「家族を想うとき」を見る ― 2020/02/07
原題が「Sorry We Missed You」。
不在票に書かれている言葉だそうです。
舞台はイギリス、ニューカッスル。
(ネタバレ有り)
マイホームを買おうと思い真面目に働いてきたのに、金融危機でローンが組めなくなり、建設の仕事まで失い、その後職を転々としてきたリッキー。
マイホームが欲しいので、フランチャイズの宅配ドライバーになって稼ぐことにします。
仕事をするためにはトラックが必要なので、訪問介護士をしている妻が仕事で使っている車を売り、資金にします。
仕事はフランチャイズとはいえ、週6日、1日14時間も働かなければなりません。
休みを取ろうと思ったら、代りのドライバーを自分で見つけなければならず、見つからなければ罰金を取られます。
配達する荷物は多く、ルートなどを機械に指示され、トラックを2分離れているとお知らせブザーが鳴り出します。
トイレに行く時間さえありません。
機械で楽に仕事をするのではなく、機械に支配されています。
妻のアビーの方はというと、自分の親のつもりで介護をしているという心優しい人ですが、車がなくなっためバスでの移動に時間がかかり、1日6軒を回るのは大変です。
そんなことを認知症の人たちはわからず、せかされるのに気分を害し、ご飯を食べなかったり、食器をひっくり返したりとされ、余計に時間がかかってしまいます。
リッキーもアビーもいっぱいいっぱいの毎日です。
このつけは子どもたちにきました。
高校生の息子のセブは学校をサボり、友達と町中にグラフィティを描いています。
家族思いの小学生の娘のライザは夜に眠れず、おねしょまでしてしまいます。
成績がいいんだから大学に行っていいんだよと言われても、セブには自分の未来が見えません。
とうとうセブは学校で問題を起こしてしまいます。
しかし、代りが見つからず仕事を休めず、学校からの呼び出しにリッキーは行けませんでした。
そのためセブとの溝は深まるばかり。
なんとかして家族との時間を取ろうと、1週間の休みを取ろうとしますが、代りが見つかりません。
とうとうセブは万引きをして警察に捕まってしまいます。
息子を犯罪者にしてはいけないと仕事を休んだリッキーはセブに怒りをぶつけ、携帯を取り上げます。
セブは家を飛び出してしまいます。
次の日、仕事に行こうとしますが、トラックの鍵が見つかりません。
実は鍵はセブではなく、ライザが隠していたのです。
リッキーが仕事に行かなければ、前のような家族になれると思ったのです。
別の日、リッキーは配達をしている時に強盗に遭い、怪我をしてしまいます。
病院では長時間待たされ、イライラしている時にフランチャイズを統括しているマロリーから電話がきます。
仕事を休むペナルティの他に強盗に盗まれたパスポートと壊された機械の賠償をしろと言うのです。
あの温厚なアビーがリッキーから電話を奪い、怒鳴ります。
家に帰ると、父親のことを心配してセブが帰ってきました。
次の日の朝、リッキーは家族が止めるにもかかわらず、トラックに乗ります。
「働けど働けど猶我が生活楽にならざりぢっと手をみる」
この歌が思い出されました。
イギリスだけの話ではなく、日本でもフランチャイズの問題が起きていましたね。
例えばセブンイレブン。
私なんかコンビニに滅多に行かないから、なおさらそう思うのでしょうけど、お正月にお店が閉まっていたっていいし、24時間開いていなくてもいいと思うのですが。
宅配便もすぐに届くのはありがたいですが、そんなにすぐに欲しいものかしら?
便利になっても、働く人たちの健康や生活が害されるのでは本末転倒です。
大怪我をしていてもペナルティを受けたくないと職場に行こうとするお父さんが哀れでした。
私、彼が死ににいくのかと思いました。
彼にとって職場は戦場か。
リッキー家族が痛ましくなっていく映画です。
誰一人として悪くはないのですから。
真面目に働くことで幸福になっていく社会でなければいけないのに。
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