楽坂に行ってきました。
赤城神社の中にあかぎカフェが出来たと聞いていたので、神社に行ったついでに入ってみました。


神社のすぐ右手のマンションのような建物の一階にカフェがあります。
お昼頃だったのですが、座れました。
漏れ聞こえてきた感じでは神楽坂近辺の会社やお店の人や観光客がランチしているようです。


ランチのスープハンバーグ。
これにサラダと飲み物がついて1200円。
神田明神といいこの神社といい、この頃の神社は多角経営なんですね。



kindleで1巻から3巻まで買ってしまい、しまったと後悔しました。
読み進んでいくと、感覚が麻痺したのか、マンネリした様子が快感になってきてしまいました(笑)。

「氷の女王」と言われ、恐れられている京堂景子は美貌の県警捜査一課の刑事。
その旦那の新太郎は主夫が仕事で、イラストは片手間仕事と思っています。
彼は毎日景子のためにお掃除し、料理を作り、彼女が帰るのを待っています。
誰も「氷の女王」の景子が、夫の前で見せる顔を想像もできませんし、見たとしても信じないでしょう。
実は新太郎には、景子が人に言えない、ある能力がありました。
彼は景子の話を聞いただけで、殺人事件を解いてしまうのです。

いつも出てくるお馴染みの場面は、景子に睨まれ、凍りつく警察官たちとおいしそうな晩ごはん、二人のベタベタ、そして、新太郎の名推理。
なんで新太郎はわかっちゃうんでしょうね。

本格的な推理を望む人は買わないように。
本を床にたたきつけたくなるかも・・・(嘘)。